Jクラブ社長のリアルな仕事 解説業で「ザスパに集中しろ」の声も…元日本代表が貫く「僕だからこそ」の信念

 社長としてパートナー交流会に出席する細貝萌氏【写真:(C) THESPA】
社長としてパートナー交流会に出席する細貝萌氏【写真:(C) THESPA】

ザスパ群馬・細貝萌社長が過ごす試合日の1日

 今季でJリーグ加盟20周年を迎えたザスパ群馬。現在はJ3リーグで苦戦しているものの、クラブは地元出身でドイツなど海外でのプレー経験を持ち、昨季限りで現役を引退した39歳の元日本代表・細貝萌氏が代表取締役社長に就任し、GM(ゼネラルマネージャー)を兼任しながら前進し続けている。12日のJ3第31節ヴァンラーレ八戸戦前には、かつてともに戦った鈴木啓太氏や柏木陽介氏らを招き、Jリーグ加盟20周年のメモリアルマッチを開催。そんな若きリーダーが「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じ、選手時代とは大きく変わった試合当日の動きについて語った。(取材・文=轡田哲朗/全4回の2回目)

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 ザスパ群馬の代表取締役社長兼GMとして奮闘する細貝萌氏は、現役引退の翌シーズンにクラブのトップを務める異例の人事が注目されるが、試合当日のスタジアムではあらゆる場所に顔を出す姿がある。

 プロサッカー選手の場合、試合当日にスタジアムに入るのはキックオフの2時間から1時間半前くらいが多く、そこからウォーミングアップをして試合に臨む。試合後にはロッカールームで簡単なミーティングがあり、ミックスゾーンで取材対応をする。チームバスがスタジアムを離れるのは試合の1時間後くらいが多い。19時キックオフのゲームなら、17時から22時くらいの間がスタジアムでの滞在時間になる。

 一方、現在の細貝氏の動きは現役時代とはまったく異なる。9月27日に正田醤油スタジアム群馬で行われたJ3第29節SC相模原戦の場合、試合は19時キックオフだったが、細貝氏は「14時にはスタジアムに入りました」と振り返る。そこから、「ある程度リズムは決まっていて、もちろん外のブースもすべて回ります。飲食がまず出るので、唐揚げ、たこ焼き、飲み物、弁当と売っている場所があるんですけど、そこをすべて回って『よろしくお願いします』と声をかけるのも僕の仕事です」と笑った。

 キックオフ3時間前の16時から始まる先行入場ではゲート付近に立ち、「皆さんを迎え入れながら、その日はキティちゃんとザスパのコラボグッズ配布があったので、先行入場の時に配る作業をさせてもらいました」と、自らが手足を動かしながらファン・サポーターと触れ合うのが日常だという。試合開始まで1時間前後の時間帯には、当日の試合運営に関する確認や調整を行うマッチコーディネーションミーティングに出席しながら、合間の時間帯でマッチスポンサーを務める企業の来賓への挨拶なども、社長として重要な仕事になる。

深夜のブンデスリーガ解説もこなすワケ

 一方で、試合が始まれば「GM」として強化部門の責任者を務める顔もある。「本当に、ただ試合を見て応援しているだけではなく、その前後にはさまざまなことがあって、試合が終われば現場の強化部とのミーティングもあります。選手の時には考えていなかったようなことや、時間がありますよね」と細貝氏は語る。

 さらにこの日は、試合当日の午前3時台にキックオフされたドイツ1部ブンデスリーガの中継で解説を務めていた。ドイツは知ってのとおり、細貝氏が現役時代にプレーしていたリーグであり、解説者としてのオファーも舞い込んでくる。そのため、前日の23時頃に群馬を出発して東京のスタジオに入り、試合の解説を行って群馬に戻ったのは朝の8時半頃。そして10時からは打ち合わせや来客対応があり、そのままスタジアムに入っていたという。だから「東京に出発する前に1時間か2時間は寝ましたが、試合当日はほぼ寝ていないんです」と苦笑いする。

 そうしたクラブ外の活動について、「中には、解説なんかしていないでザスパに集中しろという意見もあるし、出てくるとは思います」と話す細貝氏だが、自身がザスパ群馬の代表を務めるからこその信念があるという。

「今回はそういうスケジュールになった中で、(自分は)寝ないで働いているんだと言いたいんじゃなくて、それだけ今できることに全振りをしているというか、トライしているということなんです。これに関しては、やっぱり僕だからこそ、こういった話をいただくし、僕だからこそザスパの名前を知っていただけるチャンスがある。僕が表に出ていくことで、ザスパというワードは必ずセットでついてきます。群馬県内だけではなく日本全国の方々にも目や耳にしてもらう機会があるところも踏まえて、少しでもザスパ群馬を知ってもらうためには、話があればそういった活動を積極的にやるのも僕の仕事の一つだと思っています」

 プロサッカー選手として20年以上のキャリアを持ち、2008年の北京五輪に出場。日本代表として2011年アジアカップの優勝に貢献した実績と知名度は代えがたいものであり、現役引退直後の今だからこそ、クラブの広告塔になる存在であることを自覚し、寝る間も惜しんで表に出る活動を続ける。

 そして、スタジアムでは試合の運営やサービスを支えるスタッフと顔を合わせ、ファン・サポーターと触れ合い、スポンサー企業とも関わりを作る。試合が終われば、チーム強化部とのミーティングで課題を話し合う。5時間ほどの滞在だった選手時代とは全く異なり、社長兼GMの肩書きを持つ現在の細貝氏は、忙しなく試合当日を過ごしている。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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