冬の風物詩?「7年に1回しか行けない」 “三度目の正直”へ…鍵は「何でもやれる」三人衆

尚志は準決勝で神村学園と対戦する
第104回全国高校サッカー選手権大会第5日は1月4日、埼玉と神奈川で準々決勝4試合が行われた。浦和駒場スタジアムでの第1試合では、尚志(福島)が帝京長岡(新潟)に1-0で競り勝ち、7大会ぶり3度目のベスト4に進んだ。初のファイナル進出を懸け、1月10日の準決勝で神村学園(鹿児島)と対戦する。
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前半から尚志が攻勢に出た。いずれもDFにブロックされたが、11分と15分に右2列目のMF大熊瑠空(2年)が持ち込んでシュート。16分には左2列目のMF臼井蒼悟(3年)が強烈な一撃をお見舞いしたが、これもDFに跳ね返される。25分、31分、36分。先制点とはいかなかったものの、いい形からシュートを打つ場面を数多くつくった。
尚志の仲村浩二監督は「相手があまり出てこなかったので、冷静にボールを回せて自分たちの流れができました」と回想する。前半は昨季のプレミアリーグWEST9位の帝京長岡に2本のシュートしか打たせず、優勢に試合を進めた。
ハーフタイムのドレッシングルームの様子を指揮官がこう明かす。「楽しかった、楽しかったって選手は少し興奮していたのでリセットしてもらったんです。楽しいサッカーができても、勝たなくてはいけないと伝えました」。こういう展開には思わぬ落とし穴がつきものだ。百戦錬磨の仲村監督は手綱を締め直して後半のピッチに送り出した。
8分、13分、19分とよどみのないパスを通して惜しい形に持ち込んだ。そうして21分、臼井が3本目に打ったシュートが、尚志をあこがれの国立競技場へ導く会心の決勝ゴールとなった。
後半開始からMF田上真大(3年)が左2列目に入ると、臼井は右の2列目にポジションを変えていた。FW根木翔大(3年)が田上からのボールを左サイドで預かると、真ん中のスペースに走り込んだ臼井に完全無欠のパスを届ける。GK仲もクリアしようと全速力で前進したが、臼井が一瞬早く右足を振り抜いた。
「翔大からパスが来ると信じて走りました。キーパーが出てきたけど、絶対に決めてやろうという強い思いがあったので決められてうれしい。ボールが来る回数は多かったのに、いいシュートを打てずに迷惑をかけていたので決められて良かった」
GKをかわしてから確実に流し込む選択肢もあったと思うが、「(2回戦の)山梨学院戦で(同じような形を)外してしまったから、ちょっと浮かして狙いました」と説明する顔も喜びでいっぱいだった。
6-0で大勝した高松商(香川)との1回戦で初ゴールを挙げ、3回戦では後半追加タイムに右CKからヘッドで決勝点をマークし、神戸弘陵(兵庫)を倒した。これで2戦連続の決勝点だ。
仲村監督は「覚醒したかな。いつも(ああいう)1対1を外していたのでシュート練習の大切さに気付いたんです。全国高校総体(インターハイ)で負けた後は、かなり自主練習をするようになった。こんなにゴールを取ってくれるとは思わなかった。責任感と向上心があったからですね」と八面六臂の活躍に目を細めた。
大物不在も…全員が持つ「自分がやってやる」
優勝した昨季のプリンスリーグ東北では、同僚の根木とともに3位タイの14得点。首位は18点を挙げた田上だ。この3人は指揮官も「ものすごく攻撃力があり、何でも自信をもってやれる選手」と全幅の信頼を寄せるアタッカー三人衆である。
決勝点の最終パスを送った根木は「決めてくれると信じて出したら、気持ちで押し込んでくれた。自分でも行けた? 誰が決めてもチームの勝ちにつながるので確率の高いほうを選びました。プリンスリーグでは田上と臼井が取ったら次は自分、というふうに互いに刺激し高め合いました」と言う。
臼井の横顔を尋ねると「サッカーがうまいし、ひとりで何でもこなせる。人間的には会話がすごく面白いですよ」と紹介してくれた。
栃木SC U-18でプレーした兄の影響でサッカーを始め、4強入りした第97回大会で得点王に輝いた染野唯月(現J1東京ヴェルディ)の活躍を見て尚志に進んだ。「1度、練習に来てくれました。紅白戦で2トップを組んだのですが、もうすごかったです」と当時を振り返りながらうなった。
このチームには染野クラスの大物は不在だ。それでも臼井は「スターがいなくてもうちは一人ひとりが大きな存在なので、『自分がやってやる』という自覚をみんなが持っている」と胸を張った。
尚志は90、97回大会に続いてまた7大会ぶりの準決勝進出となったが、仲村監督は「7年に1回しか行けない」と言って報道陣を笑わせ、「新しくなってからの国立は初めてなので、選手が楽しんでプレーしてくれることを願っている」と、昨夏のインターハイ準決勝で敗れた神村学園との再戦を待ちわびる。
臼井はこの日、中継局のヒーローインタビューを受けた。神戸弘陵戦の“お立ち台”に立つのも本当なら臼井だったが、決勝点はMF迫田悠聖(2年)とアナウンスされ、インタビューも迫田だった。
なぜ俺じゃないの? と不思議じゃなかったのか水を向けると、「面白くないとかそんな気持ちはなく、何とも思いませんでした。でもみんなが迫田に駆け寄ったのでちょっと驚きました」と笑い、「誰が取ってもチームが勝てばいい。夏は歯が立たなかった神村にもチーム力で挑み、みんなの力で勝って決勝に行きたい」と力こぶを入れた。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。


















