40年ぶりのW杯で狙う初勝利 日本撃破のストライカー…戦禍を乗り越えた逆境イレブンが強豪に挑む|イラク

40年ぶりの出場となるイラク代表【写真:ロイター】
40年ぶりの出場となるイラク代表【写真:ロイター】

グラハム・アーノルド監督が率いるイラク代表…剛の国内出身組、柔の海外出身組の共闘に注目

 10大会ぶり2度目のワールドカップ(W杯)出場となるイラクは、元アルゼンチン代表FWディエゴ・マラドーナ氏が見せた神の手ゴール、5人抜きゴールで注目された1986年メキシコ大会以来の大舞台となる。同大会では開催国メキシコ、パラグアイ、ベルギーに3連敗してグループステージ(GS)敗退となった。40年ぶりの出場となる今大会では初の白星奪取を目指す。

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 FIFAランキング57位のイラクは、前大会準優勝のフランス(1位)、セネガル(14位)、ノルウェー(31位)が入るグループIに組み込まれた。順当に予想すればイラクが3戦全敗で4位敗退となるだろう。それでも多くの逆境を乗り越えてきたイレブンは、底知れないリバウンドメンタリティを持っている。強豪国から金星を奪えるか注目したい。

 2003年にアメリカとのイラク戦争が勃発し、国土が荒廃。イスラム過激派テロ組織のイスラム国による破壊活動などによって、多くのイラク人が国を脱出した。ただサッカーの灯火は消えておらず、イラクサッカー協会は時間をかけて欧州に渡った移民の子息を代表に招集し、国内サッカーインフラの再建に力を入れた。

 そして今大会アジア予選では最終プレーオフ(PO)でUAEを3-2で撃破、大陸間PO出場権を勝ち取ったが、逆境は続いた。大陸間PO開催直前に、米国とイスラエルによるイランへの大規模な軍事攻撃により、イランが周辺湾岸諸国へ報復攻撃を開始したため、中東情勢が悪化。国内の空港が閉鎖され、大陸間PO出場が危ぶまれた。その後国際サッカー協会などの協力を得てチャーター機で大陸間POの開催地であるメキシコへと渡り、南米のボリビアを2-1で破ってW杯出場切符を勝ち取った。

 逆境を跳ね除けて戦うイレブンを率いる指揮官は、オーストラリア人のグラハム・アーノルド監督だ。かつて当時J1のベガルタ仙台を指導し、オーストラリア代表では2022年W杯カタール大会でベスト16に導いたベテラン指揮官だ。昨年5月に就任してから8勝2分3敗と上々の成績を残しており、ボールを丁寧に繋ぐパスサッカーでチームの攻撃を改善してみせた。

 戦乱による国土の荒廃により、多くの国民が海外へと流出した。その影響もあり、イラクは国内生まれの選手と海外生まれの選手が混在しており、奇しくもこの歪な状況がチーム力強化につながった。

 まず国内出身の選手であるイラク1部アル・カルマのFWアイメン・フセインは身長189センチを生かした空中戦の強さで得点源となっており、2024年1月に開催されたAFCアジアカップGSで日本相手に2得点を奪う活躍で2-1勝利の原動力となった。フセインと2トップを組む相棒のUAE1部ディバFCのFWモハナド・アリは、当時ポルトガル1部だったポルティモネンセなどでプレーした実力者であり、DFラインの隙を突く背後への抜け出しを武器にしている。

 剛の国内出身組に対して、海外出身組は柔と表現して差し支えないだろう。イングランド出身で同国1部の名門マンチェスター・ユナイテッドでプレーしたMFジダン・イクバルは、現在所属するオランダ1部ユトレヒトや代表の中盤でパスを捌く司令塔として活躍している。イタリア2部ヴェネツィアのFWマルコ・ファルジはノルウェーで生まれ育った技巧派ウィンガーだ。幼少期にイングランドへ渡ったイングランド2部イプスウィッチ・タウンのFWアリ・アル=ハマディは、2024-25シーズンのプレミアリーグで11試合に出場した。

 国内出身組、海外出身組の結束は強く、多くの逆境を跳ね除けて大舞台の出場権を獲得した。メソポタミアのライオン(チームの愛称)に恐れるものはない。格上の強豪と粘り強く戦い、今も戦禍の残香によって苦しんでいる国民にW杯初勝利という吉報を届ける。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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