水戸を躍進に導いた“選手教育” 週1回30分~1時間…全員参加必須でRB大宮が変わる?

RB大宮の西村卓朗SD「外国人選手やベテラン選手も話を聞いてもらうように」
今年1月からRB大宮アルディージャに環境を変え、選手と向き合っている西村卓朗スポーツダイレクター(SD)。2025年末まで働いていた水戸ホーリーホック時代は、昨季J2優勝のキャプテンのMF大崎航詩、今季J1百年構想リーグEASTで4ゴールと気を吐いているFW渡邉新太らを筆頭に、チーム編成を一手に担ってきたため、選手たちの長所短所やキャラクターを含めて全てを把握していた。(取材・文=元川悦子/全5回の3回目)
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だが、ある意味、“新参者”であるRB大宮に関してはそういうわけにはいかない。だからこそ、一から選手たちを知り、理解を深めるところからスタートしたという。
「日本人選手も外国人選手もそうですけど、まずはお互いをよく知ることが全ての第一歩。自分の存在がRB大宮の選手たちにどういう影響を与えるのかはすごく大事ですし、それぞれのサッカー感をすり合わせたり、課題を共有することも前進への重要なポイント。対話をしながら関係性を築いて、一緒にそこに向かっていくことが重要ですね」
神妙な面持ちで言う西村SD。選手の個性や人間性を知るうえで、水戸時代に行っていた「メイクバリュープロジェクト」という知識習得・人材育成プログラムは有効なアプローチになっていた。それに近い選手教育をRB大宮でも今年2月から導入。「誰のために、何のためにサッカーをしているのか」をより深く考えてもらっているようだ。
「教育システムの体系化は今後進めていきたい重要なテーマではあります。その第一歩としてスタートさせた集合研修は週1回ペースで30分~1時間の時間を取って実施するようになりました。
まずはRBグループが大切にしている理念、『翼をさずける』というスローガンの意味などを説明して、理解を促すところから始めて、広報や営業、事業といったクラブスタッフ、フットボールの専門家、異業種という3部門からゲストを招き、話をしてもらって、教養を高め、選手や関係者間の関係性を深めようと試みています。
もちろん全員参加が基本で、外国人選手やベテラン選手も話を聞いてもらうように仕向けています」
となれば、複数クラブでプレーしてきたベテランの和田拓也や豊川雄太、元日本代表の杉本健勇といった面々、そしてガブリエウ、カプリーニら選手たちも話を聞くことになる。「今さらそんな講義を聞くの」と拒否反応を示されかねないようにも思えるが、そこは西村SDなりに工夫を凝らしている様子だ。
「どういう話をすれば、経験豊富なプレーヤーたちにも響くのかを僕なりに考えて、毎回の内容を考えています。
2月頭から初めて3か月ほど経過し、選手たちがどう感じているかは各々異なるとは思いますけど、水戸でメイクバリュープロジェクトを始めた当初も最初からメチャクチャ響いたわけではなかった。『本当に意味があることだ』と理解してもらうまでには時間がかかりますし、繰り返し取り組んでいくしかないというのが僕の意見です。
サッカーをやる意味や価値、社会的影響にいつ気づくかというのは、選手によってタイミングがある。それが早ければ早いほどいいですね。
例えば、RB大宮の2024年度・2025年度の売上高を聞いて『そのくらいのスケール感なんだ』『J1トップの浦和レッズとはこのくらいの差があるんだ』と分かれば、自分たちもその領域に達し、抜いていきたいという欲が出てくるかもしれない。そういう視点を持ってもらえるようにしたいですね」
強化に携わる人間も、クラブの業務に携わるスタッフも、現場の選手監督も同じ人間。喜びや苦しみを味わうことはある。自分とは異なる生き方をしている人がいれば、多少なりとも興味が沸くだろうし、「自分も壁にぶつかったときにはこの人のアクションを参考にしよう」と考える可能性もある。西村SDも「やはり一番刺さるのは人の生き方です」と強調。そういうエピソードをたくさん聞いてもらって、サッカーへの活力にしてほしいと考えている様子だ。
「クラブスタッフがゲストスピーカーを務めるときもそうなんですけど、僕は『自己紹介を長めにしてほしい』とオーダーするんです。そのなかに仕事への価値観や使命感、紆余曲折の経験などが必ず含まれるので、そういうのをありのまま話してほしいと考えています。
結局、どういう組織も人と人。彼らの思いを理解すれば、選手たちも『僕らのために働いてくれている人たちを喜ばせたい』『みんなで一緒にJ1に上がってタイトルを取りたい』という意欲が高まってくるはず。水戸でもそういった相乗効果は見られたので、RB大宮がもっと早く上昇気流に乗っていけるように、より工夫を凝らしていきます」
西村SDが大事にする人間教育がRB大宮の新たなエネルギーになれば理想的。特に若い世代にはジャンプアップする大きなきっかけになりそうだ。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。


















