森保監督が断言「親善試合より良かった」 異例のU-19戦…渡辺剛も同調「いい経験になった」

日本代表を率いる森保一監督【写真:井上信太郎】
日本代表を率いる森保一監督【写真:井上信太郎】

事前キャンプ最終日にU-19日本代表と練習試合を行った

 北中米ワールドカップ(W杯)本番直前、日本代表はアイスランド戦を最後に対外試合を組まなかった。その代わりに選んだのはU-19日本代表とのトレーニングマッチ。試合後、森保一監督は言葉を選ばずに言った。「個人的に普通に親善試合をやるより今日のゲームの方が良かったなと。正直、素直に思いました」。なぜ内部試合が、W杯前の最終確認として最適解となったのか。選手と監督の言葉から、その理由を解きほぐす。(取材・文=林遼平)

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 日本代表はメキシコ・モンテレイの事前キャンプ最終日となった6月7日、U-19日本代表と35分×4本のトレーニングマッチを行った。キックオフは午後4時。容赦ない陽射しの下、変則的なフォーマットで試合を行った。

「結構、暑くて。試合しないとわからない暑さだったり、動きのコンディションのところだったりというのは確認できました」

 渡辺剛はそう振り返った。チュニジアとのグループリーグ第2戦は午後10時開始とはいえ、屋外での開催。空調の効いたスタジアムで戦える試合ばかりではない。だからこそ、この日の酷暑は「避けては通れない経験」だった。

 森保監督も「選手はきつそうでしたけど、フィジカルトレーニングの一環としていいトレーニングマッチができた」と話し、高温環境下での実戦を意図的に組み込んだことを明かした。今回、モンテレイでは3度の練習場変更という想定外のアクシデントが発生したが、それでも指揮官は動じず、「試合でも起きることはあるし、日常の中でも想定外のことが起きた時に落ち着いて対応できるか。そういう意味ではアクシデントがあって良かった」と振り返った。W杯という舞台では、何が起きるか分からない。そのリハーサルとしても、この環境は機能したと言えるだろう。

 暑熱対策とともにU-19日本代表との試合で大きな意味を持ったのは、対外試合と異なり、プログラムを自分たちで設計できることだ。この日は35分×4本の間に、2本目と4本目の後にそれぞれPK戦を実施した。国際親善試合でPK戦まで組み込むのは現実的に難しいが、U-19日本代表との内部マッチなら話は別だ。

「できるだけW杯に近い状況でPKの練習もしたかったと思いますし、ずっと前からPKの練習をしてきた中で、そういうシーンはあまりなかった。いい緊張感の中で蹴るというところではいい経験になったと思う」(渡辺)

 練習場でのPK練習と、試合の流れの中で迎えるPK戦では緊張の質がまるで違う。本番に近い重圧の中でキッカーとして立つ、その経験値がトーナメントで必要になった時に生きてくるだろう。森保監督も「臨機応変にできることが大きなメリット」と強調し、「足りないと思ったら長くできた」という柔軟な運用が可能だった点を評価した。

仮想オランダの役割も与えられていた

 この日のU-19には単なるスパーリングパートナー以上の役割が与えられていた。「U-19の子たちもオランダ対策、対オランダでやってもらっていたと思う」と渡辺が明かすように、相手には初戦の仮想オランダとして戦術的な指示が落とし込まれていた。森保監督も「仮想という意味でやってもらった」と認めており、この日の実戦はスカウティングと連動した実践的な準備の場でもあった。

 その中で収穫もあった。試合は2本目までスコアレスとなったが、3本目には鈴木淳之介が鈴木唯人のCKからゴールエリアで押し込み、4本目には冨安健洋のロングフィードから塩貝健人がGKと1対1を制した。「非常に強度の高い試合ができた」と森保監督が言うように、U-19メキシコ代表戦に勝利したU-19の気迫はA代表を本気にさせるものだった。一方で、ロングボールやラフなボールへの対処という課題も顔を出した。グループリーグで戦うスウェーデンやチュニジアを見据えれば、「チームとして水漏れがないように」(森保監督)連係を高める作業がナッシュビルでの急務となる。

 また、この日のトレーニングマッチにはもうひとつの意味があった。U-19の選手たちにとっても、A代表と同じピッチに立ち、W杯の空気を間近で感じることは得難い経験だった。

「代表ファミリー全体のレベルアップという意味では、W杯の刺激をU-19の選手たちに身近で感じてもらうのは意義がある」と森保監督は言う。A代表がU-19の気迫に奮い立たされ、U-19がA代表の強度から学ぶ。双方向の化学反応が、この内部マッチを単なるスパーリング以上のものにした。

 冨安は70分をこなし、鈴木唯人もコンタクトを含めた実戦感覚を取り戻した。もちろん連係のズレやロングボールへの対処、ゴール前の迫力と課題はある。それらは全てナッシュビルへの宿題だ。

 しかし、チームは酷暑の中で全員がピッチに立ち、PK戦を2度こなし、仮想オランダと向き合い、U-19の挑む姿勢に刺激された。「モンテレイに来てよかった」と話す森保監督。その言葉の重さを胸に、チームはすでにナッシュビルでの準備を始めている。オランダ戦まで、残りわずかだ。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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