協会からの異例要求「お前から直接電話して」 大久保嘉人が明かすW杯の裏側…驚愕の通達に「意味が分からない」

南ア→ブラジル 2つのW杯の間で連発したまさかの事態
2010年南アフリカワールドカップ(W杯)で、下馬評を覆すベスト16進出を果たした日本代表。その中心選手として全4試合に出場し、身を粉にして走り抜いた大久保嘉人氏だったが、大会後には「引退」の二文字が頭をよぎるほどの絶望感を味わっていた。「FOOTBALL ZONE」で今回の北中米W杯の特別解説を務めるにあたり、自身が関わった日本代表の激闘を再びフォーカス。今回は、代表から遠ざかった日々と劇的な復活、そしてW杯直前に起きた協会との“異常なやり取り”に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部/全4回の2回目)
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南アフリカW杯で完全燃焼した大久保氏は、大会終了後にオーバートレーニング症候群に陥り、1か月半もの間、練習も試合も休まざるを得なくなった。さらに復帰直後に負傷が重なり、心身ともに限界を迎えていた。南アフリカで極限の一体感を味わった反動もあったのだろう。
「『あ、もう俺ダメだな。ここで終わるな』って思いました。代表への思いなんて1ミリもなかったし、Jリーグで続けるのも厳しいかなと。引退しようかという気持ちも強くて、『もういいかな』って完全に諦めかけていました」
Jリーグでのプレーを諦め、中東への移籍すら考えていたという大久保氏。そんな矢先、川崎フロンターレからオファーが舞い込む。実は当時、他の国内クラブからの声はかかっていなかった。
「中東に行こうかなって話をしていた時、妻から『(日本で)名前忘れられるから行け』って言われて。『まあ、しゃあないな』という感じでフロンターレに行くことにしたんです。ただ、その前年に所属していたクラブでは残り1年の契約があったのに“クビ”になってメンタルをやられていて。フロンターレとも『1年契約でダメだったらクビ』という厳しい条件でした。でも、それを言われた時に、『いや、もう一回見返してやろうかな』って悔しさが湧き上がってきたんです」
周りの目を気にせず、「自分のサッカーをやって、最後ならここで暴れてみよう」と開き直った大久保氏。これが劇的な化学反応を生む。風間八宏監督(当時)の攻撃的な戦術と完璧にフィットし、川崎で水を得た魚のように躍動。「自分の中では全然変わっていなかったけれど、周りが良かった」と本人が振り返るように、周囲との連係でゴールを量産し、見事に得点王に輝くという劇的な復活を遂げた。
Jリーグで圧倒的な結果を残し続ける大久保氏に対し、メディアやファンからは強烈な「大久保待望論」が沸き起こっていた。しかし、アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表からは一向に声がかからない。大久保氏自身、そのギャップに次第にいら立ちを募らせていった。
「呼ばれないからイライラして、俺は記者の人たちに『もう代表の話はすんな。俺に関わるな、もう聞くな』って言ったんです。『俺はもう代表は無理だから』と。そしたら本当に一切、代表の話が出なくなって、自分自身もすごく楽になりましたね」
代表への雑音を自らシャットアウトし、目の前のプレーに集中していた大久保氏だったが、ある日のキャンプで決定的な出来事が起きる。ザッケローニ監督が川崎フロンターレの練習視察に訪れたのだ。
「2年目のキャンプの時、ザッケローニが練習を見に来ていて。普通だったら監督の方から声をかけるじゃないですか。でも俺とは面識がないからか、無視されて帰っていったんです。『あ、終わったな。こいつ本当にただ見に来ただけか』と思いましたね」
完全に代表への道は断たれたかに見えた。しかし、事態は思わぬ方向へ転がる。協会関係者とのやり取りの中で、信じられない言葉を告げられたのだ。
「協会の人に『俺、点を取っても呼ばれないんだ……』って言ったら、『ちょっと待て。お前は32歳でベテランだから、若い選手が伸びるのを待っているんだ』と。もし若手が伸びなかったら呼ぶから準備しておいてくれ、と言われたんです」
さらに驚愕のエピソードは続く。ある時、協会関係者から「ザッケローニにお前から直接電話してくれ」と異例中の異例の要求をされたのだ。
「意味が分からないじゃないですか。『なんで俺が監督に電話しないといけないの? 俺は結果で示して待ってます』ときっぱり断りました。もし急に本番で呼ばれて批判されるのも俺だし、ザッケローニ監督がどんなサッカーをするのかも分からない。だから『選ばなくてもいいから、本番前に1回だけでも呼ぶべきだ』という話はしたんです。でも、親善試合にすら呼ばれなかったんですよね」
選手側から代表監督へ直接電話しろという、常識では考えられない打診。それを自らの矜持で突っぱね、ただピッチ上の「結果」だけで勝負を続けていたストライカーの元に、この後、日本中を熱狂させるサプライズの知らせが届くことになる。
(FOOTBALL ZONE編集部)















