何度も戦った国立のピッチも「また別の世界」 “魔物”を知る指揮官…初の決勝でも町田が勝てる理由

町田を率いる黒田剛監督【写真: 森 雅史】
町田を率いる黒田剛監督【写真: 森 雅史】

青森山田高校の監督として「国立の決勝」を戦った経験を持つ

 11月22日に迎える天皇杯決勝。ヴィッセル神戸戦を前にFC町田ゼルビアの黒田剛監督が11月20日に取材に応じ、「国立競技場での決勝戦」に住む「魔物」について語った。

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 青森山田高校の監督時代に全国高校サッカー選手権大会で2度、「国立の決勝」を戦った経験を持つ。2009年度には旧・国立競技場で、山梨学院大付と対戦。下馬評では青森山田が有利だったが、0-1で敗れた。2021年度には新・国立競技場にて4-0で大津高校(熊本)を下し、優勝を果たしている。「決勝は準決勝とは違って、よく『国立には魔物が住んでいる』と言われるように、あっけないゴールで決着したり、考えられないようなシュートが決まって1対0で終わるとか、何気ない一つのプレーがPKになったりする」のだと振り返る。

 そして、11月9日・リーグ戦、同16日・天皇杯準決勝のFC東京戦と2週連続国立でプレーしているが、「これはまた別の世界」だという。「決勝に起こってきたいろんな事故もあるし、ちょっとしたところがあだとなって負けてしまうこともある。開始数分で決着がついてしまうような事象が起こったりもする。それも含めて国立の怖さでもある」と気を引き締めた。

 対戦相手の神戸については「すごくリスペクトする気持ちはある」としながらも、「その神戸に大勝負の舞台、この決勝という舞台で、しっかり勝つことが我々の成長を改めて証明できる」と意欲を見せ、「相手のことをリスペクトしつつ、胸を借りるつもりで、チャレンジャー精神で、当たっていきたい」と決意を語った。

 黒田監督よりもハッキリと意欲を見せたのはミッチェル・デューク。「クラブと選手たちにとって歴史を作る素晴らしいチャンスだ。選手たちはキャリアを振り返ったとき、チームでトロフィーを勝ち取った思い出を振り返って楽しみたいものだろう。今、神戸相手にそのチャンスがある。だからエキサイティングなんだ」と、準決勝で相手選手と接触したあとを気にもせず明るく語った。

「我々はJ2で優勝して昇格した。昨年は初めてACLの出場権を獲得し、今年は初めて天皇杯を優勝するチャンスがある。ハットトリック(この3つの栄光)を決めたいね。我々がフィジカル的に優位なコンディションにあるからこそ、延長戦でFC東京を仕留められた。神戸相手にも同じことができると思う。試合が長引くほど、我々にチャンスがあると思う」

 最後まで居残り練習をしていた望月ヘンリー海輝はいつもどおり落ち着いて「舞台が変わるだけなんで、やることは変わりません」と語る。11月には天皇杯準決勝の関係で招集外となったが、「代表でいろんな舞台を経験させてもらっているんで。最初よりか(度胸)はだいぶ良くなった」と笑った。「日本代表としての質を見せてもらいたいという」という問いかけには、一瞬言葉を詰まらせながら「そこは、はい、頑張ります」と報道陣を笑わせたが、余裕のある態度だった。

 相手の警戒する選手を「宮代大聖ですね」というのはGKの谷晃生。「仲いいというのもありますが、彼にやられたくないっていう思いもあります。(宮代選手は)強さも出ますし、ゴール前での怖さ、うまさもある。器用な選手なんでね。神戸は強い選手がたくさんいる中で、ああいう違いを生み出せる選手っていうところですごく注意したいと思います」。オフには一緒に渡欧してプレミアリーグなどを見た友人なだけに意地があるのだという。

 クラブ史上初の決勝進出ではあるが、相手の神戸とは今年のリーグ戦で1勝1敗。黒田監督は「私がこの世界に入る前から、Jリーグの中でしっかりと常に主役争いしながら、Jリーグのレベルを本当に高いところ、水準で担保しながら、新しい歴史を刻んできたチーム」だと警戒する。それでもこの日、報道陣の前を通り過ぎた選手は一様に落ち着いた様子だった。「魔物」が何かを教えられた選手たちは、恐怖にさいなまれずに決勝を迎えることができそうだ。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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