丸刈り&シャツイン…青森山田に現れた逸材高校生 同級生はJ2で活躍「本当に刺激に」

青森山田の杉山大起「チームに丸坊主がいなくなったので、『じゃあ俺がやろう』」
青森山田の右サイドを疾走するMF杉山大起。丸刈りと「小学生のときに指導された」と言うシャツインの姿が印象的な彼は、底知れぬ運動量とプレススピード、一度剥がされても何度も食らいついていくハードマークを見せる、まさにガッツマンだ。
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プレミアリーグEAST第8節のアウェー・昌平戦。朝から激しく降る雨のなかで、杉山はスタートは4バックの右サイドバック、後半途中から3バックの右ウィングバックとポジションを移しても、最終ラインから最前線まで何度も激しいアップダウンを見せた。
粘り強いディフェンスとスピードあふれる突破からのクロスで攻守においてアクセントとなり、チームも3-1の勝利。開幕4連敗からの4連勝で勝敗をタイに持ち込んだ。
「相手のサイドハーフに比べると、僕は技術面で負けているのは分かっていたので、青森山田の根幹の球際やハードワーク、気持ちで絶対に負けないと思ってプレーしました」
プレースタイルも言葉も実直で熱い。そんな彼は大阪から青森にやってきている。大阪時代に所属したチームは強豪RIP ACE(以下・リップエース)SC。迷彩ユニフォームが象徴の関西屈指の技巧派チームで、これまで藤尾翔太(町田ゼルビア)、林尚輝(東京ヴェルディ)、樺山諒乃介(ギラヴァンツ北九州)、中島大嘉(北海道コンサドーレ札幌)らを輩出している。杉山の技術レベルは低いとは思わないが、彼はこう続ける。
「同級生に新川志音(サガン鳥栖)や樺山文代志(樺山諒乃介の弟、興國高)らずば抜けてうまい選手が多かったので、僕は彼らに比べたらめちゃくちゃ下手くそ。シザースなどはやりますが、僕が大事にしているのはメンタル面。走り勝つ、守り抜く、ハードワークをやり続ける。それを無くしたら彼らにはずっと追いつけませんから」
新川は高校3年生ながらすでにトップチームで今季のJ2に15試合出場。杉山を取材した昌平戦の日もJ2第16節のブラウブリッツ秋田戦で後半途中から出場。この秋田戦の前の試合までは3試合連続1トップでスタメン出場するなど、チームに欠かせない存在になっている。樺山は4月のU17アジアカップ(サウジアラビア)にU-17日本代表として出場するなど、この世代屈指のMFとして注目を集めている。
このハイレベルなタレントが揃うチームで、彼は中学2年生の途中からサイドハーフとして試合に出場するようになり、献身的かつ持続的なプレーで周囲の信頼を掴み取った。そして意を決して門を叩いた青森山田でも、これまでプレミアEAST全試合スタメン出場と信頼をガッチリと掴んでいる。
「たまに新川と連絡を取るのですが、プロとしてすでに活躍している自信というか、彼の努力が伝わってきて、本当に刺激になっています。僕のことも気にかけてくれて、『青森はどう?』と聞かれて『相変わらず寒いよ』とたわいもない話もよくします」
周りから愛される彼のキャラクター。それを象徴する1つのエピソードがある。青森山田で丸刈りといえば、一昨年度の選手権優勝を唯一の2年生レギュラーとして経験し、昨年はキャプテンとしてチームを牽引した屈強な左サイドバック・小沼蒼珠(明治大)を思い出す高校サッカーファンは多いだろう。
同じサイドバックで、気迫を前面に出すファイターである小沼に尊敬の念を抱いていた杉山は、「小沼さんが卒業をしてからチームに丸坊主がいなくなったので、『じゃあ俺がやろう』と勝手に小沼さんの意思を引き継がせてもらいました」と自らの頭をバリカンで刈った。
「小沼さんに『真似て丸坊主にしました』と伝えたら、喜んでくれて、『頼むぞ! 頑張ってくれ』と言われました。僕も気持ちで魅せられる選手になります」
もう十分にその気持ちはピッチで表現されている。4連敗の後の4連勝は、彼のように折れないどころか、逆境になればなるほど燃え上がる選手の存在なくしてなし得なかった。だが、彼は謙虚な気持ちを持って、真っ直ぐな目でこう決意を語った。
「まだまだ僕はチームに貢献できていると思っていません。むしろ助けられている部分が多いからこそ、これから助けられるような存在になっていきたいです。ここからです」
(FOOTBALL ZONE編集部)