8位低迷、貫けなかった特性に「深く責任」 名門の黄金期が終焉…消えた看板「1試合3ゴール」

J1百年構想リーグで8位に終わった川崎の低迷理由
J1の百年構想リーグは、東西の同順位同士のプレーオフを終えて西側が7勝3敗。改めて西高東低傾向が浮き彫りになった。
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東側は鹿島アントラーズが勝負強さを発揮して独走状態を築いてしまったわけだが、早々と優勝争いへの興味が薄れたのは、対抗馬と目された川崎フロンターレ、浦和レッズ、柏レイソルなどの低調も一因だった。
ただし同じように振るわない順位に終わっても、川崎と柏ではまるで意味合いが違った。柏は大半の試合でチームとしての特性を貫いた。例えば「Transfer Market」によると、保有選手の市場価値がJ1で最下位なのに善戦を見せた東京ヴェルディ目線からすると、最も一方的にゲームを支配されたのが柏戦だった。
昨年準優勝した柏は、今年もブレることなくボールを保持し、繰り返しチャンスを築いた。だがその柏を率いるリカルド・ロドリゲス監督も言うように「サッカーは試合内容が必ず結果に反映されるとは限らない」競技だ。ライバルチームの対策が進み効率的な成果を挙げられず東で8位に終わったが、それでも1試合平均のチャンスクリエイト数は全体2位の「13.2回」を記録し、潜在的な攻撃力の高さは京都とのプレーオフ初戦の6ゴールで証明された。「ボールを保持して攻撃的に戦う」と宣した柏は、今年も独自の航路図に基づき経験値を蓄積させた。
一方、川崎はプレーオフ最終戦で、サンフレッチェ広島をホームの等々力に広島を迎えた。1点差を追う状況で、長谷部茂利監督も「開始からアグレッシブに」と指示して送り出したそうだが、前半は一方的にゲームを支配されることになった。近年Jリーグを牽引して来た川崎の基盤になっていたのは、風間八宏監督時代に培われた圧倒的な技術に裏打ちされた支配力だった。相手を自陣に閉じ込め緩急自在にボールを動かし、そこから創造性を引き出して危なげなく勝利を手にする。J1を2度連覇した鬼木達監督時代には「1試合3ゴール」を掲げていたが、まったく無謀な響きはなかった。
だがもはや広島とのプレーオフを戦う川崎に技術的な優位性は見られず、シンプルな呼吸のすれ違いだけではなくボール数個分のパスの乱れが相次いだ。むしろ効率的にプレスをかけて追い込む広島にボールとペースを奪われ、必死に身体を張り辛うじてクリアする光景が目立ち、こうした流れから前半終了間際に均衡を破られた。前半のシュート数は、広島の16本(枠内11本)に対し、川崎はわずかに1本(枠内1本)。悲痛なまでのワンサイドは、まるで黄金期の終焉を告げているようだった。
前述の「Transfer Market」は、川崎の戦力をJ1で2番目の市場価値と評価している。市場価値は移籍金(違約金)を想定したものなので、当然ベテランは安めに算定されがちで、優勝した神戸は8位に止まっている。つまり裏返せば、川崎はそれだけピークに近い良質な選手を数多く保有している証左とも言える。
ところが今年のポゼッションは51%で、1試合平均得点は「1.2」で13位に止まった。主導権を握り技術と創造性を活かしてスタジアムを沸かせてきた川崎は、看板の攻撃力を低下させ、同時に1試合平均で全体3位の14.7本(枠内は4位で4.5本)のシュートを許すようになった。その結果オープンで、時には互角以下の攻防を強いられ、その分スタンドを感嘆させるプレーも減少した。
J1で8位という結果を受けて長谷部監督は、シーズンを総括した。
「強く深く責任を感じている。切り替えは、まずまずだったが、得点は少なく、失点は相変わらず多い。そこは選手たちに良いものを表現させてあげられなかった」
同じ下位低迷でも、アイデンティティーを貫いた柏に対し、川崎はせっかく築き上げた特性さえも失いつつある。再建は想像以上に困難を極めそうである。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)

加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。














