日本代表「12番人気51倍」が示す現在地 存在感は「8強級」…越えるべき「深く険しい差」

北中米W杯出場国のオッズがずらり【写真:ロイター】
北中米W杯出場国のオッズがずらり【写真:ロイター】

ウィリアム・ヒルから読み解く優勝候補

 無論のこと今回の北中米ワールドカップ(W杯)でも歴史に残る劇的なジャイアントキリングが起こって、万事がこの通りになるとは言えないが――出場国48か国の現在地を知るにはブックメーカーのオッズが一番頼りになるのではないかと思う。

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 今回は開幕直前、6月10日時点の英国大手ブックメーカー『ウィリアム・ヒル』のオッズを参照したが、これが本当に良くできている。

 まずは優勝候補の本命から見ていこう。一番人気は5.5倍でフランスとスペインが分け合った。

 これは近年のメジャー大会の成績を見えば順当だ。フランスは2018年ロシア大会の優勝チームで、前回のカタール大会でも優勝候補の最右翼となっての準優勝だった。

 またスペインは前回2024年の欧州選手権(EURO2024)で全勝優勝を果たした。これが史上最多の4回目となる欧州チャンピオン戴冠。しかも準々決勝からドイツ、フランス、イングランドを相手に3連勝を果たして優勝した力強さが今も鮮明だ。

 もちろん、両者とも当然のように欧州予選ではグループ1位通過。今回の世界王者決定戦でも前評判通りに盤石の強さを見せるに違いない。

 3番人気は近年のメジャー大会で今一つ優勝に足りないイングランドで7倍。12組あった欧州予選では、ノルウェーと2か国だけグループ戦全勝を果たし、それなりの存在感は示した。

 フットボール発祥国でありながら、そのプライドを捨ててまでドイツ人戦略家トーマス・トゥヘルを監督に招聘して、1966年以来の優勝に臨むが、世界一激しいプレミアリーグを主戦とする選手が多く、いつも大事な場面でガス欠になるイメージがある。トゥヘルがどこまで戦略でカバーし、選手のモチベーションを保ち続けるのか。そこが悲願達成の鍵となりそうだ。

 4番人気はブラジルとポルトガルが並んで9倍。多少ブラジルの凋落を感じさせるが、やはりそこは王国。しっかりベスト4進出想定のポジションに踏みとどまっている。

 ポルトガルも才能ある若手の出現が途切れず、41歳の鉄人クリスティアーノ・ロナウド抜きでも十分戦えるチーム。フランスやスペインとの比較で多少の運が不可欠だが、9か国目のW杯優勝国になる可能性はゼロとは言えない。

 以下前回優勝のアルゼンチン10倍、ドイツ15倍、オランダ17倍と続き、前述のフランス、スペインを加えると、なるほどこれはかなりの確率で8強を形成しそうだというメンツになる。

 ただし、この想定8強の中でドイツとオランダの倍率はやや高い。それも、2大会連続でグループ戦敗退を喫した直近のドイツのW杯における実績と、攻撃面でやや物足りない印象が残る今回のオランダの戦力が反映されているのが分かる。

 この8強に続く15番人気までのグループに、我らが日本代表がいる。

 29倍の9番人気は黄金世代が去って、やや戦力が落ちた印象が否めないベルギー。そこに、怪物ハーランドが8試合の欧州予選で16ゴールというとてつもない記録を打ち立て、今大会のダークホース的な存在となったノルウェーが並ぶ。34倍の11番人気で続くのは南米の強者コロンビアだ。

 日本はこの直後の「12番人気、51倍」につけている。この位置にはセネガルの棄権というアクシデントはあったが、前回のアフリカネーションズカップを制したモロッコ、そして厳しい欧州予選のB組を1位通過したスイスが並ぶ。

 このモロッコ、スイスと同格の12番人気という位置から“ベスト16はほぼ当確。しかし8強進出へはかなり格上の4か国を出し抜けかなければならない”という状況が想定される。これはまさに『言い得て妙』というポジションではないだろうか。

 フットボールを熟知する方には説明不要だが、この16強と8強の差というのは本当にとてつもなく深くて大きく、そして険しい。

 フットボールのトーナメントはシードの関係で、準々決勝で初めて真の強者同士が対戦する仕組みになっている。この8強に進出したチームこそ、本当の優勝候補であり、常にこのレベルに残ることが強豪国の証明となる。

 しかし4か国を抜けば、世界最強国の群れに到達できる可能性がある地位に日本がいる。

 もしも南野拓実と三笘薫が絶好調だったら、ひょっとしてこのオッズも9番人気のベルギーやノルウェーと並んでいたかもしれないとも思ったが、それは言わぬが花。その分、相手国の警戒を解き、南野と三笘の無念を晴らす活躍をする選手が必ず出現すると信じる。

 結論として、このオッズには日本の8強進出の現実性が灯されているということだ。そしてグループ戦初戦のオランダ戦で引き分け以上の結果をもぎ取り、グループ首位通過を果たせばさらに倍率が下がり、サムライブルーの存在感が8強級になる。

 そしてもしも準々決勝に残れば、そこからは文字通り世界の強豪に食らいついて、森保一監督が頑なに“唯一の目標”と言い続ける優勝も夢見ることができる大会になる。

 筆者が個人的に忘れられないのはイングランド・プレミアリーグ2015-16年シーズンでのレスターの優勝。あの時に岡崎慎司が伝説の一部となった奇跡のオッズはなんと5001倍。これは言うまでもないことかもしれないが、この数字と比較するなら、51倍は十分に出現可能なオッズである。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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