強豪セレクション落ち→突然の誘い 逸材ドリブラーが驚いた“サッカー王国”…地元では「考えられない」

激戦区・静岡で一際目を引く磐田東3年生・遠藤有眞
新人戦準優勝、インターハイ予選ベスト4。激戦区・静岡において今年、勢いに乗っているのが磐田東だ。
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2022年に実に16大会ぶり2回目となるインターハイに出場。今年は前線に個性的なアタッカー陣を擁し、ドリブルとパスを織り交ぜたテンポの良い攻撃を武器としている。その中で一際目を引くのは、左サイドハーフの3年生・遠藤有眞だ。
彼の特徴はドリブル。ゼロの状態から一気に100にギアを上げて相手を切り裂いていくドリブルは圧巻で、クロスステップも上手く、高速シザーズからの突破とクロスは相手にとって脅威となる。
インターハイ静岡県予選準決勝の藤枝東戦でも彼のドリブルは冴えていた。開始早々の7分に左サイドをドリブル突破し、正確なクロスを送り込む。一度はクリアされるが、その流れからDF上原徹平の浮き球の縦パスに抜け出した2年生FW高田心羽がループシュートを沈めて、磐田東が先制した。
その後も全体の流れを掴んだのは磐田東のほうだった。1-0で迎えた後半、追加点を奪うべく猛攻を仕掛ける。50分(前後半40分ハーフ)に左クロスからゴール前でつなぎ、最後は遠藤が決定機を迎える。しかし、放ったシュートは右ポストを直撃。75分にもカウンターからFW松尾亮弥が完全に抜け出してループシュートを放つが、GKの手に触れたボールはまたも右ポストを叩いて、GKの元に跳ね返っていった。
決定機を作れど、決め切れないまま迎えた試合終了間際の76分、磐田東GK三浦健心がいわゆる「6秒ルール」の反則を取られ、ペナルティーエリア内の間接FKを与えてしまった。これを藤枝東のエース泉孝太郎に決められ、土壇場で同点に追い付かれ、PK戦の末に敗れて涙をのんだ。
「勝てた試合でした。でも、決め切れなかった。ここからもっと強くなって帰ってきます」
試合後、こう唇を噛んだ遠藤は、兵庫県から静岡にやって来た。センアーノ神戸U-15でプレーしていた中学時代、高校サッカーに進みたかったが、地元の強豪・神戸弘陵のセレクションに落ち、滝川第二は一度練習に呼ばれて参加するも正式なオファーは届かなかった。
しかし、クラブとのつながりがあった磐田東から誘いが届いた。「静岡の高校サッカーは静岡学園しか知りませんでした」と、突然のオファーに驚いたが、ちょうど中学3年生の6月に磐田東のインターハイ予選決勝で藤枝明誠に勝利した試合を見て衝撃を受けた。
「知っていたのは静岡学園だけでしたが、静岡県は小さい頃からサッカー王国と言われていて、どこが全国に出ても強いというイメージは持っていました。その静岡を制するだけの力がある高校なんだと思ったし、やっているサッカーも縦に早くて技術もあるので、ここに行きたいと決めました」
新天地で感じたレベルの高さ「静岡の厳しさを感じました」
サッカー王国に飛び込んだ遠藤は、1年生の頃はチームのレベルの高さに戸惑ったが、2年生になると得意のドリブルを武器に頭角を現した。しかし、インターハイ予選は準々決勝で藤枝東にPK戦で敗れ、選手権予選ではベスト16で飛龍に敗戦。静岡県リーグ1部・2位で臨んだプリンスリーグ東海参入戦では帝京大可児に敗れ、昇格を逃すという苦しいシーズンを味わった。
「僕は途中出場が多く、流れを変えようと思ってプレーしましたが、静岡の厳しさを感じました。今年は最終学年なので自分がもっとやらなきゃと思っていますが、まだ課題が多くて、今日の試合のように決め切れないのは力不足と感じました」
今、克服しなければいけない課題は、カットインからのシュートの精度を磨くこと。
「どうしても僕は縦突破ばかりして、クロスで終わってしまうことが多い。やっぱりシュートを打たないとゴールにはつながらないし、初速で抜こうとするあまりワンタッチが大きくなってしまって、最終的にはクロスしか選択肢がない状態になってしまうことがある。そこを改善するために細かいボールタッチをもっと磨いて、変化をつけられる選手になりたい」
センスは十分にある。藤枝東戦でもライナーの横パスに反応し左足を伸ばしてアウトサイドでピタリと収める「神トラップ」を見せるなど、ボールフィールディング、ボディーバランスは非凡なものがある。磨けばもっと光るドリブラーなだけに、これからの彼の努力に大きな期待を抱いてしまう。
「静岡の高校サッカーはやっぱりレベルが高いなと改めて思いましたし、トーナメントの最初のほうからメディアの人たちが来てくれますし、県でベスト16以上になると注目度が格段に上がる。今日も藤枝東が全校応援だったり、サッカーファンの人たちがたくさん来たりと、兵庫では考えられないくらい観客が入ります。その中でサッカーができるだけでも楽しくて、『磐田東に来て良かった』と思えるので、これからプリンスリーグ東海昇格、選手権出場を目指して頑張っていきたいと思います」
勇気を持って飛び込んだ未知なる世界には、多くの発見と成長が待っていた。その生活も残すところ1年を切った。自分の選択をさらに正解にするために、遠藤はそのドリブルをひたすら磨き続け、兵庫県にいる仲間たちに吉報を届けられるように努力を重ねる。