58歳カズ、来季契約は「誰とも何の話も」 鈴鹿は再契約前向きも…5部降格で懸念材料

東海リーグ降格となった鈴鹿の三浦知良「まずはオファーがいただけるかどうか」
58歳のカズはどこへ行くのか――。JFL・アトレチコ鈴鹿のFW三浦知良が11月30日、チームの東海リーグ降格が決まったVONDS市原との入れ替え戦の後、プロ41年目への思いを口にした。怪我で満足に働けなかった1年を振り返り「次に生かしたい」。現役続行に意欲を見せながらも鈴鹿との契約が切れる来年1月31日以降は未定。「何も決まっていない」と話した。
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実際にカズが所属するのはJ1からJ2への降格が決まった横浜FC。鈴鹿やポルトガルでは同クラブからのレンタル契約でプレーしてきた。契約期間が終われば古巣に戻るのが基本。横浜FCは契約を打ち切るつもりはないため、そのまま籍を置いてJリーガーであり続けることも可能だ。
カズ自身が出場機会を求めて2022年に横浜FCからJリーグ4部相当のJFLに新天地を求めた経緯もあり、来季もレンタルでの移籍先を模索することは確実。今季は怪我もあって満足な状態でプレーできなかったとはいえ、年齢的にもレベルも強度も高いJリーグで出場時間を得るのは難しい。カテゴリーを下げて出場時間を確保するのが現実的だ。
候補の1つは今年プレーした鈴鹿。入れ替え戦後の会見で契約延長について質問が出ると、「それも視野に入れながら」と答えた。鈴鹿ポイントゲッターズ時代から2年半プレーし、クラブや地域への愛着もある。何より「チームの力になれなかった」と話す今季の悔しさを晴らしたい思いもあるはずだ。
もっとも、鈴鹿とは「こういう試合(入れ替え戦)があったので、まだ誰とも何の話もしていない」。さらに「僕が決められることではない。まずはオファーがいただけるかどうかが大事になる」と慎重に話した。
JFL残留か東海リーグ降格の瀬戸際で動きがとれなかった鈴鹿側だが、カズと横浜FCへは契約延長のオファーを出す予定。斉藤浩史オーナーは「本人の気持ちが大事だが、クラブとしては残ってほしいと思っている。近いうちに話しをすることになる」と再契約に前向きに話した。
JFLに残留した場合には、秘策も用意していた。チームへの合流を来秋の新シーズン開幕に合わせ、それまでの半年間は合流せずに体のメンテナンスに専念するというプラン。怪我が治り切らなかった今季を反省してのものだが、変わらず春に開幕する東海リーグへの降格で幻に終わった。
斉藤オーナーが不安視するのは東海リーグの環境だ。1部が8チーム(鈴鹿の降格で9チーム)と少ないため、リーグ戦の試合数はJFLから半減する。ピッチ状態に恵まれない会場での試合もある。「環境が変わるので、そういうリーグでやってくれるのか、やってもらっていいのか、というのはある」と斉藤オーナーは契約延長を望みながらも不安を明かした。
カズ自身、J1のヴィッセル神戸からJ2の横浜FCに移籍した2006年に「どこでプレーしてもサッカーは同じ。地域リーグでも県リーグでも変わらない」と話した。当時、代表レベルの選手がカテゴリーを下げて移籍することは異例(今は珍しくないが)だったが、本人にカテゴリーは関係なかった。
その思いは今も変わらないはずだが、年齢を重ねて現実的な問題も出てきた。カテゴリーを下げれば環境は悪化し、身体への負担も増す。怪我のリスクも増える。2006年当時の横浜FCは専用施設を持たず、人工芝のグラウンドを借りてコインシャワーで汗を流した。40歳のときは問題なかったが、60歳を前に同じことをするのは難しい。「カテゴリーは関係ない」とともに「どこでもいいわけではない」も本音だ。
2022年のJFLで2得点して以来公式戦のゴールはなく、今季も目立った活躍はできなかった。それでも、その存在は貴重。戦力としてだけではなく、豊富な経験で若い選手に与える影響も大きい。「カズさんの言葉は重い」「カズさんのサッカーへの姿勢に刺激を受ける」とチームメートは言う。
さらに誰もが知る「顔」としてチームの地域密着などでの貢献度は絶大で、その人気は観客増にも直結する。JFLからJリーグに上がるための条件に「平均2000人以上の集客」があるが、ここ数年はホームの鈴鹿戦でハードルをクリアしたチームも少なくない。JFL挑戦初年度ほどではないとはいえ「カズ効果」はまだまだ衰えていない。
カズ自身は現役続行に意欲を見せながら、現役にしがみつくことは否定している。「現役を続けたいと言っても、僕が決められることではない。オファーがなければ辞めるだけ」と引退について話したことがある。それでも、カズを高く評価するからオファーは届く。鈴鹿だけでなく、JFLや地域リーグなどには獲得を検討するクラブがある。「争奪戦」が再び起こる。
カズの60歳に合わせたわけではないだろうが、タイミングよく日本サッカーのシーズンが移行する。来季のJリーグとJFLは2026年秋開幕。2027年2月26日が60歳の誕生日だから、新シーズンの1年目が「還暦シーズン」になる。鈴鹿での契約延長や他クラブで地域リーグを戦うのか、チームを変えてJFLでのプレーを続けるのか、それともJリーグ復帰なのか。発表は背番号にちなんで来年1月11日か。58歳の周囲はまだまだ熱い。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。





















