大岩Jはパリ五輪でオーバーエイジを使うべきか データと相性から読み解く“呼ぶべき選手”3人【コラム】

パリ行きを決めた大岩ジャパンはOA枠をどう活躍すべきか?【写真:2024 Asian Football Confederation (AFC)】
パリ行きを決めた大岩ジャパンはOA枠をどう活躍すべきか?【写真:2024 Asian Football Confederation (AFC)】

オーバーエイジは守備、中盤、攻撃とバランスを取るのがオーソドックスな選び方

 U-23日本代表がパリ五輪出場を決めたことで、7月24日にスタートする本大会のオーバーエイジ枠をどう使うかという判断が必要になっている。本大会にエントリーできるのは18人。オーバーエイジ(五輪で「オーバーエイジ」が導入されたのは1996年アトランタ五輪から。23歳以下の大会となった1992年は五輪サッカーの観客動員数が伸びず、国際サッカー連盟(FIFA)と国際オリンピック委員会(IOC)の話し合いの末、3人の枠が設けられた)は3人使うことができるが、いくつもの要素を考慮しなければいけない。

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 まず全日程のうち、決勝戦を除くと中2日で試合をしなければいけないということを考えると、上手く選手を休ませながら戦わなければいけない。オーバーエイジの選手をフルタイムでずっと使い続けるのは避けたいところだろう。17日間に6試合を戦うのでコンディションが一番大きな問題になるのだ(2000年からは五輪サッカーが開幕する前から試合が行われるようになった。五輪憲章には大会期間が16日間以内と定められていて、1996年はその期間に合わせるためグループリーグは中1日という強行日程で開催されていたことへの是正措置になっている)。

 次にどのポジションにオーバーエイジを入れるかということを考えなければならないだろう。守備を強化するために入れれば負けにくくはなるだろうが、使い続ければ疲労は避けられない。攻撃の選手を多くしていろいろなバリエーションを作るという考えもあるだろうが、守備も強化しなければファーストディフェンダーとしての役割が大きくなり、よさが生かせなくなる。

 チームとして不安なポジションは埋めたくなるだろう。ほかにもU-23年代の選手との年齢差をどう埋めるかという点も考慮が必要かもしれない。若手選手に溶け込める選手を選ばなければ、世代断裂を生んでしまってはせっかくのオーバーエイジが生きなくなるのだ。

 それでは過去の優勝チームはどのようにオーバーエイジ枠を活用していたのか。1996年以降を調べると、優勝チームが使ったオーバーエイジ20人のうち、GK3人(15%)、DF7人(35%)、MF6人(30%)、FW4人(20%)になっている。

 もちろん、その時のU-23代表の選手の特長によってオーバーエイジのポジションは変わってくるのだが、傾向としては守備、中盤、攻撃とバランスを取るのがオーソドックスな選び方だと言えるだろう。

過去のオーバーエイジ枠はGK2人、DF7人、MF3人、FW1人

 特徴的なのは、過去3大会でGKにオーバーエイジ枠が使われていること。2012年はGK、DF、FWの3人、2016年はGK、MF、FW、2021年はGK、DF、DFというポジションになっている。U-23ではまだGKの経験値が十分とは言えず、そのためベテランを入れたと考えていいだろう。

 また、2021年の東京五輪にブラジル代表の一員として38歳のDFダニエウ・アウベス(UNAM/メキシコ)が出場していたことを考えると、年齢差よりも性格のほうが重要と判断していいだろう。

 では、これまで日本はどのようにオーバーエイジ枠を使ってきたのか。過去13人のうち、GK2人(15%)、DF7人(54%)、MF3人(23%)、FW1人(8%)。対強豪国ということでDFの招集が増えるのは仕方がないとして、FWの割合は非常に低い。どうしても攻撃よりも守備を重視せざるを得なかったというのが本当のところだろう。

 だが、こうして並べて考えると見えてくるものがある。優勝チームでも攻撃に大きな比重を置いているというわけではないのだ。それならば、日本も守備重視の姿勢を多少変えてもいいのではないか。

 しかも今回、本大会でGK鈴木彩艶が招集できれば、森保一監督が我慢して日本代表で使い続けた経験が生かせるかもしれない。となると、DF、MF、FWに1人ずつ配置するということも考えられるだろう。

 では、具体的には誰がいいか。チームとして完成度を上げる時間は6月3日から16日に予定されている海外遠征の時しかない。ならば、大岩剛監督がよく知っている選手がいいのではないか。

 大岩監督の鹿島時代に知っている選手なら、プレーも性格も把握しているだろう。鹿島でプレーしたのは2003年から2010年まで。鹿島を率いたのは2017年から19年。大岩監督が率いている間にDFとしてプレーした代表経験のある選手には、昌子源(FC町田ゼルビア)、植田直通(鹿島アントラーズ)、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ/ベルギー)がいる。相馬勇紀(カーザ・ピア/ポルトガル)も在籍していたが、怪我で5試合ほどしかプレーできなかった。さらにFWには上田綺世(フェイエノールト/オランダ)も在籍していた。

 となると、まずDFに今季ここまで好調なチームのキャプテンを務めている昌子はどうだろうか。怪我でシーズン当初は出遅れたが復帰を果たしている。明るい性格もチームに好影響をもたらす。そしてFWは上田が第一候補だろう。ではMFは? 大岩監督が本大会でどんなフォーメーションを採用するかで変わってくるが、もしもトップ下を置くのだったら2010年に同僚だった大迫勇也(ヴィッセル神戸)はどうだろうか。今なお存在感は抜群で、前線を大いに刺激してくれるはず。

 2012年、2021年は3位決定戦で負けて4位と、1968年の3位という記録は超えられなかった。今回、オーバーエイジの力を上手く生かしながら五輪での新記録を作れば、U-23日本代表の選手たちに日本代表への大きな道が開かれるはずだ。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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