味方に強い口調で「落ち着けよ!」 W主将が見せた”これぞリーダー”の振る舞い…プレミア首位も「負ける可能性」

流通経済大柏のキャプテンマークを巻くMF島谷義進
昨年度の選手権準優勝校であり、現在、プレミアリーグEASTで首位をひた走る流通経済大柏。まさにユース年代において全国トップ・オブ・トップの実力を持つチームをもってしても、インターハイ予選の一発勝負のトーナメントは苦戦を強いられるものだ。
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初戦となった4回戦の暁星国際戦で1-0、準々決勝では千葉明徳に2-1と1点差で勝ち上がり、準決勝の習志野戦では開始早々の9分にPKで失点するも、前半終了間際に逆転。後半終盤に決定機を2回作られるが、GK藤田泰土のビッグセーブで凌ぎ、2-1で勝利して決勝までたどり着いた。
難しい戦いの連続の中で、試合を重ねるごとに存在感を高めているのが、今年のダブルキャプテンの1人で、代表してキャプテンマークを巻くボランチのMF島谷義進だ。
ピッチ上で仲間を鼓舞し続けながら、自身も守備では激しい球際と鋭い読みを利かせたプレスや攻守の切り替えの速さで、1試合を通じてチームを支える屋台骨となっている。
「準々決勝で同じプレミアの市立船橋が専大松戸に負けて、昨日は青森山田が八戸学院大野辺地西に負けたニュースが飛び込んできた。僕らもまだ全国が決まっていないし、負けたらああやって報道される立場だと思う。なので、1試合も気を緩められないと思ってやっています」
この言葉どおり、リーグ戦の90分で力を発揮できていても、リーグより10分少ない40分ハーフ(地域によっては35分ハーフ、インターハイ本戦は35分ハーフ)のゲームで、相手がジャイアントキリングを狙って捨て身で来る一発勝負の県予選は想像以上に難しい。
では、何が勝敗を左右させるのかというと、ピッチ上に強烈なリーダーがいるかいないかに大きく影響をされる。島谷を見ているとよりそれを強く感じさせられた。
習志野戦ではPKで先制されると、真っ先に仲間に向かって「まだ早い時間帯だから必ず追いついて逆転できる」とチームを鼓舞すると、前半アディショナルタイム2分には、右CKからFW大藤颯太が頭で逸らしたボールを、DFに囲まれながらも右足を必死で伸ばして爪先に当てて押し込み、チームに同点弾をもたらした。
「颯太が絶対に競り勝ってくれると思って飛び込んだので、あとは気持ちでした」
このゴールで息を吹き返したチームはその2分後の前半ラストプレーでFW金子琉久がゴールを叩き込んで、一気に試合をひっくり返した。
迎えた後半立ち上がり早々、前半同様にキックオフからリスクを冒して前に出てくる習志野に対して差し込まれた。その際、CB廣瀬煌が自陣深くのタッチライン沿いでディフェンスをすると、相手に倒された。
そのプレーに対して廣瀬が怒りを露わにすると、真っ先に島谷が鬼気迫る表情で駆け寄る。強い口調で「落ち着けよ!言うな!!」と叫んだ。その声に廣瀬がハッとした表情を浮かべた次の瞬間、島谷は「でも、それだけ気持ちが入っていることはいいことなんだ!」と諫める言葉から鼓舞する言葉へとつなげたことで、ここから廣瀬のプレーだけでなく、DFラインに安定感が生まれた。
「相手に対して熱くなってしまうのは分かるけど、そこでカードをもらったら意味がない。それに怒りたての時ってあまり人の話が入ってこないじゃないですか。だからこそ、聞こえるように強く言ってから、その後に『大丈夫だよ』と声をかけることでモチベーションを上げる。あの時はそれがとっさに出ました」
まさにこれぞリーダーという声かけだった。終盤は捨て身で点を奪いに来た相手に対し、跳ね返すことが精一杯になり、そこから決定機を2本作られるが、前述したとおりGK藤田のファインセーブと、島谷の身体を張ったブロックで、最小失点に抑えた。
「県予選は僕らも負ける可能性があるということを理解して、危機感を持ってやらないといけないし、それは練習から常に声を掛け合ってやっています。でも、だからと言ってビビってもいけない。ビビったら、それこそ僕らの良さが出なくなるし、40分ハーフなのであっという間に試合が終わって、後悔しか残らない。ビビってプレーする選手はそもそもこのチームにはいらないと思うし、そもそも流通経済大柏っぽくない。そのメンタリティーを試合中も忘れさせないように声を発したり、プレーで見せたりするのも僕の仕事だと思っています」
難関の県予選も残すところ決勝のみとなった。相手はプリンス関東2部で、全国レベルの力を有している日体大柏。昨年度のインターハイ予選準決勝、選手権予選決勝で対戦し、いずれも勝利しているが、かなりの難敵であることは間違いない。
「僕らは何事にも動じないチームになることを目標にしています。決勝では全員が集中しないと今日みたいに失点するし、やられる。決勝まで残り3日間ですが、もう一度自分たちをしっかりと見つめ直して、修正すべきところは修正して堂々と臨みたいです」
頼もしきリーダーは泰然自若の精神を胸に宿して、チームを全国に導くために己の想いと仲間たちの想いを1つの塊に変えていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)