41戦無敗レバークーゼン、強さの根源は? 「万年2位」の揶揄一変…敵将脱帽「100回中99回負ける」【現地発コラム】

今季無敗継続中のレバークーゼン【写真:ロイター】
今季無敗継続中のレバークーゼン【写真:ロイター】

3冠獲得へ邁進するレバークーゼン、0-4完敗のデュッセルドルフ監督が手放しで称賛

「10か月前に(ドイツカップ)準決勝の対戦相手がレバークーゼンになったと聞いたら、10回やったら9回負ける相手だと答えただろう。今同じ質問をされたら、100回やって99回負ける相手だと答えざるを得ない」

 フォルトゥナ・デュッセルドルフのダニエル・ティウーヌ監督はレバークーゼンとのドイツカップ(DFBポカール)準決勝前にそう話していた。一発勝負のカップ戦だ。ジャイアントキリングが起こる可能性だってある。今季は3部リーグのザールブリュッケンがフランクフルト、バイエルン・ミュンヘン、ボルシアMGというブンデスリーガ勢を撃破して準決勝進出という快挙を成し遂げていた。

 だが、今季公式戦41試合無敗(4月9日時点)というレバークーゼンはあまりに強かった。

 3万210人満員の本拠地ベイアレーナでレバークーゼンは試合開始直後から圧倒的な力の差を見せつけた。日本代表MF田中碧が急性虫垂炎(盲腸)で欠場を余儀なくされたデュッセルドルフも、チーム一丸となっての懸命な守備でなんとか可能性を手繰り寄せようとした。

 しかし、前半7分に左サイドから崩されると、オランダ代表MFジェレミー・フリンポンの強烈なシュートでレバークーゼンがあっさりと先制。同20分には自陣から巧みなビルドアップでデュッセルドルフのプレスを回避し、左サイドから抜け出したアミン・アドリがフロリアン・ビルツのパスを受けて左足で追加点を奪う。さらに同35分にはビルツが軽やかに3点目を挙げると、試合の大勢はここで決まった。後半15分にPKでこの日2点目となるゴールをビルツがマークし、終わってみれば4-0の快勝劇だった。

 レバークーゼンはドイツカップで決勝に進出し、ブンデスリーガでは第28節終了時で2位バイエルンに勝ち点差「16」をつけて首位を独走中。UEFAヨーロッパリーグ(EL)でもベスト8に進出しており(4月11日・18日準々決勝でウェストハムと対戦)、ここまでのところ3つのタイトル獲得の可能性を残している。

レバークーゼンを率いるX・アロンソ監督が語った強さの理由「それが最も大事だ」

 レバークーゼンが最もタイトルに近づいたシーズンといえば2001-02シーズンだ。リーグで最後まで優勝を争い、カップ戦、そしてUEFAチャンピオンズリーグ(CL)でも決勝進出を果たしていた。ミヒャエル・バラック、ルシオ、ゼ・ロベルトら優れた選手を数多く抱え、チームとしての組織力もハイレベルの好チームだった。だが結果として、すべてで2位というやり切れない形でシーズンの終わりを迎えることになってしまう。

 最後のところで勝ち切れないところから、万年2位を意味する「ビーゼクーゼン」(次点を意味するViseとLeverkusenをかけ合わせた造語)と揶揄され続けてきた。だが今では粘り強く戦い続け、最後の最後で勝利をもぎ取る。これまでのレバークーゼンにはなかった強さだ。

 シャビ・アロンソ監督が指揮する今のレバークーゼンは一味違う。クオリティーやメンタリティーだけでなく、個々のスキルだけでも、チーム戦術だけでもない。すべてが高い次元で融合している。

「勝ちたいというハングリーさを持つこと、そして、それを保つこと。それが最も大事なことだろう。ここまで上手くできている。サッカー面だけではなく、チームとしてのメンタリティーで大きな成長を遂げている」(シャビ・アロンソ監督)

 そしてX・アロンソ監督がチームの力を支えている。

「毎試合いい準備をするというのは簡単なことではない。戦術面だけではなく、エモーショナルな面においてもだ」

 そんなことを話していたことがある。モチベーションも最大限に高まるトップゲームのあとに迎える試合は難しい。どれだけトップレベルの選手でも、どこかで集中の糸が途切れてしまうことだってある。それだけに、X・アロンソ監督は3-0で快勝したバイエルン戦後のハイデンハイムとのゲームを「おそらく今季最も難しいアウェーゲームになる」と警鐘を鳴らしていたが、その試合も苦戦しながら2-1で勝利を収めた。

キャプテンのグラニト・ジャカ【写真:ロイター】
キャプテンのグラニト・ジャカ【写真:ロイター】

キャプテンMFグラニト・ジャカも手応え「僕らにあるのは100%のプレーだけだ」

 キャプテンのスイス代表MFグラニト・ジャカも、チームとしての心構えに大きな手応えを感じている。

「今日も本気でプレーした。ホームで2部リーグ相手にプレーするというのはいつも危険だ。どこかで80~90%で大丈夫と思ってしまうことが多くあるからだ。でもこのチームは90%でプレーするということを知らない。僕らにあるのは100%のプレーだけだ」

 試合後の記者会見。その強さを目の当たりにしたデュッセルドルフのティウーヌ監督の様子は清々しくもあった。

「我々の旅はここで終わった。現実と直面した。残念ながら願っていたカップ戦の夜にすることができなかった。選手は可能な限り頑張ったが、レバークーゼンは強かった。あまりに速すぎた。40試合連続無敗(4月9日時点では41試合連続無敗)にという事実にリスペクトしかない」

 2部カイザースラウテルンと激突する5月25日のドイツカップ決勝では、1992-93シーズン以来クラブ2度目となるカップ戦優勝を狙う。視界は極めて良好だ。

「決勝は特別な試合。素敵なことだ。5月25日にはベルリンでファンと一緒に戦い、いい試合をして、勝つことを祈りたい」

 今季のレバークーゼンなら、3冠達成だって夢ではない。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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