“大会ナンバーワン”を抑えたすっぽんマーク「きつかった」 動画で3時間研究「どこまでもついて」

帝京長岡MF稲垣がJ1川崎内定の長璃喜を抑えた
第104回全国高校サッカー選手権第4日は1月2日、首都圏4会場で3回戦8試合が行われ、ベスト8が出そろった。浦和駒場スタジアムでは東西プレミアリーグ勢の対決があり、帝京長岡(新潟)が昌平(埼玉)を1-0で勝利。1月4日の準々決勝で今季のプリンスリーグ東北を制した尚志(福島)と激突することになった。
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帝京長岡は立ち上がりからゴールを目指す意欲が旺盛で、外から中からスピード豊かに昌平陣営へと押し寄せた。決勝点となる先制点は、前半15分に左シャドーに入ったMF樋口汐音(3年)によるものだが、自身“3度目の正直”で実らせたゴールでもある。
まず6分に重量感のあるドリブルで突破し、GKと1対1の決定打を放ったが阻止され、12分には相手ボールを奪ってから右足で強烈な中距離弾。これはバーの上をなめるように通過していった。
そうして3度目が到来する。右ウイングバック稲垣純(3年)が、右サイドを深くえぐって鋭いクロスを配給。樋口がこぼれ球を右足で打ち抜くと、相手CBに当たってゴールインした。5-0で大勝した大社(島根)との1回戦に続く決勝ゴールをものにしたヒーローは、「ファーサイドが空いていたのでそこに入ってパスを受けました。思い通りのゴールです」と会心の笑みを振りまいた。
9位だった昨季のプレミアリーグWESTではチームトップの6得点をマーク。古沢徹監督は「スケールの大きい選手。プレミアリーグの前期はそれほど前に出ていくことがなかったが、後期から自由に動いて大胆なプレーをするようになりました」と特長を説明する。
難敵の昌平を倒す得点について聞かれると、「めちゃくちゃ気持ち良かった。こんなに大勢のお客さんの前でプレーするのかと思うとアドレナリンが出てしまい、プレーが落ち着きませんでした」とジョークを飛ばして笑いを誘った。
前半のその後のシュートは、FW杉本鎌矢(3年)が34分に放った1本だけだが、樋口や右シャドーの中澤昊介(3年)の推進力、杉本とFW上田十輝(3年)のしゃにむに前へ進むどん欲な姿勢が昌平を後ずさりさせた。
大会ナンバーワン選手を抑えたすっぽんマーク
昨季のプレミアリーグEASTでは残留ぎりぎりの10位と低迷した昌平だが、長璃喜と山口豪太(ともに3年)という、ともに今季のJリーグ入りが内定している腕っこきのMFがいる。初戦の2回戦ではそろってゴールを挙げた。
この二人を封じ込まないことには勝機は見いだせない。古沢監督は①しっかりついていくこと②ふたりにパスを入れさせない-という戦略で臨んだ。首尾よく実行できるかは不透明ながら、こと守備に関しては自信を持って大会を迎えている。それには訳がある。
プレミアリーグは開幕から1勝4敗と不振だったが、5月6日の第6節で昨夏の全国高校総体準優勝の大津(熊本)を2-1で倒した。シュート数は7対17と2倍も打たれた。
古沢監督は「守りでしのいでしのいで勝った試合でした。これがターニングポイントになり、チームの方向性が決まった。一瞬たりとも気の抜けない相手と戦い、毎日の練習から高い強度をつくり上げました。ただし守りでリズムをつくりますが、常にゴールは狙っている」と述べ、テンポのいい守りと融合させ、アグレッシブな攻撃を展開することを付け加えた。
古沢監督は「大会ナンバーワン選手」とJ1川崎フロンターレへの加入が内定済みの長を警戒。あの速さと軽やかドリブルを止めるのは、平均的な高校生では容易ではない。
そんな難しい使命を申し付けられたのが、左2列目で先発した長の対面に位置する稲垣だ。「どこまででもついていきました」と“すっぽんマーク”に徹し、「長君はスピードがあって1対1に強い。彼のプレー動画を3時間くらい見て動き方などをじっくり研究しました。抑えられた? はい、チームが勝ったのでうまくいったと思います」と喜んだ。
その長に密着マークされた感想を聞くと、「マンマークはきつかった。もっとボールを受けられれば、違う攻撃もできたと思うけど、ずっとマークを受けていたので自分にパスが出てこなかった」と疲れ切った表情で答えた。
昌平には前後半で計8本のシュートを打たれたが、決定打は2本だけだ。後半3分、山口にDFのパスミスを奪われて左足を振り抜かれた1本。同アディショナルタイムには長に強烈な一撃を浴びたが、GK仲七璃(2年)が右手でかき出す好守を披露した。
高川学園(山口)との2回戦は、2点をリードされたまま後半アディショナルタイムに入り、敗色濃厚の情勢に追い込まれていた。だが、後半41分に1点を返すと同42分に起死回生の同点弾を決め、PK戦勝利を呼び込んだ。
強敵を破っての5大会ぶりの8強入り。準々決勝の相手は昨夏の全国高校総体準々決勝でPK戦負けした尚志だ。樋口が「日本一を取るために帝京長岡に入学した。次は夏のリベンジを果たしたい。今日みたいな集中した守備で戦います」と言えば、稲垣も「しっかりした守備でリズムをつかみ、いい攻撃につなげて夏のお返しをしたい」とそろって雪辱を誓った。
勝てば自身が持つ新潟県勢の最高成績であるベスト4に並ぶ。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。




















