板倉滉、福田師王、浅野拓磨…白熱のドイツ1部残留争い 明暗分かれる3戦、“マジック発動”フラグも【現地発コラム】
すでに1チームの降格決定、残るは自動降格の17位と入れ替え戦の16位争い
ドイツ1部・ブンデスリーガも残すところ3節となった。シャビ・アロンソ監督率いるレバークーゼンがバイエルン・ミュンヘンの12連覇を阻止し、今季公式戦の無敗記録を46に伸ばした。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)争いの行方も少しずつ明確になってきたなか、残留争いが今季も白熱してきている。
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第31節終了時点で、最下位(18位)のダルムシュタットはすでに降格が確定しているが、自動降格の17位、2部3位との入れ替え戦に臨む16位になりそうなクラブはケルン、マインツ、ボーフム、ウニオン・ベルリン、ボルシアMGの5クラブに絞られてきた。
どのクラブに、どれだけ残留のチャンスがあるのだろう。
◆ケルン(17位/勝ち点23/4勝11分16敗/24得点54失点)
所属日本人選手:――
試合:第32節フライブルク(H)、第33節 ウニオン(H)、第34節ハイデンハイム(A)
シーズン24ゴールの得点力に多くを求めることはできない。ここ最近の試合内容は決して悪いものばかりではないのだが、1試合を通して集中力にムラがあるのが気がかり。スピードのあるサイドアタッカーを生かしてボールを運び、セットプレーからゴールを狙う。それをどれだけ徹底できるかどうか。
第31節マインツ戦ではなんとかPKで同点に追い付き、勝ち点1を挙げたものの、現状は非常に厳しい。16位マインツとの勝ち点差は5。なんとか16位に浮上するためには残り3試合で全勝か最低でも2勝1分が必須となる。熱狂的なファンのサポートに支えられるホームゲームが2試合あるのは少なくない希望となる。
◆マインツ(16位/勝ち点28/5勝13分13敗/32得点49失点)
所属日本人選手:――
試合:第32節ハイデンハイム(A)、第33節ドルトムント(H)、第34節ボルフスブルク(A)
後半戦の戦績は10試合4勝5分5敗で、残留争いしているチームの中で一番いい。エースFWヨナサン・ブルカルトが復調し、新鋭FWブライアン・グルダとのオフェンス力にはなかなかのものがある。前線からのアグレッシブなプレスも機能性があり、今この順位にいるのが不思議なほどのパフォーマンスを見せてはいる。
ハイデンハイムとのアウェーゲーム、ホームでのドルトムント戦をそれぞれ引き分け以上で乗り切ることができたら、最終節に大きな希望を持って臨むことができる。CL準決勝に進出しているドルトムントはリーグでそこまでの安定感ある試合を見せていないため、自動残留圏まで浮上するチャンスは十分にある。
浅野所属のボーフムは無敗レバークーゼンと激突、「浅野マジック」に期待
◆ボーフム(15位/勝ち点30/6勝12分13敗/37得点62失点)
所属日本人選手:浅野拓磨
試合:第32節ウニオン(A)、第33節レバークーゼン(H)、第34節ブレーメン(A)
6戦勝ちなしでトーマス・レッチュ監督を解任したものの、後任監督ハイコ・ブッチャーもなかなか勝ち点を手にすることができずに苦しんでいる。第31節ホームのホッフェンハイム戦を3-2で制し、実に9試合ぶりとなる勝利を祝ったが楽観できる状況ではない。次節ウニオンとの直接対決で負けると、一気に状況は元通り。失点が多く、自分たちのミスから相手にゴールを献上していては苦しい。アウェーの弱さは致命傷となるかもしれない。
ホームラストマッチが優勝したレバークーゼンとの試合で、昨季最終戦で浅野拓磨が大暴れしたことを引き合いに出すボーフムファンが多い。ただ今季ここまで46戦無敗のレバークーゼンは昨季とそのクオリティーがまるで違う。ただがむしゃらに守備をするだけでは大敗する危険性もある。
だが、こうした相手とこの状況だからこそ、「自分に求められる仕事を100%やるだけ」と常々口にしている“浅野マジック”が発動するフラグとなるかもしれない。とはいえ、そこに期待しなければならないだけなのでは寂しいものがある。
◆ウニオン・ベルリン(14位/勝ち点30/8勝6分17敗/26得点50失点)
所属日本人選手:――
試合:第32節ボーフム(H)、第33節ケルン(A)、第34節フライブルク(H)
昨季は4位でCLに出場も、CL仕様にと戦力補強した結果、何よりの持ち味だった質実剛健なハードワークが影を潜めてしまったのが失墜の要因。ウルス・フィッシャー監督辞任後、ネナード・ビェリツァ監督の下で持ち直してきたが、得点の少なさは解消できていない。
第23節ホッフェンハイム戦を1-0で勝利して以来、9試合でわずかに1勝。第32節ホームでのボーフム戦の結果が今後にもたらす影響は極めて大きい。今季挙げた8勝のうち6勝をホームで挙げているだけに、ここで勝ち切れるかどうかに注目が集まる。
板倉と福田所属のボルシアMG、残る3試合は苦戦必至で3連敗の危険も
◆ボルシアMG(13位/勝ち点32/7勝11分13敗/53得点60失点)
所属日本人選手:板倉滉、福田師王
試合:第32節ブレーメン(A)、第33節フランクフルト(H)、第34節シュツットガルト(A)
自動降格圏にまで落ちることはないだろうが、16位で入れ替え戦はまだ十分にあり得る。残す3戦はどれもヨーロッパカップ戦出場の可能性を残すブレーメン、フランクフルト、シュツットガルトと厳しい戦いになる。苦手のアウェー戦が2試合残っているのも懸念材料。コンスタントなパフォーマンスが見られず、あっさりとした失点が多いのは非常に気になるところだ。
板倉は第27節フライブルク戦後、「ヨーロッパカップ戦争いにも、残留争いにも勝ち点が遠いという状況がチームとしてのモチベーションを高めるうえで難しさになっているのでは?」という質問に対して、「あると思います。去年もラストの代表ウィーク明けは本当に何にもなかったから。それが試合に出ちゃってるなぁというのはありましたけど。でもそうは言っても、ファンもいるわけだし。自分勝手なことはできないと思ってる」と答えていた。
下位クラブが早い段階から残留争いに気持ちをスイッチしていたのに対して、ボルシアMGはラスト3戦に向けて気持ちを完全に切り替えることができるか。覚悟がプレーに見られないようだと、3連敗の危険もあり得るだろう。ここ最近ボランチとして起用されている板倉には、中心選手としてチームにダイナミックさをもたらすようなプレーを期待したい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。