久保建英の目にも映った“物足りなさ” 4年後に必要な若手の台頭…求められるがむしゃらさ

パリ五輪、ロス五輪世代はW杯で主役になれず
2026年北中米ワールドカップ(W杯)で、またしても決勝トーナメントの壁を越えられなかった日本代表。2002年日韓大会から数えて5度目の挑戦で、「史上最強軍団の今回のチームであれば勝ち進めるはず」といった期待感も高かったが、くじ運の悪さやケガ人続出も災いし、王国・ブラジルに1-2の逆転負け。ラウンド32止まりという不完全燃焼感の残る結果となった。
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森保一監督が続投するか否かは今のところ未知数ではあるが、現在の主力級である堂安律(フランクフルト)、上田綺世(フェイエノールト)、冨安健洋(アヤックス)、久保建英(レアル・ソシエダ)らが4年後の2030年W杯まで行ったとすれば、チームの平均年齢は30歳前後になりかねない。
2010年南アフリカ大会で台頭した本田圭佑(FCジュロン)、長友佑都(FC東京)、岡崎慎司(バサラ・マインツ監督)らが”3度目の正直”で挑んだ2018年ロシア大会も平均年齢が28.3歳になり、”おっさんジャパン”と揶揄されたことがあった。やはり若い世代の押し上げがなければ、チーム力の目覚ましい向上は難しい。そういう意味で、今回W杯に初参戦した20代半ば以下の面々にはここからのブレイクが強く求められるのだ。
しかしながら、東京五輪世代とともに飛び級でここまで歩んできた久保建英(レアル・ソシエダ)は厳しい発言をした。
「下の世代には伸びてきてほしいですけど、現状だと4年後、僕の下の世代が何人もW杯メンバーに入っているかと言われたら、今のメンバーが急激に衰えない限りは難しいんじゃないですかね。今の主力はすごくレベルが高いですし、それに割って入れるほどの選手がまだいるとは思えないんで」と。
2001年生まれのパリ五輪世代最年長プレーヤーがこういった発言をしたのは、やはり自分と同世代の鈴木唯人(フライブルク)、それより若い鈴木淳之介(コペンハーゲン)、塩貝健人(ヴォルフスブルク)、後藤啓介(シント=トロイデン→フライブルク)の4人の活躍度が今一つだったからではないか。
もちろん、同じくW杯初出場だった中村敬斗(スタッド・ランス)がオランダ戦(ダラス)、佐野海舟(マインツ)がブラジル戦(ヒューストン)でそれぞれゴールを挙げて攻守両面で大きな存在感を示し、守護神・鈴木彩艶(パルマ)もMVP級の活躍を見せたのは朗報だった。が、パリ世代・ロサンゼルス五輪世代が東京世代に取って代わるくらいの勢いを見せられたとは言い切れない。それが久保にとっての物足りない部分だったのだろう。
確かに練習を見ていても、若手グループはとにかくおとなしかった。最年長の長友佑都(FC東京)が鈴木淳之介に向かって「淳之介、腹から声を出せ」と檄を飛ばすシーンが何度も見られたし、鳥かごでも長友に板倉滉(アヤックス)、小川航基(NECナイメンヘン)、堂安、菅原由勢(ブレーメン)が加わった“賑やかグループ”と若手中心の“静かなグループ”では雰囲気があまりにも違いすぎた。
「自分はもともとテンション上げすぎると上がりきっちゃうタイプ。試合中は声を出しますけど、つねに一定のテンションでいないといけないので。それにいろんなタイプの人がいると思う。自分はまだまだ若いですし、今は自分の持っているものを出して、ぶつけて返ってきたものが大事だと思っているので、この先もしっかりやっていきたいです」
鈴木淳之介は自分らしさを大切にしながら取り組んだことを明かした。が、彼は今後、最終ラインを統率していく人材。今回帯同した吉田麻也(LAギャラクシー)やキャプテン・板倉滉(アヤックス)らを見習って、もっともっと発信力に磨きをかけなければならないのも事実だろう。
第2戦・チュニジア戦(モンテレイ)で短時間ピッチに立った鈴木唯人にしても「自分自身の悔しい時間の方が多かったんで、正直、周りのことをどうこうとか思っている場合でもなかった。自分のやるべきことに向けて向かってるだけだったので…という感じですかね」と自分に矢印を向け、ガムシャラに成長したいと思ったようだが、その姿はかつての鎌田大地(クリスタル・パレス)に重なる部分がある。
鎌田も年代別代表経験が皆無だったため、A代表入りした当初は「日本のために」「チームのために」という意識がやや薄いように映った。それが年月を重ね、長友や吉田らの姿を目の当たりにする中で、「自分がスタメンだろうが、サブだろうが、とにかくチームを勝たせたい」という意識を強く押し出すようになった。
今の鈴木唯人にそこまでの余裕がないのはよく理解できる。まず所属クラブでのステップアップ、圧倒的な結果を残し、4年後にはチームを引っ張れる器の大きな存在になっていてほしい。市立船橋高校初のW杯選手にはみんなが期待しているはずだ。
そして塩貝、後藤はロス世代のけん引役にならなければいけない。後藤はその自覚を強めて、ブラジル戦敗戦後に「2028年。大会は違いますが、もう一度このアメリカの地で闘い、新たな歴史を共に作りましょう。そして、2030年。さらに強くなった日本でもう一度世界に挑みましょう!」とSNSで投稿。総括会見でも「ロス五輪で歴史を塗り替えて、その2年後にワールドカップがもう一度あるので、そこで優勝したメンバーが…東京世代のように、ロス世代がワールドカップで引っ張っていければなと思います」と宣言していた。
塩貝にしても、ブラジル戦にまつわる発言で物議を醸したが、本人は「発言を取り消すつもりはない」とキッパリ。「自分が結果で示していかないといけない」とも語り、ドイツ・ブンデスリーガ2部から這い上がっていくことを誓っていた。
そういった20歳前後の面々が鼻息を荒くして、貪欲に泥臭く上へ上へと突き進んでいかなければ現状は変わらない。それを本人たちが改めて理解し、実践しようとしているのは朗報と言っていい。
長友も「後藤たちはチームへの忠誠心もそうだし、若いから自分のエゴだけでやりたいとは思うんだけど、それでもチームのために戦う、仲間のために戦う、代表のために日の丸をつけて戦うような誇りを感じるようになった。それは日本サッカーの財産になりますよね」と神妙な面持ちでコメントしていた。
彼ら若手が長友のような“W杯モンスター”とも言える怪物的存在に出会えて、実際に貴重な1か月間を過ごせたのは、本当に今後のキャリアにつながる。この経験を絶対に先々に生かしていくべきだ。
ロス世代には佐藤龍之介(FC東京)、市原吏音(AZ)のような期待値の高い面々がいる。彼らが目の色を変えて「東京世代、その上の世代からポジションを取ってやる」とガツガツしたパフォーマンスを見せてくれることが、日本代表の未来につながる。
「決勝トーナメントで勝てない日本」という負の連鎖に次こそは歯止めをかけるべく、次世代の台頭を心待ちにしたいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。


















