日本人FWが海外で”使われない”理由 岡崎慎司が力説…監督経験で「こんなに違うんだな」

元日本代表FWの岡崎慎司氏【写真:アフロ】
元日本代表FWの岡崎慎司氏【写真:アフロ】

元日本代表FW岡崎慎司氏が語る、日本人FWが活躍するために必要なこと

 日本代表は現地時間6月25日、アメリカ・ダラスのダラススタジアムで、北中米ワールドカップ(W杯)グループステージ第3戦でスウェーデンと対戦する。4-0の快勝を収めた第2戦のチュニジア戦では、FW上田綺世が2ゴールでストライカーとしての存在価値を証明した。海外で日本人ストライカーが活躍するために必要なことについて、元日本代表FW岡崎慎司氏に話を聞いた。(取材・文=中野吉之伴/全4回の3回目)

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 W杯は選手にとって特別な舞台だ。

 しかし、選手たちの日常は代表活動ではなくクラブにある。毎日のトレーニングがあり、週末の試合があり、その中でポジション争いを続けている。現在の日本代表は欧州各国でプレーする選手が数多くを占めている。所属クラブで主力として活躍する選手も少なくない。一方で、前線の選手たちに目を向けると、十分な出場機会を得られていない選手もいる。

 なぜ海外でプレーする日本人FWは苦しむのか。ドイツで長くプレーし、現在は指導者としても活動する岡崎慎司に聞くと、その答えは単純な実力論だけではなかった。

 まず名前が挙がったのは町野修斗だった。

「ボルシアMGでは単純に器用貧乏みたいな見方をされてしまったのかなというのは思いますね。本当にストライカーとして活躍するってなったら、センターFWに置かれないと厳しいと思うんですけど、サイドとか、トップ下とかに置かれがちになってしまう。町野のシーズン最初の頃の試合を見ていても、『ここまで守備させられるんだ』と思いました。他に点取り屋がいるので、なかなかそこで起用されないのは大変だろうなと思います。気持ちはめちゃくちゃ分かるんですよ。僕もレスターとかシュツットガルト時代は、点を取りたいけど守備もしなきゃいけない。出ても45分とか60分で交代、もしくは途中からっていう考えが監督の中からなかなか離れない。そういう状況ってありますから」

 サイドもできる。守備もできる。チームのために走れる。そうした評価は決して悪いものではない。しかしストライカーとして見たときには、必ずしもプラスばかりではない。本職以外の役割をこなせるからこそ、本来勝負すべき場所である中央から遠ざかることもある。

 もっとも、岡崎は環境だけに原因を求めてはいない。

「その監督が自分の良さを引き出すような選手起用をするかどうかがまず大事。あと逆に言ったら、センターFWをやらせてもらえるように持っていけていないっていう見方もできますから」

 この言葉は、出場機会の確保に苦しむ日本人選手たち全体にも向けられているように聞こえた。そして話は、岡崎自身が監督になったことで見えた景色へと移っていく。

「一つ言えるのは、監督も勝ちたいんで」

 そう前置きしたうえで、岡崎は興味深い話をしてくれた。

「自分もいまアマチュアレベルですけどドイツで監督をやってみて、例えばセンターFWのポジションに日本人とドイツ人がいる時に、日本人を使う時の影響、ドイツ人を使う時の影響って、こんなに違うんだなって思うんですよね。多少の実力差しかない場合、どっちを起用するかでチームに結構な影響が出たりする。『もしドイツ人FWを外したら何が起こるだろう?』とか、そういう目に見えない部分も監督は考えるんですよね」

 現役時代には見えなかった監督の葛藤。そこには純粋な能力比較だけでは割り切れないチームマネジメントの難しさがある。だからこそ、日本人選手にはさらに高い基準が求められるという。

「僕らが思う『やれている』と、その選手が思う『やれている』と、監督が思う『やれている』は全然違うと思うんですよ。本人は『やれている、俺の方が上』と思っていても、監督からしたらまだ足りない、あるいは他の選手をベンチにしてまで起用しようとは思わないってことは結構ある。それを超えるぐらいの活躍が必要なんですよね。欧州でプレーしている日本人選手は、それぞれその状況から這い上がっていけるだけのものを持ってはいる。ちょっとずつ出場機会を重ねて、アピールができて、そこでやっと『ちょっとは使えるな』の評価になっていくというのが、現実的な見方なのかなとは思う」

 だからこそ、最も厳しく難しいのがFWだと岡崎は言う。中盤の選手なら、守備や運動量、カバーリングなどでも評価される。だが、ストライカーは違う。

「海外でやることを考えたら、特にFWは難しいポジションじゃないですか。中盤だったら役割がはっきりしているので、犠牲心とか守備とかも評価につながる。でもFWの犠牲心って、負けている時は評価されづらいんですよ。『俺はこんなに守備してるのに』とか、『チームのために走ってるのに』とか、そういう気持ちも出てくると思う。でも、結局は結果なんですよね。そうしたチームへの貢献は当たり前にやったうえで、FWは結果を出すしかない」

 その言葉には、岡崎自身の経験が詰まっている。シュツットガルトでもレスターでも、常に理想的な立場だったわけではない。それでも出場した時には全力を尽くし、必要とされる存在になっていった。

「だからそういう意味では、監督に『必ず使う』と思わせることも大事。それだけのものをこちらは持っていると思ってもらえないと、試合には出られない。まずは今やれることを本気でやるしかないと思うんです」

 海外でプレーする日本人FWにとって、本当の勝負はむしろそこにあるのかもしれない。岡崎の言葉は、厳しさと同時に、乗り越えるためのヒントも示していた。

 FWの価値はゴールやアシストのような結果で決まる部分が大きいが、その結果にチャレンジする立場に立つために、様々な前提条件を満たさなければならない。そのことが、岡崎の話を聞いているとよくわかる。

 例えば、途中出場で流れを変える。守備から試合を締める。本職ではないポジションでもチームを助ける。

 そんな姿もまた、監督たちは見ている。現在の日本代表にも、所属クラブで十分な出場機会を得られていない選手たちがいる。監督に見せるべきものは何か。信頼か。数字か。あるいは苦しい状況でも折れない姿勢か。答えは一つではない。

 ただ、岡崎の言葉を借りるなら、最終的に必要なのは「使いたい」ではなく「使わざるを得ない」と思わせることだろう。

 W杯での一つのプレー、一つのゴール、一つの献身的な守備が、その評価を変えるきっかけにもなる。世界中の視線が集まる舞台だからこそ、日本代表の選手たちは、自らの未来のために戦っていると言えるかもしれない。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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