アルゼンチン代表は「かなり怪しい」 鉄壁守備は健在も…大きなリスクを抱えている理由

大会中に39歳になるリオネル・メッシ、10番のいない10番システムに
2026年の北中米ワールドカップ(W杯)で連覇を狙うアルゼンチン代表は現在FIFAランキング2位。南米予選は危なげなく1位通過している。鉄壁の守備が強みだ。
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予選18試合で無失点が11試合、1失点が4試合、2失点が3試合。2失点した試合はすべて敗れていて、それ以外に予選で負けたのは最終戦のエクアドル(アウェイで1-0)だけ。アルゼンチンに2得点すれば勝てそうだが、それがあまり起きそうにない。
アルゼンチンは伝統的に守備の固さで知られている。牧草地はボールが止まるのでフィジカルコンタクトが多く、そのためハードな守備力が養われたとよく言われる。今の選手たちが牧草でプレーしているわけではないが、アルゼンチンのフィールドは芝生がかなり深めではある。1960~70年代にリベルタドーレス杯でアルゼンチンのクラブが席巻した時代には激しい守備、というよりラフプレーで有名だった。インターコンチネンタルカップで欧州勢が対戦拒否した一因とされている。
もう1つの特徴は技術の高さ。多くの技巧派を輩出し、アルフレード・ディ・ステファノ、ディエゴ・マラドーナ、リオネル・メッシの史上最高クラスを3人輩出した。
初優勝の1978年W杯はセサル・ルイス・メノッティ監督が率いた攻撃的なチームだったが、86年の2度目の優勝はカルロス・ビラルド監督の下、強固な守備とマラドーナの個人技の組み合わせ。攻撃型のメノッティ派、守備型のビラルド派という両極のスタイルがあったわけだ。
3度目の優勝だったカタールW杯のアルゼンチンはビラルド型に近い。一時はマルセロ・ビエルサ監督がボール保持とプレッシングを組み合わせて、2つのスタイルを統合したかにみえたが、いつのまにか守備型に回帰した。メッシという破格の「10番」を得たからだろう。
アルゼンチンは常に技巧的な10番タイプを生み出してきた。バロンドールを獲得したオマール・シボリ、マラドーナの後継者だったアリエル・オルテガ、2006年W杯の中心だったフアン・ロマン・リケルメ……。ただ、そのなかでもマラドーナとメッシは例外で、必ず1、2点はもたらしてくれるスーパーな存在なので、1失点以内に抑えれば負けない計算が立つ。また、スーパーエースの守備負担を支える必要もあるので、ハードワーカーの数が多くなり守備型に傾くわけだ。
10番を押し立てて残りのフィールドプレーヤー9人が汗をかく。メッシが君臨した時代に定着したスタイルだが、もともと馴染みのある戦い方でもあった。
北中米大会でもメッシがプレーするなら、アルゼンチンの戦い方は同じだろう。しかし、同じ効果を期待できるかというと実はかなり怪しいのではないか。
メッシは大会中に39歳になる。北中米大会は試合会場によって酷暑も予想され、移動負担も大きい。決勝まで勝ち進めば従来よりも多い8試合になる。米国でプレーしている慣れはあるとしてもフル出場は考えにくい。1回のプレーで得点を生み出す能力は格別なので、スーパーサブとしての起用したくなるが、メッシはそういうタイプではない。フィールドの中で敵味方の配置や状勢を分析し、得点のストーリーを創り上げる選手だからだ。
アルゼンチンのメンバーは4年前とほとんど変わらない。10番を必要とするメッシ仕様である。だが、もうメッシに依存できない状況ではないだろうか。10番のいない10番システムは強固な守備だけが残る。チームを再構築するのか、それともまだメッシに頼るのか。依然として優勝候補ではあるが、大きなリスクも抱えている。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。













