ブラジル最大のミステリー「空白の72分間」 怪物を襲った“異変”と強行出場「一体何が」

W杯フランス大会にブラジル代表として出場したロナウド【写真:ロイター/アフロ】
W杯フランス大会にブラジル代表として出場したロナウド【写真:ロイター/アフロ】

W杯を彩る事件簿 今回は1998年フランス大会決勝で起きた「史上最大のミステリー」に迫る

 1930年の創設から、これまで数々のドラマや歴史的事件を生み出してきたFIFAワールドカップ(W杯)。4年に一度、世界一の称号を懸けて激突する祭典で起きた衝撃の出来事を振り返る「W杯事件簿」。今回は、1998年フランス大会の決勝戦で勃発した、今もなお様々な憶測を呼ぶサッカー史最大の謎とされる“怪物”のスタメン騒動にフォーカスする。

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 1998年7月12日、フランスのスタッド・ド・フランス。開催国フランスと、大会連覇を狙う絶対王者ブラジルが激突する決勝戦を前に配られた1枚の紙が、世界中のメディアを大混乱に陥れた。

 キックオフ72分前に発表されたブラジル代表のスターティングメンバー表。そこには、大会を通じて圧倒的なパフォーマンスを披露し、世界最高の選手として君臨していた背番号9、FWロナウドの名前はなかった。代わりにスタメンに名を連ねていたのはFWエジムンド。ケガの情報も一切なかった絶対的エースの突如の欠場発表に、プレスルームは「一体何が起きたんだ!?」とパニック状態に陥った。

 しかし、事態はさらに二転三転する。キックオフが目前に迫った時間帯になって、突如としてブラジル陣営から「新たなスタメン表」が再提出されたのだ。そこには、何事もなかったかのようにロナウドの名前が記載されていた。

 スタジアムがどよめくなか、ピッチに登場したロナウド。しかし、開始のホイッスルが鳴ると、そこにいたのはいつもの圧倒的なロナウドではなかった。動きは精彩を欠き、まるで亡霊のようにピッチを彷徨うばかり。エースが沈黙したブラジルは、ジネディーヌ・ジダンを擁するフランスに0-3で完敗を喫し、連覇の夢を絶たれた。

 決勝の大舞台で、なぜロナウドは一度スタメンから外れ、そして無理を押して強行出場したのか。

 のちに明かされた話によれば、決勝戦当日の昼食後、ロナウドはホテルで原因不明の全身痙攣を起こし、意識を失っていたという。同部屋だったDFロベルト・カルロスの悲鳴でチームドクターが駆けつけ、ロナウドは直ちに病院へ搬送。神経系の検査を受けたものの異常は見つからず、本人が「どうしてもプレーしたい」とマリオ・ザガロ監督に直訴したため、急遽スタメンに戻されたというのが公式の顛末である。

 しかし、命の危険すらあった選手を決勝で起用したこの不可解な経緯は、様々な憶測を呼んだ。中には「巨大スポンサー(ナイキ社)がブラジル代表にロナウドの出場を強要したのではないか」という根強い陰謀論まで……。今回の騒動は、のちにブラジル議会で公聴会が開かれ、関係者が喚問されるという国家的な大騒動にまで発展している。

 真実は当事者たちのみぞ知る。W杯という異常なまでのプレッシャーが“怪物”の肉体を蝕んだのか、それとも絡んでいたのは大人の事情なのか。フランスの夜空の下で起きたこの「空白の72分間」は、W杯史上最もダークでミステリアスな事件として語り継がれている。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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