トップ昇格…鈴木優磨らと対峙で「本当に難しい」 鹿島の191センチ逸材が痛感した“差”

鹿島・元砂晏翔仁ウデンバ【写真:安藤隆人】
鹿島・元砂晏翔仁ウデンバ【写真:安藤隆人】

鹿島の元砂晏翔仁ウデンバ「まだトップの試合に出られるようなレベルにはいない」

 4月4日に開幕した高円宮杯プレミアリーグと全国7地域のプリンスリーグ。ここではリーグ戦で躍動を見せた選手を紹介していきたい。今回はプレミアEAST第2節・帝京長岡vs鹿島アントラーズユースから。開幕戦を落とした鹿島ユースだったが、この試合では攻撃陣が爆発し、4-2の快勝を飾った。最終ラインを統率した、昨年12月にトップ昇格した191センチの長身CB元砂晏翔仁(もとすな・あんとに)ウデンバは、中学時代のチームメイトとのバトルを心から楽しんでいた。

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「中学時代から仲がいいメンバーだったので、本当に対戦を楽しみにしていましたし、当時は一緒にやって本当にサッカーが楽しかったので、今日も自分の出来はともかくですが、楽しかったです」

 兵庫県姫路市出身のウデンバは中学時代、フレスカ神戸ジュニアユースでプレーしていた。当時からずば抜けた身体能力と圧倒的なサイズに注目が集まり、将来性を買われて強豪Jクラブユースや強豪校からオファーが殺到。争奪戦の末に鹿島にやってきた。

 対する帝京長岡には、同級生のMF和食陽向、FW岡中舜、そして1学年下のFW児山雅稀がおり、3人ともスタメン起用された。帝京長岡がプレミアWESTからEASTに移行したことで実現した対戦で、公式戦では高校入学後、これが初対戦となった。

 ウデンバのコンディションは決して良いとは言えなかった。帝京長岡は1トップの児山、トップ下の和食、左サイドの岡中が狙うカウンターで優位に立ち、後手に回る場面もあり、2失点を喫した。それでも時間の経過とともに、徐々に集中力は研ぎ澄まされていった。

 そして4-2で迎えた後半40分。詰めかけた1530人の観衆もどよめくスーパープレーが生まれる。

 中央で縦パスを受け、鋭いターンからドリブルを仕掛けた児山に対し、鹿島ユースのDF2人は一瞬でかわされた。この瞬間、カバーに入るため猛然とダッシュで戻っていたウデンバは、「最初はインターセプトを狙った味方が触れるかなと思ったのですが、(児山)雅稀なら先に触って突破を仕掛けてくるかもしれないと思って足を止めませんでした」とさらに加速。児山は完全にGKと1対1の局面を作り出していたが、右足でシュートを打とうとした瞬間、ウデンバの足が伸びた。

「いきなり足が出てきた」と相手も驚くほどの『ここしかない』タイミングでのスライディング。シュートインパクトの直前にボールを右足のつま先で突き、ボールはそのままエンドラインを割った。

 圧巻のスライディングクリア。スタンドからは大きなどよめきが起こり、転倒した児山は悔しそうに地面を叩いた。

「正直、今日の自分のプレーがひどくて、勝ちはしましたが本当に納得できていません。でも、あのタックルはチームにとって悪い流れを食い止める意味でも大きかったとは思います」

 試合後、こう語ったように、思うようにプレーできなかった中で生まれたビッグプレーは、チームにとってもウデンバ自身にとっても大きな意味を持つものだった。

 前述の通り、すでに昨年12月にトップ昇格し、今年1月にはMF林晴己、1学年上のDF大川佑梧、同級生のFW吉田湊海らとともに新加入会見も行った。現在はトップで練習しながらユースの試合にも出場しているが、その状況についてウデンバはこう語る。

「ずっとトップで練習をしていて、やっぱりトップの試合でプレーしたいという気持ちはもちろんありますが、ユースで試合に出ることも僕にとっては重要な機会だと捉えています。正直、まだトップの試合に出られるようなレベルにはいないと思うので、悔しさを持ちながらも、ここでしっかりと試合経験を積んで成長して、高校年代なら全てシャットアウトできるような選手になりたいと思っています。だからこそ、今日は2失点をしたことが本当に悔しいんです」

 ユースとトップの行き来は簡単なことではない。鹿島に限らず、これまで多くのJユース所属でトップ昇格を果たした選手たちが「いろいろな環境が変わるので簡単なことではない」と口をそろえてきたように、ユースだからといって力を発揮しやすいわけではない。ウデンバもそれを感じながら、重要な実戦経験の場と捉え、与えられた場所で全力を尽くし、自己研鑽を重ねている。

「今トップでCBやボランチをやらせてもらっているのですが、守備で対峙する時に感じるのは、レオ・セアラ選手や鈴木優磨選手、荒木遼太郎選手など、トップのアタッカーは全員『次のところを考えてプレーしている』ということです。目の前の相手だけではなく、次のスペース、次のプレーまで捉えているので、駆け引きが本当に難しい。サイズがある選手でもアジリティーやステップワークが軽く、スピードもあるのでより難しさを感じます。僕ももっといろいろなことを吸収して、駆け引きやスピードで勝てるようにしたいと思っています」

 あのビッグプレーは、まさにトップで体感し磨き続けてきたものが表現された瞬間だった。実戦を通じて一つひとつ成功体験を積み重ねながら、ウデンバはさらに成長していく。

 最後に、かつての仲間との対戦を振り返ってもらうと、それまでの引き締まった表情が一変し、高校生らしい笑顔がこぼれた。

「懐かしかったし、本当に嬉しかった。3人以外にもフレスカのみんなが全国各地のチームで試合に出ているので、戦いたいなと思うし、みんなプロになって欲しいなと思っています」

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。

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