帝京10番の夢は“南米挑戦” Jクラブから熱視線…高卒プロでの活躍は「マストだと」

帝京の渡辺莉太【写真:安藤隆人】
帝京の渡辺莉太【写真:安藤隆人】

帝京の渡辺莉太「自分のプレーを出せないと、望んでいる世界へは行けない」

 4月4日に開幕をした高円宮杯プレミアリーグと全国7地域のプリンスリーグ。ここではリーグ戦で躍動を見せた選手を紹介していきたい。今回はプリンスリーグ関東1部・第7節の帝京高校vs浦和レッズユースの試合から。現在、思うように勝ち点を積み上げることができない帝京は、この試合も0-1での敗戦を喫した。だが、サイドハーフからインサイドハーフ、FWまで幅広くこなす背番号10・MF渡辺莉太の存在感はどの試合でも突き抜けている。Jクラブのスカウトも熱視線を送る凄み。紐解いていくと、そこには大切なルーツがあった。

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 177cmのサイズに背筋が伸びた姿勢で、滑らかに両足のタッチを使いこなしながらスルスルとアタッキングエリアに侵入してくる。目線は落ちず、相手の動きや重心のかかり方、その後方にいるカバーの存在なども視野に捉えている。直前で判断を変えてドリブルやスルーパス、ワンツーからの抜け出しを仕掛けてくるために、相手にとっては非常に的を絞りづらい。

 昨年は2トップの一角として、絶対的エースストライカーのFW宮本周征(順天堂大)とコンビを組んだ。前への推進力に優れた宮本と絶妙な距離感を保ち、前向きのサポートをしたり、裏へ抜け出して宮本のシュートのこぼれに反応したり、時には宮本を囮にして自ら仕掛けてシュートを放ったりと、攻撃に多くのバリエーションをもたらした。

 10番となった今年は、【4-4-2】の右サイドハーフではサイドで起点を作りながら、カットインから得意の左足のシュートやクロスを放ち、【3-4-2-1】ではインサイドハーフとして1.5列目から果敢な飛び出しを見せる。

 間違いなく帝京の最重要人物になっている渡辺に対し、相手チームもかなりの警戒をしてくる。現に浦和ユースも渡辺には複数枚のマークを置いていた。特に、中への侵入には両CBとボランチがコースを切り、サイドバックやサイドハーフがプレスに行くことを徹底。渡辺もこの分厚いマークに苦しんだ部分はあったが、前半24分には左足でバー直撃のFKを放ち、途中で3バックにしてからはウィングバックへのパスの供給でチャンスを生み出した。

「試合を重ねていくごとに、相手が自分のことを警戒しているという情報とか入ってきて、実際に今日もかなり自分のところを潰しに来ていました。でも、それは僕にとっては喜ばしいことで、こうやって警戒される中でも当たり前のように自分のプレーを出せないと、僕が望んでいる世界へは行けませんから」

 渡辺にははっきりとした将来の目標がある。まず直近の目標は高卒プロになること、そしてプロで活躍すること。将来は南米でプレーするという目標だ。

「お父さんが若い時にアルゼンチンでサッカーやフットサルをしていたこともあって、小さい頃からよくアルゼンチンを中心に南米のサッカーの映像を見ていたんです。アルゼンチンやブラジルのスタジアムの雰囲気が凄まじくて、日本にはない熱狂的な空間の中でプレーしたいと思いましたし、憧れる選手もマラドーナやファン・ロマン・リケルメで、ボカジュニアーズが大好きなんです。あ、でもバルデラマも好きです」

 小さい頃からずっと染みついていたラテンのリズム。小学校3年生から中学3年生までずっと東京ヴェルディのアカデミーで育ってきたこともあり、両足を使って相手の逆を突いていくドリブルや駆け引きが磨かれ、思考もスタイルも、より南米型になっていった。

 高校進学時にはユースに昇格することができなかった。それでも、数ある強豪校のオファーの中で「近年で一番高卒プロが出ているチームで、サッカー的にも自分にフィットすると思った」と帝京を選んだ。

 独特のリズムを刻むドリブルに、右利きだが左足を得意とする両足でのキック。これらを駆使して昨年から頭角を現すと、複数のJクラブから練習参加のオファーが届くなど世代注目のアタッカーとなった。

「高卒プロで活躍する。これはマストだと思っています。Jリーグでしっかりと経験を積んで、活躍した上での南米へチャレンジして、そこでも活躍すること。この目標を達成するために、今何をしないといけないかを理解して、もっと貪欲にやっていきたいと思います」

『莉太(りた)』という名前は「利他の精神を持ってほしい」という願いと、世界のどこに行っても覚えやすく、親しみやすくなるようにという思いが込められている。世界に羽ばたくために、渡辺は「俺が決める」というエゴと、「周りを生かしてチームを勝たせる」という利他の精神を持ちながら、目標達成に向けての準備を惜しまない。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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