父は元代表…世間から注目「重圧はもう感じない」 重責を担った”ナンバー14”「ここからです」

イギョラ杯を制した日大藤沢の中村龍剛
4月の第一週から始まる高円宮杯プレミアリーグ、プリンスリーグ。開幕に向けて各チームは着々と準備を進めている。ここでは開幕に向けて気持ちを昂らせている選手たちを紹介していきたい。
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今回はイギョラカップを制した日大藤沢のキャプテン・MF中村龍剛について。キャプテンの重責を担ったナンバー14が期する覚悟とは―。
「去年の選手権でベスト8に行ったチームからキャプテンを引き継いで、今回のイギョラカップが初の大会だったので、正直、ちょっと緊張していました」
左に巻かれたキャプテンマーク、そして選手権で背負った14番を今年も引き継ぐことになった中村は重みを感じていた。
「父(中村憲剛)の息子という重圧はもうあまり感じていません。14番は自分でも好きな番号だし、周りからも『やっぱり似合うね』と言ってもらえるので、1年間背負う覚悟はできています。それ以上にキャプテンという立場の方が重圧を感じています」
どうしても自分について回る看板はある。だが、昨年1年間、急激に加速して行く注目度の中で、常に自分にベクトルを向けて、自問自答と周りの意見にきちんと耳を傾けながらサッカーに向き合い続けることができたことで、1つの折り合いがついた。
今年は『次のフェーズ』に進む。それがキャプテンとして周りに目を配りながら、チームとしていま何が必要か、自分が何をすべきかを考えながら行動しなければならない自分と向き合うことだ。中村はこの重要な役割を、責任感と共に背負おうとしている。
「佐藤(輝勝)監督からはずっと『野心を持ちなさい』と言われ続けているのですが、僕の中ではこの野心を誰よりも持っているという自負があるんです」
キャプテンの責務もまた中村にとって野心に火をつける重要な要素だった。昨日の自分を超えるためには、黙々とサッカーをしていればいいわけではない。全体を俯瞰で見る目を養い、そこで得た情報を行動で発揮するリーダーシップは、ピッチ上の自分のプレーにもしっかりとリンクして行く。
その決意が初陣となったイギョラカップでプレーとして表現された。初戦の神戸弘陵戦でFW徳能大智がハットトリックを達成し、4-0の勝利を収めると、続くQUON FDにも2-0の勝利。初日を好発進すると、グループリーグ3戦目のFC東京U-18戦でリーダーの意地が形になって現れた。
0-1の敗色濃厚の状態で迎えた終了間際。左よりの位置でFKを獲得すると、ボールをセットした中村は強く吹いている風を頭に入れながら壁の位置を見た。
「ほぼラストワンプレーぐらいだったので、『絶対に外せない』と思いました。相手の壁がすごく高かったし、風もあったのでこれは強く蹴って巻く形でファーしかないと思い切って狙いました」
右足をしなやかかつ豪快に振り抜いて、インフロントで擦り上げると、ボールはライナーで急激なカーブを描きながらゴール右上隅に突き刺さった。圧巻のFKが値千金の同点弾を生み出し、この引き分けがチームのグループリーグ首位通過の大きなきっかけになった。
勢いに乗ったチームは決勝トーナメントにおいて準々決勝で仙台育英を、準決勝でV・ファーレン長崎U-18をいずれも完封で退けて決勝まで駒を進めた。
そして、雨中の激闘となった鹿児島ユナイテッドU-18戦、4-3-3のアンカーに入った中村は、チーム全体で疲労が色濃く出る中でも、守備面で献身的なプレーを見せた。
パスはブレることが多かったが、「コンディションが良くない分、アンカーとしてチームの守備を支えることだけは絶対に集中しないといけないと思った」と、常に首を振って周りの状況やボールが動くルートなどを把握し、相手がトラップミスをした瞬間を見逃さずに果敢なプレスを仕掛けた。
特に後半は中央を埋めるべきところと、自分のエリアを飛び出してプレスに行くところのメリハリがはっきりとしており、飛び出したらパスコースを切って選択肢を奪うプレスと奪い切るプレスを巧みに使い分けて、相手の強烈な2トップにボールを送り込ませない巧妙な守備を見せた。
試合は前半の徳能のスーパーゴールを守り切って1-0の勝利。決勝トーナメントを無失点で切り抜けての優勝を手にした。
「今大会は絶対に優勝して、プリンスに向けて弾みをつけるという目標でやってきたので、この結果はチームとしての自信になりましたし、満を持してプリンスに挑戦できるかなと思います」
試合後、安堵の表情を浮かべていたが、それも最後の集合がかかる時点で表情は変わっていた。佐藤監督から「これで浮かれてはいけない。勝負はここから。プリンスリーグという新しい戦いに向けて、もう一度自分たちを見つめ直さないといけない。この勢いでいけるような甘いリーグじゃない」という言葉を引き締まった表情で真剣に聞いていた。
チームは昨季、ずっと阻まれ続けた参入戦を突破して、悲願のプリンスリーグ関東2部昇格を手にした。先輩たちが引き上げてくれた舞台を守るだけではなく、1部昇格、そしてプレミアリーグ昇格に向けて引き継いでいかないといけない。
「キャプテンとしてもそうですし、アンカーとしても『中盤で最後の砦』という意識を持ってプレーしないといけないと思っています。ここからです」
尊敬する父から言われた「うまい選手じゃない、怖い選手になれ」。彼はまさにその階段を意識的に、かつ力強く覚悟を持って踏み出している。左腕のキャプテンマークはその歩みを止めない彼の1つの決意表明の証でもある。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















