激変のW杯で「強豪の体力温存はもう古い」 5人交代制が生んだノンストップの激戦…「常識は通用しない」

今大会で注目を集めるハイドレーションブレーク(給水タイム)【写真:ロイター】
今大会で注目を集めるハイドレーションブレーク(給水タイム)【写真:ロイター】

消えた試合中の「休息」

 メッシ、エムバペ、ハーランド…、注目のスーパースターたちが、ゴールを量産している。2試合を終えた時点でメッシが5ゴール、エムバペとハーランドは4ゴール。早くも話題は「得点王は誰?」。エンタメ要素が強い大会ムードに押されてか、各チームともいきなりトップギアのようだ。

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 ハイドレーションブレーク(給水タイム)の導入で、アディショナルタイムが長い。最低でも3分、10分を超える試合もあった。サッカーは「前後半45分で90分」だが、ハーフタイムを含めて2時間で終わらないのも普通。テレビの放送枠を超え「サブチャンネル」突入も恒例になった。

 試合を見終わった後は満足感とともに、疲労感もある。よく言えばスピーディーな展開、悪く言えばせわしない。5秒ルールや10秒ルールの採用で、試合は休まない。正味のプレー時間を増やすための競技規則改正だし、プレーへの影響は限定的だろう。ただ、何となく「バタバタ感」はある。

 すでにルールを採用しているシニアリーグでプレーする友人は「審判がやたらとカウントを始めるんだよ。少し休ませろって思うよね」とこぼす。サッカーは、変わってきた。

 かつては試合の中で休んだ。流れが悪ければペースダウンして次に備えたし、強度を落として消耗を防いだ。暑さなどで負担が大きい時はなおさら。疲れで終盤のパフォーマンスが落ちては困るからだ。草サッカーの話ではない。W杯でも「休んでるな」と思うのは珍しくなかった。

 ところが、前回大会からの5人交代制で必ずしも90分間プレーする必要がなくなった。「キックオフから全力で」が最新スタイル。選手の走行距離はW杯でも各国リーグでも右肩上がりで増えている。戦術の進化もあるのだろうが、交代枠増の影響もあるはず。メッシら特別な例を除けば、少なくとも「90分間、体力を持たせなければ」という考えは古くなった。

 もちろん、それぞれのゲームプランはあるが、それを遂行するためにキックオフから全力でプレーする。疲れたら交代。フレッシュな選手は再び全力で走り回る。試合全体の強度が上がり、運動量は増す。ノンストップの激戦になる。

 1次リーグ2巡目終了時点で全ゴール数は141。うち21点は前後半のアディショナルタイムに入っている。メッシもエムバペも90分後に決めている。最後の最後まで目が離せない。

 交代選手のゴールも25と多い。以前なら「采配ズバリ」だろうが、今は珍しくもない。オランダ戦の小川航基のようなアシストまで含めれば、交代選手絡みのゴールはさらに増える。高いレベルの選手を投入するのだから当然だし、5人代えてゴールに絡まない方がおかしい。

 キックオフからエンジン全開、トップギアに入れたまま90分間選手を代えて突っ走る。大会全体を通しても、そんなスタイルなのかもしれない。優勝候補は1次リーグで体力を温存し、適当に休みながら決勝トーナメントで爆発する。そんな「常識」はもう通用しないのかもしれない。

 ルール変更とプレーの進化で、さらにサッカーは濃密に、スピーディーになった。史上最長、決勝まで8試合もある今大会は移動距離の長さや暑さなどの不安視されたが、各チームは、選手たちは序盤から全力疾走。この先に、どんな結末が待っているのか。いつもと違う感じのスタートを切った大会を、こちらも休むことなく見ていきたい。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)



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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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