森保Jエース争い挑戦権は誰の手に? 三つ巴の6月シリーズ…25歳が“有利”な訳「出す必要がない」

(左から)日本代表の大橋祐紀、町野修斗、細谷真大【写真:産経新聞社 & GettyImages & Noriko NAGANO】
(左から)日本代表の大橋祐紀、町野修斗、細谷真大【写真:産経新聞社 & GettyImages & Noriko NAGANO】

町野修斗は今季ブンデスリーガで11得点を挙げた

 日本代表は、6月5日のオーストラリア戦(パース)に0-1でまさかの苦杯を喫した。2026年北中米ワールドカップ(W杯)のドローで第2ポットを死守するために、10日の次戦・インドネシア戦(吹田)は負けられない状況となった。

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 今回の6月シリーズを新戦力のテストと底上げをメインに考えていた日本代表の森保一監督にとっては誤算が生じたわけだが、次はある程度、計算できる人材を投入する考えも出てくる。となれば、キャプテン・遠藤航(リバプール)や久保建英(レアル・ソシエダ)の先発は確実。正守護神・鈴木彩艶(パルマ)も場合によってはスタメンで出ることも考えられる。

 こうしたなか、FWに関しては、今回は25歳の町野修斗(ホルシュタイン・キール)が先発に抜擢されるだろう。今回のFW陣は大橋祐紀(ブラックバーン)と細谷真大(柏)の三つ巴の構図だが、初戦で大橋が起用され、細谷はベンチ外となった。序列を考えれば、次は町野が先発する可能性が高い。
 
 オーストラリア戦の大橋のパフォーマンスを振り返ると、後半24分まで出場。得点という結果こそ残せなかったが、藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)のスルーパスに反応した後半16分のビッグチャンスなど、裏抜けの鋭さというストロングを見せつけた。クロスへの飛び込みとフィニッシュの迫力という持ち味は、俵積田晃太(FC東京)らのサイドアタッカー陣の精度の問題もあって決定機に結びつかなかったが、全体的には悪くない印象を残したのではないか。

 ゆえに、町野は大橋をしのぐパフォーマンスを出さなければ、コアメンバーが戻ってくる9月以降の生き残りが難しくなるということ。本人もそれを肝に銘じてピッチに立つはずだ。「キールでは幅広い役割を担っていますが、代表ではそれを出す必要がないくらい、周りに素晴らしい選手が揃っている。相手次第ですけど、押し込む展開が多い中で、最後のところだけを求められていると思う。特にフィニッシュのところを求められていると考えているので、しっかり仕事をしたいですね」と本人も2022年E-1選手権・韓国戦(豊田)以来の代表ゴールを奪うべく、ギラギラ感を前面に押し出す構えだ。

 町野の場合、初参戦となった今季ドイツ・ブンデスリーガ1部で11ゴールという目覚ましい結果を残したとおり、得点力は確実にアップしている。その進化を代表で実証するためには、短時間で他のメンバーと連携面を擦り合わせていくことが必要不可欠だ。

 特に今回は、2022年カタールW杯に参戦したメンバーが少数で、ほとんどが不慣れなメンバー。スルーパスやクロスのタイミングがズレることも多くなりがちだ。それを最小限にとどめるべく、彼自身が受け手としての最適解を伝え、得点を取れる形を率先して作っていくことが肝要だ。

「細かいところは合わせていかないとゴールと言うのは生まれない。擦り合わせは大事ですね。クロスに対してしっかり準備することで、中に引きつけることもできますし、本当数メートルの話ですけど、そういった細かい部分で全てが変わってくるので」と本人も限られた準備期間で意思疎通を図る構えだ。その努力がインドネシア戦で結実し、ゴールという結果を手にできれば、今回のFW競争で一歩リードできる可能性もある。

今夏の移籍市場ではステップアップが期待されている

 ただ、今回は細谷もベンチ入りが濃厚で、短いながらも出番が与えられるしれない。そのうえ、国内組の細谷には7月のE-1選手権(韓国)という別のチャンスもあるのだ。「(E-1は)W杯に向けての数少ない活動ではあるので、そういったところを重要にしていきたい。本当は(今回の)試合に出て活躍するのが一番のアピールですけど、腐らずやっていけたらいいかなと思います」と厳しい立場から這い上がっていく覚悟を示していた。

 町野か細谷が次戦で目覚ましいパフォーマンスを見せ、高評価を得ることになれば、上田綺世(フェイエノールト)や小川航基(NECナイメへン)、前田大然(セルティック)との定位置争いに挑む権利を手にできるかもしれない。

 その際、やはりアドバンテージが大きいのは町野ではないか。所属クラブのキールが降格したこともあり、来季ブンデス上位クラブに移籍すると目されるからだ。現状ではボルシア・メンヘングラードバッハ(MG)やフライブルクが有力と言われるが、そこで今季同様の数字を残せれば、一気に代表FWのレギュラー争いをすることも夢ではなさそうだ。

 その環境は、現状は来季もイングランド・チャンピオンシップに挑むことになる大橋、当面Jリーグで戦い続ける細谷よりも明らかに有利。本当にドイツの上位クラブ行きが決まればの話だが、追い風が吹く可能性も大だろう。

 しかしながら、大橋も来季のチャンピオンシップで今季の9ゴールを上回る活躍を見せ、冬の移籍でプレミア移籍、あるいは欧州強豪クラブ行きをつかみ取れれば、状況が一変する。海外組は所属クラブでどういう爪痕を残すかが極めて重要。それは現時点で主力級と位置付けられている上田、小川、前田にしても同じこと。仮に、最終予選の主軸だった彼らが次のシーズンに精彩を欠くようなことがあれば、一気に序列が入れ替わることもあり得る。FWに関しては、まだまだ混とんとした状況なのだ。

 そんな不確定要素があるにせよ、インドネシア戦で町野や細谷が爆発しなければ何も始まらない。特に町野は、カタールで長く練習した久保と共闘することで、チャンスボールが数多く供給されるだろう。それを確実にモノにし、強烈なインパクトを残すことに全力を注ぐべきだ。

 2022年E-1選手権(豊田)で実際にチャンスを手にした男はサバイバルを乗り越える術を熟知しているはず。3年前の成功体験を今一度、思い出し、見る者を驚かせるような大仕事を見せつけてほしいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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