森保監督を変えた恩人「お山の大将だった」 日本代表で目指す現在と未来の“二軸采配”

サッカー日本代表を率いる森保一監督【写真:荒川祐史】
サッカー日本代表を率いる森保一監督【写真:荒川祐史】

今西和男氏との出会いが森保監督のターニングポイント

 追い求めるのは世界一。日本代表を率いる森保一監督が描く日本サッカーの未来図とは――。

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 2026年の北中米ワールドカップ(W杯)へ向けて2期目を戦い抜く指揮官が、新コンセプト「日本サッカーの未来を考える」を据える「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューに応じた。森保ジャパンを語る上で欠かせないのが、指揮官のマネジメント力。現在と未来の“二軸”を念頭に置く森保監督だが、その思考をめぐってはある人物の影響が多大にあった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 今も流れるのは今西和男氏のDNA。森保監督を発掘した大恩人だ。サンフレッチェ広島の前身、マツダで出会ったのが広島サッカーの礎を築いた今西氏。入団後、徹底的に叩き込まれたのが「社会人」であることだった。

 それは日本代表の采配に通じていた。森保監督が持つ信念の1つとして「“現在”と“未来”の両軸を発展させるために判断を下すこと」がある。今を戦う日本代表が強くなるための最適解を模索する一方で、未来のことも見据える。数年後、何十年後への遺産となるか。

 日本人監督ならではと言ってもいい。8大会連続のW杯出場へ導いた“二軸采配”に隠された思いがある。

「代表をやっているからではなく、普段の生活から、いろいろな支えに囲まれているという意識があります。サッカーに限定しても、保護者、指導者、地域の人、応援してくれる方、後援会、そういう方々がいるからやらせてもらえている。そういった方々との過去の歴史や今があって、それが未来につながる。自分もその過去・現在・未来の3つのポジションのどこかに必ず関わっていると思っているので、未来を見据えることも自然に身についています。ただやっぱり受けてきた『教育』がそうさせてくれているとも思います」

 マツダ時代にさかのぼる。1987年、日本サッカーリーグのマツダに入団。まだ18歳、長崎日本大学高校から広島へわたり、右も左も分からない。そんな時、今西氏が提示したのは社会人の「教育プログラム」。まずは「一流のサッカー選手である前に、一流の社会人であれ」と、サッカー日誌を付けたり、英会話や異業種との交流、講話など多岐にわたったプログラムで“社会人”を身に着けた。「サッカー日誌は、社会人になってもやっていました。そこで添削を入れられたり、今日はどういう練習をした、何が課題だったか、というようなことを書いていました」。徹底的に叩き込まれた。

森保一監督にとって恩師と呼べる存在の今西和男氏(写真は2002年当時)【写真:産経新聞社】
森保一監督にとって恩師と呼べる存在の今西和男氏(写真は2002年当時)【写真:産経新聞社】

今西和男氏に「教育された」…二軸采配のルーツに

「社会人として身に付けなければいけないようなことを今西さんがプランしてくださって、今に生きていることが多い。一番大きいのは言語化。何かを想像するということに関しては今西さんの存在が大きかった。考え方を整理させてくれます」

 今西氏からの教えを自らに刻み込んだことで1つ1つ、目の前の事象と向き合うようになった。なぜ、今があるのか。その考えをどう伝えるのか。

「生きていく中でもあるじゃないですか。たとえば、日頃から『感謝しろ』とか『ありがとうと言え』とか、しつけとか教育の中でもありますよね。でも感謝って言葉から入るものではなくて、本当は湧き出てくるものだから。保護者や指導者も含めて環境作りしている人たちは子供たちが生き生きする姿を見るのが嬉しい。だから『コーチに感謝しろ』とかではなくて、そういう気持ちを伝えることから自然とつながりが見えてくるんじゃないかな、と思うんです。

 そのつながりは同心円もあれば、ピラミッドもある。それが点だと思っていた自分に、実は線になっているというのを今西さんに整理してもらえた。お山の大将だった自分を社会人として、サッカー選手として、一言で言うと『教育されたんだな』とすごく思いますね」

 今は自身が日本代表の監督としてチームを束ねている。A代表の選手たちに最大限のリスペクトを払いながらも「日本人として持っておくべき姿勢と態度というところは、押し付けではなくてもどこかヒントとなるようなことを投げかけたり、シチュエーションを作っている」という。それはチームづくりの核の1つであり、相手を尊重すること、ルールや時間を守ること、チーム内の問題はチーム内で解決すること……。そして「今の時代はSNSも注意する。みんなが快適に過ごすためには仲間に、人に配慮するということは伝えている」と、自らの考えも時代に沿って柔軟に変化させている。

 その視線の先は世界との戦い。勝負を通して森保ジャパンの姿をどう見せていくか。「負けているからといってプチンと切れた凧になるのではなくて、チーム一丸となって最後まで勝っても負けても戦い抜く。そういうチームで戦う上で大切だと思うことは伝えています」。すでに選手、スタッフへ浸透している指揮官の思考。森保ジャパンの基盤となっていることは間違いない。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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