「議論を呼ぶ」長友佑都のメンバー選出 疑問の声も…重要な役割を担う「影の貢献者」

森保監督は長友に関しては、「情」や「勝負」で選考したのではない
森保一監督は2026年北中米ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表にDF長友佑都を選出した。長友は39歳で、W杯本大会は2010年南アフリカ大会から5大会連続となる。また過去4大会はすべての試合で先発出場していた。
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この長友の選出について森保監督は次のように説明した。
「プレーヤーとしてインテンシティ高くプレーできる」
「チームが戦う一員としてプレーしてもらえるだけのコンディションである」
「過去4大会の成果も課題もすべて知っている」
「やはり本大会になるとプレッシャーが想像以上に大きくなって、選手たちのメンタル的なところも、経験の浅い選手はコントロールが難しくなるかもしれないという部分において、プレーヤーでも見せられる、そしてコミュニケーションの部分でもチーム全体に影響力を及ぼしてもらえる、貢献してもらえる」
「局面での戦いをワールドカップ基準で持っている」
群を抜いた経験値は高い評価を得るにふさわしい。一方で、2022年カタールW杯のときから長友の選出は議論を呼んでいる。
前回大会の前は長友が先発し、DF中山雄太が途中交代するという起用が多かった。そのため、SBで交代枠を1つ使うのはもったいないのではないか、長友は年齢的な衰えがあるから90分持たないのではないか、左サイドMFの南野拓実が内側に入り込んだスペースを使えていないのではないか、飛び出していったときのカバーとの連携ができていないのではないか、などが批判された大きな理由だった。
今回はさらにポイントとなる部分が多い。前回大会から3歳年齢を重ねただけではなく、3バックの採用が増えたシステムにおいてSBとしての長友の役割が必要かというのがまず一点。
招集回数は多くてもベンチ外ばかりだったのは戦力になっていないのではないか、控えが予想される選手ならもっと若手を入れて経験を積ませたほうがいいのではないか、別の戦力的オプションを入れたほうがいいのではないか、なども問われてもおかしくない要素だろう。
ここで視点を変えて、過去の日本代表の組織運営を振り返ってみよう。
これまでのW杯で、日本代表に登録された選手はすべて試合に起用されたわけではない。すべての大会で第2GK、第3GKの出番はなかった。だからと言ってGKが2人で足りるということではない。プレー、準備、休息、というトレーニングの効率的なサイクルを回すためには、3人の体制が適している。
同じようにフィールドプレーヤーでも出番が少なくても組織運営に必要な選手はいる。出場機会がなかった選手は、1998年大会に3人、2002年と2006年が1人、2010年3人、2014年4人、2018年3人、2022年2人いた。2018年までは23人の登録だったことを考えても、これだけの選手がピッチを踏めなかったのだ。
こうした状況は、組織運営としては一定のリスクを抱えることになる。所属チームでは絶対的な立場の選手が試合に出られずストレスを生じるのだ。
そのため「いざというときは頼りになるが、出番が来なくても輪を乱さない」という選手は大切となる。「不満がある選手の話を聞けて、なだめられる」「沈んでいるチームの雰囲気を好転できる」という資質があればなおよい。
これまでの大会では必ずそういう役を果たしてきた選手がいた。古くは1993年W杯アジア最終予選、「ドーハの悲劇」の際に骨折を抱えながらチームを励まし続けた都並敏史氏に始まり、自身の感情を抑えてチームの勝利に尽くした選手たちの存在がある。「プレーする機会は少ないだろう」と思われつつチームに合流し、他人の支えとなった選手たちは影の貢献者として重要な役割を担ってきた。
長友がメンバーとなるべき性格のすべての要素を兼ね備えているのは間違いないだろう。このチームにおいて、過去4大会に起きたことをチーム内で体験している一人だ。プレーするところを見たいが、仮に出番がなくとも「なぜ入るのか」という疑問には当たらない。
森保監督はメンバー発表記者会見で、選べなかった選手のことを考えて目を潤ませた(ように見えた)が、選考は情に流されたものではなかった。もしも感情的に選んだのなら、もっと前回メンバーが多かったのだろう。だが、ここにきて代表経験の少ないFW塩貝健人やFW後藤啓介を入れてくるあたりに勝負師としての魂を感じさせる。
ただし、長友に関しては「情」や「勝負」で選考したのではない。森保監督は長友がチーム内の役割を果たせるか慎重に判断してきた。招集しても常にベンチ外という試練を耐えていた。それでも長友が観客席からチームを鼓舞する姿を見て、安心してメンバーリストに名前を書き込んだはずだ。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。


















