26歳が刻んだ2キャップ目は「別物でした」 大学時代から口にする言葉…選んできた道は「正解だった」

GK早川友基は4試合ぶりの無失点に貢献した
GKは1つしかないポジションであり、一度正GKを掴んだらなかなか入れ替わりは訪れない。日本代表において、アジアカップから鈴木彩艶が不動の守護神の座をガッチリと掴んでいたが、今回のキリンチャレンジカップ直前に鈴木がパルマの試合で負傷離脱するアクシデントがあり、ガーナ戦の先発に誰が起用されるか注目を集めた。
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その中でピッチに立ったのが鹿島アントラーズの早川友基だった。今年7月のE-1選手権で初代表に招集されてA代表デビューを果たすと、9月のアメリカ遠征以降、代表メンバーに名を連ねてきた。そんな26歳が刻んだ代表2試合目は、日本代表を襲った大きなアクシデントを救う存在として白羽の矢が立つという重要な意味合いを持つものとなった。
「E-1の時とは雰囲気が正直別物でした。緊張はしなかったとは思っているのですが、身体は緊張していたのか、硬さが少しありました。でも、その中でメンタル的には程良い精神状態で臨めたと思うし、自分が今まで培ってきたプレーを出すというところにフォーカスしながらプレーしました」
この試合のスタメンのピッチに立つ意味を重々理解しているからこそ、その両肩にはプレッシャーが大きくのしかかっていた。だが、そのプレッシャーに抗うようなことはせず、受け入れながらも、いつものメンタリティーを持って、普段やっているプレーを発揮することに集中した。特に自身のファーストプレーには、かなりの集中力を研ぎ澄ませていた。
前半19分、ペナルティーエリア内に飛んできたガーナのロングボールに対し、早川は抜け出そうとしてきたMFスレマナの動きを捉えながら、しっかりと面を作ってボールにアプローチをし、突進をブロックするようにキャッチ。フィジカルコンタクトを避けるより、こぼさないようにガッチリと確実にボールを抑えるプレーを選んだ。
「自分のファーストプレーというのは、個人としてだけではなく、ゲームにおいてもかなり大事になってくると思ったので、より確実に慎重に行くようにしました」
冷静に自身のプレーのリズムと試合の落ち着きを引き寄せると、ここからは「慎重さを持ちながらも、自分の良さでもある積極的な配球の部分は消してはいけないので、トライする姿勢は持ち続けました」と、持ち前のビルドアップ力、フィード力、そして安定したセービングとキャッチングを披露。日本代表の4試合ぶりのクリーンシートに大きく貢献した。
明治大学時代から口にしていた“言葉”
いつも通りが難しい状況下でいつも通りのプレーをする。これこそ早川がGKをやっていく中で常に大事にしている信念だった。
「GKとして重要なのは冷静であること。どんな状況でも頭と身体を働かせて、チームに必要なプレーをする。ピンチになっても相手の間合いに持っていかれるのではなく、自分の間合いで勝負する。ブレない自分を持つことは常に意識をしています」
これは早川自身が明治大学時代に口にしていた言葉だ。桐蔭学園高ではチームとしては全国大会に一度も出場できなかったが、早生まれだったこともあり高校2年生の時に国体で正GKを務めて優勝を経験。派手さはないが安定したセービングとキャッチング、正確なキックでチームの中心として活躍した。4試合すべてにフル出場で大会を通じて1失点に抑えたことで、全国の強豪大学から注目を集めるようになった。明治大では年々その安定感とスケール感が増していき、4年生になると隙のないGKへと成長を遂げた。
プロに入っても変わらぬ不動心を持ち続け、セービング、キャッチ、キック、ポジショニング、ジャンプなどGKにとって必要なもののどれかに特化するのではなく、全てを満遍なく磨き続けてきた。だからこそ、このチャンスでも安定したパフォーマンスとメンタリティーを発揮することができた。
「もちろん順風満帆にここまで来たとは思っていませんが、今日のような舞台に立たせてもらうことで、今までの努力や選んできた道は正解だったのかなとは思います。でも、これで回答が出揃ったわけではありません。これからもっと自分の選択や取り組むことを正解につなげていけるようにやっていきたいなと思います」
もっとできる。もっとチャレンジできる。何より自分の伸び代はまだまだある。濃密な90分間の中に未来が見えた。
「A代表の重みを感じながら、試合に出ることで得られるものがたくさんあると改めて感じました。だからこそ、選ばれるだけではなく、ここで試合に出るために日々の練習からもっと努力をして、もっと成長していかないといけない。僕にとって今日は本当に重要な試合だったと思います」
夢であるW杯出場に向けて。早川はスタートラインから一歩を踏み出して、より形が見えてきた未来へと走り出した。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。





















