空港閉鎖で島に完全孤立「いつ終わるんだろう」 人生の転換点…日本代表FWが覚悟を決めた“場所”

インタビューに応じた日本代表の前田大然【写真:徳原隆元】
インタビューに応じた日本代表の前田大然【写真:徳原隆元】

前田大然がポルトガルでの1年を振り返った

 日本サッカー界が誇る「韋駄天」が目指す先にあるものは——。スコットランド1部セルティックに所属する日本代表FW前田大然は、欧州の荒波に揉まれ、その魂を鋭く研ぎ澄ませてきた。目前に迫る2度目のワールドカップ(W杯)。連載の最後となる「FOOTBALL ZONE」の独占インタビュー第3回では、欧州挑戦の真の転換点となったポルトガルでの過酷な日々、キャリアの集大成として見据える「究極の夢」について語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の3回目)

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「あの時期を乗り越えられたから、今の僕がある。どんな逆境も、サッカーができるならそれでいい」

 どうしようもできなかった。前田が振り返るのは、2019年に松本山雅FCから期限付き移籍で渡ったポルトガルのマリティモ時代だ。大西洋に浮かぶ孤島・マデイラ島。観光地としての美しさの裏側で、21歳の若武者を待っていたのは、日本では想像もつかないような過酷な日常との戦いだった。

「生活環境は本当にタフだった。家の中に蟻が大量に発生したり、言葉の壁もあった。でも、一番の試練は新型コロナウイルスによるロックダウン。島という環境ゆえに、事態は深刻だった。空港が完全に閉鎖されて、島から一歩も出られない。首都のリスボンにすら行けない完全な孤立状態だった。当時は子供も生まれたばかり。妻は本当に大変だったと思う。いつ終わるんだろう……と時を待つしかなかった」

 練習すらままならない日々。しかし、その極限状態が前田の野生を呼び覚ました。「人生ってこういうものなのかな」。置かれた場所で咲く覚悟を決めた。空港が閉鎖され、世界から切り離されたマデイラ島で、彼は自らの牙を研ぎ続けた。

「サッカー面では、やりやすかった。日本よりも激しく、バチバチ戦える強度。こっちの方が合ってるんかな、というのは思った。マデイラ島は場所がすごく良かったし、気候も完璧やった」

 だが、コロナによる影響で未来が見えなくなった。出した結論は「一度、日本に帰ろう」。横浜F・マリノスに加入し、2021年には23ゴールを挙げてJ1得点王という称号を得た。22年1月には再び欧州へ。セルティックでは数々のタイトルを獲得し、今やグラスゴーの街で愛される「ヒーロー」となった。だが、現状に安住することを良しとしない。目指すは高みだ。

「ステップアップして、自分が目標とするプレミアリーグでプレーしたいとは思っています。今はセルティックに感謝しているし、全力でプレーしている。でも、僕はまだ、自分の限界を見ていない。プレミアリーグは、子供の頃からずっと言い続けてきた、僕にとっての夢。1年でもいい、世界最高峰の場所で自分のスピードがどこまで通用するのか、それを証明したい」

 28歳。サッカー選手として脂が乗り、キャリアの絶頂期を迎えようとしている今だからこそ、前田は焦燥感にも似た情熱を燃やしている。かつてポルトガルの孤島で孤独を知ったスプリンターは、今、日本を代表するFWとして世界を見据えている。

「結局、あんまり考えすぎないのがいいのかなって。サッカーのことはピッチで100%考える。でも家に帰れば、子供のお迎えに行ったり、お風呂に入れたり。その切り替えが、今の僕にはちょうどいい。昔みたいに尖っていた頃とは違う、今の自分が一番強いと思っています」

 自らの限界を定めず、ただひたすらに前へ。日本が誇るスピードスターは、今この瞬間も魂を燃やし、その脚で「新たな伝説」を書き換えようとしている。

「怪我をせず、結果を出し続けること。それができれば、プレミアへの扉も、W杯でのベスト8以上の景色も、必ず見えてくる。僕はそう信じて走るだけです」

 北中米の風を受け、再び世界の舞台で咆哮する前田大然。その背中に、日本中の期待が乗っている。韋駄天の物語は、ここからクライマックスへと加速していく。

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■前田大然、初の自叙伝を発売
◆書籍名:「がむしゃら なぜ俺は、こんなに走るのか——。」幻冬舎

◆書籍URL:https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344045804/

◆発売日 5月13日(水)

◆本人コメント
「代表戦のあとに深夜まで撮影した表紙の写真はお気に入りなので、ぜひチェックしてみてください。僕のサッカー人生がわかる一冊になっています。誰かのヒントになればいいなと思います」

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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