日本が獲得した“真のリスペクト” 母国で「51→41」…ブラジル撃破も奇跡ではない理由

日本のW杯優勝オッズに変化【写真:ロイター】
日本のW杯優勝オッズに変化【写真:ロイター】

日本のW杯優勝オッズに変化

 北中米ワールドカップ(W杯)の日本対スウェーデンを「BBC」で解説したのは、元イングランド代表FWのクリス・サットン。1994-95年シーズンに伏兵ブラックバーンをプレミアリーグ優勝に導いたゴール・マシーンとして知られ、現在では辛口の評論家として活躍する。

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 そのサットンが試合終了直後に「ブラジルはこの日本と戦うことを歓迎してはいないだろう」と語った。

 結果は1-1ドロー。1勝2分の勝ち点『5』でF組2位通過。これで決勝トーナメント初戦のベスト32戦の相手はC組首位通過のブラジルとなった。

 相手は言わずと知れたサッカー王国。5度のW杯優勝は歴代最多。しかしその史上最強国との対戦となっても、イングランドの元名選手は日本の健闘を予言したのである。

 試合前、日本、スウェーデンの両国ともに決勝トーナメント出場は濃厚だった。特にドローなら3位でも確実に決勝トーナメントに進めるスウェーデンが守備的に試合を進めて、チャンスが少ない試合――すなわち見どころが少ない試合になった。

 しかしサットン氏はそんな試合展開で前半を0-0で折り返した後半開始直前に「プレースタイルから日本が優勢」と発言。日本の方が“ゴールに近い”と予言した。

 その言葉通りに後半11分、FW前田大然がゴール前に躍り出て、MF堂安律が放った見事なスルーパスをワントラップして右足で流し込み先制点を奪った。

 しかしその6分後の同17分、2024-25年シーズンにノッティンガム・フォレストで鬼神の如き活躍をして昨夏にニューカッスルに移籍したFWアンソニー・エランガが右サイドから対角線上に素晴らしい個人技のゴールを決めて1-1の同点とした。

 約20メートルの距離からの豪快なフィニッシュだったが、驚くことに利き足ではない左足から放たれたシュートだった。

 FW上田綺世とのワンツーから堂安がスウェーデンの最終ラインを切り裂く、まさに“キラーパス”を放ち、前田がきっちり決めた連携のゴールと、エランガの完全なる個人技でのゴールという対比が生まれ、解説者のサットンはその点を非常に面白がっていた。

 そしてこの試合をつぶさに観たサットンは「日本はどのポジションの選手もボールを持ってあわてない」「非常にテクニカルなチーム」「スペースがなくてもカンフタブル(余裕がある)」「連携プレーがトリッキー」と語り、日本贔屓の発言が多かった。

 日本は前回のカタール大会でドイツ、スペインを撃破した。4年前の二つの金星が“まぐれ”ではなかったと、今大会のオランダ戦での試合終了間際の同点弾、チュニジア戦の4-0快勝、そしてスウェーデン戦での無敗を守る1-1ドローで証明した。サッカー発祥国のイギリスで、この試合でのサットンの解説にも現れたように、日本に対する本当の意味でのリスペクトが生まれたと思う。

 そしてそれはブックメーカーのオッズにも反映された。

 英大手ブックメーカー「ウイリアム・ヒル」の日本優勝オッズは大会前の51倍が41倍に下がった。興味深いのは、日本と引き分けたオランダの17倍だったオッズが12倍に下がり、9倍で4番人気だったブラジルが13倍の5番人気に降格していることだ。

 一方、日本時間の29日午前2時キックオフとなるブラジル対日本の90分対戦オッズはブラジル勝利の1.72倍に対し、日本勝利は4.8倍。ちなみにドローが3.5倍。もちろんブラジルが優勢だが、この数字からも日本の勝利は決して奇跡とは思われていない。

 ブラジルとの戦いは、世界一を狙うなら不可避であり、どこかで必ず通る道だ。

 一昔前なら悲壮感しか湧かなかった対戦だが、日本に対する真のリスペクトが生まれたイギリスにいる今、ブラジルとの対戦が楽しみで仕方がない気持ちになっている。

(森 昌利 / Masatoshi Mori)



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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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