残留を導いた“異色監督”「誇らしい」 JFLから降格の危機も…カズ長男が教え子「大きな出来事」

尾松剛監督率いるY.S.C.C.横浜はJFL残留を決めた
Y.S.C.C.横浜が劇的な勝利でJFL残留を決めた。勝ち点27で14位のYSCCは、三重・上野公園陸上競技場でのアウェー戦で同28で13位のアトレチコ鈴鹿と対戦。前半2点を先行されながらも後半33分から10分間に3ゴールし、3-2と逆転勝ちした。勝ち点を30に伸ばしたYSCCは鈴鹿に代わって13位に浮上。最終節を残して14位以上を確定させた。
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「今まで積み上げてきたものがピッチの上で投影された。うれしいゲームになりました」。尾松剛監督(50)は強い口調で言い切った。「最低限のものを成し遂げることができた。誇らしい気持ちと任せていただいた方たちの信頼にこたえることができた」と満足そうに振り返った。
昨季J3で19位となり、JFL2位の高知ユナイテッドとの入れ替え戦に敗れてJリーグを退会。1年での復帰を目指したが、12年ぶりのJFLで苦しんだ。大量に選手が退団し、戦力は大幅にダウン。今季就任した長嶺寛明監督(45)は思うように結果が出せず、下位に低迷した。
7月には長嶺監督から尾松監督に指揮官を交代。新体制初戦こそ勝ったものの、その後5連敗で最下位に転落した。J3復帰どころか関東リーグへ降格するピンチ。Jリーグを経験したクラブが地域リーグへ陥落するという前代未聞の危機に瀕した。
失点の多さが苦戦の原因だった。前節までの失点51はリーグ最多。今月1日のビアティン三重戦では5失点するなど、守備が安定しなかった。それでも、尾松監督は「(吉野次郎)社長からは腰が引けたサッカーはしないでほしいと言われていた。攻めることをアグレッシブに貫いた」と話した。
この日も前半にミスから2失点。「今までなら、このまま崩れていくパターンだった」(尾松監督)だが、この日は違った。ハーフタイムに選手に与えた指示は「相手の3ボランチの間に入る」こと。鈴鹿の3ボランチが中央に寄ることで、サイドにスペースができた。それを利用して後半3得点で逆転した。
選手交代も冴えた。2点目を決めたFW新井直登(24)と3点目のFW松本祐満(23)はいずれも途中出場。「これまで試合に出られなかった交代選手が頑張ってくれたことも、私自身喜んでいます」と笑顔で言った。
Jクラブで指導実績のある監督も少なくないJFLで、地域リーグより上のカテゴリーで指導経験のない尾松監督は異色。前職は埼玉県社会人リーグに所属するACアルマレッザ入間監督。東京・板橋区に立ち上げたクラブチーム、リオFCにはカズの長男で俳優の三浦獠太(本名・良太)も所属していた。
会見後は「良太くんは実は教え子で、中2から高3まで私が監督するチームでプレーしていました」と話し、この日観戦していた本人が挨拶にきたことも明かして「残留争いで忘れていましたが、私の人生に大きな出来事でした」と残留決定と合わせて、うれしそうに話していた。
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。




















