異例の「2日連続スタメン」後の“ボトル回収” 名門ユースDFの矜恃「当たり前のこと」

鹿島ユースの林勘太【写真:安藤隆人】
鹿島ユースの林勘太【写真:安藤隆人】

鹿島ユースの林勘太「僕にはチームのために頑張らないといけない責任があるんです」

 4月4日に開幕した高円宮杯プレミアリーグと全国9地域のプリンスリーグ。ここではリーグ戦で躍動を見せた選手を紹介していきたい。今回は鹿島アントラーズユースのDF林勘太について。5月17日のプリンスリーグ関東2部・第7節の桐光学園vs鹿島アントラーズユースB戦では、前日のプレミアリーグEAST第8節の青森山田戦で先発し、87分まで出場をしていた林がキャプテンマークを巻いて2日連続のスタメン出場。CBとして前半の45分間プレーして最終ラインを統率した林の矜恃を目の当たりにした。

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 170cmとCBとしてはサイズこそないが、対人能力の高さと読みの鋭さ、そして運び出せる能力を持っており、右サイドバックでは前へのスプリント力と突破力、クロスの精度の高さを駆使して、サイドにおいて攻守のアクセントとなる。身体能力とサッカーセンスが高いことに加え、メンタリティーも十分に兼ね揃えているのが林の魅力である。

 昨年はBチームのプリンスリーグ関東1部が主戦場で、プレミアEASTの出場は2試合(すべて途中出場)に留まった。

 同級生のDF元砂晏翔仁ウデンバ、FW吉田湊海らがAチームで主軸として活躍する中でも、「悔しい思いはありましたが、それ以上に『自分は彼らよりももっとやらなきゃ』と常に思っていました。絶対にAチームになることを目指して、与えられた場所で全力を尽くすことだけ考えていました」。コツコツと積み重ねてきた結果、最高学年になって右サイドバック、CBとして守備に欠かせない存在としてプレミアEASTで躍動を見せている。

 話を桐光学園戦に戻すと、林は前日の青森山田戦でCBとしてスタメン出場し、2点目と5点目をアシストして5-2の勝利に貢献していた。

「青森山田戦の後にスタッフの人から『明日の試合に備えて』と言われて桐光学園戦に向けたミーティングに参加をしました。そこで『プリンスで出番がある』と気持ちを切り替えて、Bチームで全力を尽くそうと準備していました」

 実はこの時期、鹿島ユースはAFC U17アジアカップに出場するU-17日本代表に選出された5人(GK大下幸誠、DF元砂、倉橋幸暉、MF岩土そら、FW髙木瑛人)が不在だった。その影響でBチームの選手が多く試合に絡み、出場時間を考えてAチームでプレミアのプロテクト選手以外の選手をBチームに回さないと人数的に厳しい状態だった。

 ちょうど林は開幕前の指定に入っておらず、さらにU-18以上の日本代表、2種登録の自動ブロックにも入っていないため、プリンス関東2部に出場可能だった。そんな事情もあって、桐光学園戦のメンバーに入ったのだった。

 この試合で林の左腕にはキャプテンマークが巻かれていた。CBとして味方を鼓舞しながら最終ラインを統率。セットプレーから失点を許してしまい、これが決勝点となってしまったが、前半の45分間では前日の疲労の色を微塵も感じさせない機敏なプレーを見せた。

 そして印象的だったのは試合後の行動だった。出場メンバーがベンチに戻ると、彼は1人ずつ激励した後、ピッチサイドに置かれている引水ボトルを1人で回収しに小走りで向かった。

 鹿島ユースはAもBも試合後の片付けは試合出場有無関係なく選手たちが行っているが、林はプレミアEASTの試合後も出場していない選手の練習に付き合ってボール出しを率先して行ったり、片付けで機敏な動きを見せたりするため、筆者にとっても非常に印象深い選手だった。

 この時も真っ先に片付けに向かう姿があった。そして、両腕にボトルをいくつも抱えてベンチに戻って片付けをした後に話を聞いた。

「今年はありがたいことに、プレミアEASTで開幕戦以外はすべてスタメンで出場させてもらっている以上、僕にはチームのために頑張らないといけない責任があるんです。当然みんなプレミアに出たいと心から思って、悔しい想いを力にして戦っている。特に僕は昨年ほぼBチームで過ごして、プレミアも合計10分程度しか出ていないので、ここにいる選手たちの気持ちは分かるからこそ、全力で臨まないと失礼になる。義務感を持っていましたし、何より勝ち点3がどうしても欲しかったので、負けてしまったことは本当に悔しいし、責任を感じています」

 強い責任感と意志が伝わる言葉を口にした彼は、片付けに関しても、「当たり前のことです」とはっきりと答えた。

「今日、僕は前半のみでしたし、他の選手たちはこの暑さの中でずっとプレーして疲労も溜まっていると思ったので、率先してやりました。それに去年の3年生が本当にプレーや行動でチームを引っ張ってくれたからこそ、今年のように代表組がいない時にも勝ち続けることができて、3冠という偉業を達成できた。だからこそ、今年は僕らがピッチ内外でその姿を見せる番だし、5人がいない今はまさに3年生の意地の見せ所だと思っているので、そこはしっかりと行動しないといけないと思っています」

 気持ちだけではない。プレー面でもサイドバックでは攻守の切り替えのスピード、縦突破からの右足クロス、今年に入って磨き続けているというカットインからの左足のシュートやクロスで存在感を放ち、CBでは堅実な守備と強烈なリーダーシップを発揮する。

 5人が不在時に真価を発揮する強さを含め、林はまだまだ進化の途中にある存在だけに、これから心身ともにチームに欠かせない存在になっていくことが今から楽しみでならない。一生懸命で熱い人間に必ずサッカーの神様は微笑むのだから。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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