J1リーグ序盤戦で評価暴落…「期待外れ」クラブは? 過去4度優勝の盟主まさかの“暗中模索”【コラム】

J1序盤戦で期待を下回ったクラブを考察【写真:徳原隆元】
J1序盤戦で期待を下回ったクラブを考察【写真:徳原隆元】

開幕前より評価を下げた「期待外れ」のクラブ選定

 J1リーグは開幕から9試合を(横浜F・マリノスと柏レイソルは8試合)を終えた。まだシーズンのほぼ4分の1を消化したに過ぎないが、この時点で見えてきた傾向は少なくない。その中で、筆者の目線ではあるが開幕前より評価を下げたクラブを「期待外れ」として整理し、ピックアップした。

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 筆者がここで「期待外れ」として取り上げるということは、言い換えれば開幕前から期待していたということ。その意味では現在16位の川崎フロンターレを挙げないわけにはいかない。9試合で勝ち点8という結果もさることながら、すでに5敗している現実は直視するべきだろう。

 過去7年で4度のリーグ優勝を記録している川崎は昨シーズン8位でフィニッシュ。しかし、天皇杯のファイナルで柏レイソルを破り、3年ぶりの優勝を成し遂げた。鬼木達監督が8年目となる2024シーズンに向けてはガンバ大阪からMF山本悠樹、ヴァンフォーレ甲府から日本代表にも選ばれたDF三浦颯太、新外国人のFWエリソンなどを獲得して、次のサイクルに乗っていくことも期待された。

 J1の開幕を前にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16の2試合と富士フイルム・スーパー杯の3試合を1週間でこなす負担は想定できたが、第2節のジュビロ磐田戦から3連敗、FC東京との多摩川クラシコには勝利したものの、そこから前節の東京ヴェルディ戦まで4試合未勝利というのはスロースターターという言葉で済まされるものではない。

 要因の1つとしては昨年の前半戦と同じく、ディフェンシブなポジションに怪我人が続出し守備が安定しないことが挙げられる。ただし、それだけで過半数の5試合で無得点という説明はつかない。試合内容を分析すると、タクティカルな面で大きく2つの要因が挙げられる。ここまですべての試合でボール保持率は相手を上回っているが、なかなか決定的なシーンに結び付いていない。

 無得点の5試合を見ても、すべて2桁のシュート数を記録しており、枠内シュート率も特別低くはないが、ローブロックのディフェンスを破る形がなかなか生まれていない。そうした状況でも決め切るFWがいれば結果は変わっていたかも知れないが、精度を欠いたというよりは相手のゴールをこじ開けられなかったと見て取れる。

 そこからどう崩し切るのか、あるいは決め切るのかというテーマで突き詰めることも大事だが、上位チームに比べると攻守のトランジションから相手のディフェンスが整う前に攻め切るという攻撃は少ない。従来どおりに支配型の攻撃を高めながら、相手を圧倒していくべきか、ショートカウンターや素早く縦を狙う攻撃の度合いをより高めるべきか、岐路にあるように思う。

ヘグモ新体制でスタートの浦和、攻守とも不本意な出来に

 もう1つは攻守バランスが安定しないこと。序盤戦は4-3-3にトライしていたが中盤のフィルターが弱く、相手ボールになった時に素早く縦に運ばれてピンチを迎えるシーンが多い。何とか防いでも、セカンドボールからフィニッシュに持ち込まれるシーンが目立った。FC東京戦での勝利は4-2-3-1に変更し、橘田健人と瀬古樹をボランチに並べて10番のポジションに脇坂泰斗を配置する形が理想的にハマったことに加えて、相手GKの退場で終盤のアドバンテージを握ったことが大きかった。

 しかし、そこから迫力のある攻撃が鳴りを潜めてしまい、過去5試合で2失点という守備の結果と引き換えに、得点が生まれなくなっている。経験豊富な鬼木監督も、行先が明確に見えず、同時進行で暗中模索しながらの采配になっているように見える。戦力的なポテンシャルのあるチームなので、主力がしっかりと揃って、攻守がうまく噛み合えば上位に進出する可能性はあるが、鬼木監督になってから下位での戦いを経験していないことがさらなる悪循環につながってしまうリスクもありそうだ。

 また開幕前には優勝に挙げる声も多かった浦和レッズが、現在12位と厳しい状況にあることも見過ごせない。ノルウェー人のペア・マティアス・ヘグモ監督の1年目で4-3-3という新システムで攻撃的なスタイルにトライしているため、いきなり勢いに乗れないことも想定内ではある。ただ、チームのベースを構築していくなかで、相手の対策にも向き合わなければならない。

 その中で得点源として期待されたインサイドハーフがほとんど得点を生み出せていないなど、最少失点だった昨シーズンより攻守両面で前がかりに行くリスクにリターンが見合っていない。ここまで12得点12失点だが、得点率を下げずに失点を減らすためにどうすべきか。ただし、結果にこだわるあまりに目指すべき方向性を曲げてしまったら、行先の伸びしろを失ってしまうだろう。

 ただ今年はACLがなく、天皇杯も参加資格がないなかでレギュレーション的にもリーグ戦に集中できる。リーグ優勝を狙えるまたとないチャンスでもある。首位のFC町田ゼルビアとは勝ち点8差だが、前半戦のうちに最低でもこの差をキープして後半戦で爆発的な躍進に持っていけるか。そのためには戦術的な噛み合いだけでなく、ゴールやアシストの結果で引っ張っていく真のエース的な存在が欠かせないだろう。

 もう1つ浦和にとって大事なのはチーム内競争の活性化であり、それこそがチームのオプションを増やしていく格好のプラス材料になる。その意味ではルヴァン杯のガイナーレ鳥取戦で活躍した選手が、そのままリーグ戦の主力を脅かしていくようなダイナミックな流れが期待される。

 昨年は60試合とあまりに多すぎたが、ヘグモ監督もチームを構築するために、試合数が多くなることは歓迎している。リーグ優勝が大目標と言っても、ルヴァン杯で勝ち上がっていくことが、リーグ戦にも良いサイクルをもたらすかもしれない。

得点、失点とも厳しい結果の札幌、この先も苦戦必至か

 最少得点、失点数ワースト2位で20位に沈む北海道コンサドーレ札幌も苦しい戦いが続いている。前節はホームでサンフレッチェ広島を相手に1-1と引き分けたが、内容を見ると同じ3-4-2-1の相手に4倍以上のシュートを打たれて、最後は何とか耐え切ったという試合だった。昨シーズンは得点数がヴィッセル神戸、横浜F・マリノスに次ぐ3位だったが、失点数もG大阪と並ぶ最多の61失点だった。

 今年は得点数が6である一方、失点は17となっており、このままのペースだと38試合で70を超えてしまう。怪我人が多く、メンバーが安定しないことも1つにあるが、相手のプレスを回避することが目的にならずゴールに矢印を向けて攻撃を共有していくことが結果として、マンツーマンが主体のディフェンスにも好影響を与えるはずだ。そして浦和とも共通するが、結果でチームを引っ張っていくエース的な存在の台頭に期待したい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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