複数クラブ争奪戦…J1練習参加の逸材「悩みました」 名門に異変「何を言われてもいい」

青森山田の松田駿「コミュニケーションを取るためにミーティングを開きました」
苦しかった。高校サッカーで近年全国のタイトルをほしいままにしてきた青森山田が、プレミアリーグEAST開幕から悪夢の4連敗を喫した。
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力がないわけではない。毎年大雪の影響でチームとしての強化は雪のない地域と比べるとどうしても出遅れる。そのハンデのなかでも雪中サッカーや筋トレでフィジカルを作り、3月からの全国行脚で実戦経験を積んでいく。そのメンタリティーは今年も選手たちにあった。だからこそ、予想以上に結果が出なかったなかでも、巻き返しに向けての心の炎だけは絶対に消さなかった。
「負けているときこそ、何かを変えないといけないということで、これまでどおりではダメだともっと選手間でコミュニケーションを取ることを考えてきました。それぞれの個人が思っていることはあると思いますが、面と向かって伝え合うということは難しいからこそ、キャプテンである僕が先導をしてそういう場所を作ることが大事だと思ったし、1回では言いたいことも言えないと思うので、ミーティングを何度も何度も繰り返してやりました」
こう口にするのは昨年からの不動の守護神で、今年はキャプテンを務めるプロ注目の185センチGK松田駿だ。
開幕戦を1-2で落とすと、そこから3試合連続で0-1の敗戦。松田は安定したゴールキーピングとビッグセーブを見せていたが、点が取れなかった。どん底の状況と思いきや、松田の目には希望の光があったという。
「もちろんめちゃくちゃ苦しかったですし、悩みました。特に僕はGKなので、僕が失点を許してしまっているからこそ、僕が強く言うと『お前が言うな』と思われるかもしれません。でも、僕は何を言われてもいいし、受け止めるつもりで、みんなとコミュニケーションを取るためにミーティングを開きました。
そこで僕に対して『気にせずにもっとリーダーシップを発揮してどんどん言ってほしい』という声をもらったんです。周りの選手たちは本当に大人で、ちゃんと自分自身にベクトルを向けてくれているからこそ、みんな他責にせずに『自分がもっとやっていないから』とそれぞれが受け止めてくれていた。それを見て、『絶対に巻き返すだけの力がある』と確信しました」
第5節の柏レイソルU-18戦でMF藤原栄之郎とFW深瀬幹太がゴールをこじ開けると、松田も今季初クリーンシートを達成。2-0の勝利で連敗地獄から抜け出すと、そこからチームは東京ヴェルディユースに3-1、浦和レッズユースに1-0と、強豪Jユースを次々と撃破。第8節の昌平戦では雨中の決戦を3-1で制して、破竹の4連勝。勝率を5割に戻した。
「ようやく上を目指せる位置に来ましたが、ここで気を緩めてしまったら開幕当初に戻ってしまう。過信はダメだからこそ、もっと強い気持ちを持って1日1日の練習に取り組んでいかないといけないと思っています。ミーティングはこれからも続けていきますし、僕も思ったことはしっかりと言う。そして、言った以上はそれ以上の努力をする。ここからが正念場だと思うし、勝負だと思います」
その表情と言葉はまさに苦難のなかから未来を切り開こうとする強い意志がにじみ出ているものだった。彼は今、個人的にも重要な時期にある。
「高卒プロは青森山田に来た頃から宣言してきたものなので、そこも叶えたい。もちろん青森山田のキャプテンとしてチームのために全力を尽くすことが前提だし、それをやり続けているからこそ、今、こうして練習参加をさせてもらっていると思っているからこそ、しっかりと自分にベクトルを向けてやっていきたいです」
すでにJ1クラブの練習に参加をし、そのほかにも複数のクラブが獲得に動き出そうとしている。周りには浮かれてしまいそうな要素がたくさんあるが、彼は一切ブレない。地に足をつけて、プレースタイルのように心身ともに安定感を持って、チームの先頭を走っていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)