チーム不振…田中碧の本音「ストレスは溜まります」 再起へ不屈の研鑽「自分が決めれば勝てる」【現地発】

デュッセルドルフでプレーする田中碧【写真:Getty Images】
デュッセルドルフでプレーする田中碧【写真:Getty Images】

田中碧所属のデュッセルドルフが24年は苦戦、主将のコメントが物語るチーム事情

 ブンデスリーガ2部デュッセルドルフは2023年ラストマッチとなる第17節マクデブルク戦を3-2で勝ち切り、前半戦を4位でフィニッシュ。首位ホルシュタイン・キールとの勝ち点差は「5」、2位ザンクトパウリとは「3」、そして3位ハンブルガーSVとはわずかに「1」と、昇格射程圏内での折り返しとなっただけに、チームは確かな手応えと期待をもって2024年を迎えていた。

 ただ、24年に入ってからの4試合は2分2敗。第21節ホームでのSVエルフェアスベルク戦でも1-1の引き分け止まり。試合への入りは悪くなかった。前半19分にイサク・ヨハンネソンが左サイドからのクロスに上手く飛び込んで先制ゴールを奪うと、その後ハーフタイムまでに追加点のチャンスを数回作り出す。ただ2点目が生まれない。

 後半システム変更で流れを変えようとするエルフェアスベルクに反撃を許すと、後半8分に簡単に同点ゴールを許してしまう。浮き足立つチームはミスを連発した。

 デュッセルドルフのキャプテン、DFアンドレ・ホフマンが試合後に語ったコメントがチーム事情を如実に表している。

「前半いい守備ができていたし、後半もそこまで多くのチャンスを与えなかった。1-0のまま試合を終わらせることはできたはずだ。前半、数多くのチャンスがありながら、2点目が取れなかったのだからなおさら。失点後、自分たちのリズムを取り戻すのに時間がかかったのも良くなかった。時間は十分にあったのだから」

田中がチームメイトに猛アピール「感情を露わにしているだけで、頭の中は冷静」

 後半はパスがつながらず、攻撃の糸口をなかなか作れないデュッセルドルフのなかで、懸命に流れを変えようとしていたのがMF田中碧だった。失点後にもすぐボールを拾って小走りでセンターサークルへと向かい、チームメイトを鼓舞する。

 田中にパスが来ればそこからボールを動かして、流れを作り出せるところで要求するが、その次のパスがなかなか続かない。田中には見えているが、味方選手からは見えていないパスコース。すぐに出せば空いているが、探している間に消えてしまうスペース。そこにはジレンマもあるだろう。それでも大きなジェスチャーを交え、田中は味方に「なんでパスを出さないんだ!」とアピールし続けている。

「パスが来る、来ないはしょうがないんで。もちろんストレスは溜まりますけど、感情を露わにしているだけで、頭の中は冷静」(田中)

 後半11分、味方からのパスを相手選手がインターセプトでカットしようとするが、巧みなボディーフェイントで一気に2人を交わしてチャンスメイク。スタジアムのファンから田中に大きな歓声が飛んだ。ピッチ上のいたるところでボールを落ち着かせ、展開し、そしてゴール前へと顔を出していく。

 試合終了間際にはペナルティーエリア外で相手DFを鋭くかわし、右足でシュートに持ち込んだ。威力はあったが、GKの正面を突く。試合終了のホイッスルはその直後に吹かれた。思わずグラウンドに倒れこんだ田中。スタジアムは溜息に包まれる。

矢印を自分に向ける田中「自分がゴールの前のクオリティーを上げれば勝てる」

 今年に入っての戦績(4試合2分2敗)は、2部18チーム中ワーストとなる勝ち点2。決して納得いく数字ではないだろう。マティアス・ツィンマーマンは「4試合で勝ち点2は満足できるものではない」と話し、監督のダニエル・ティウーヌは「いい守備をしていたとは思う。それだけに失点を許してしまったのが残念だ。みんな懸命にプレーしている。だが残念ながら成功が付いてきていない」と試合後に振り返っていた。

 リーグ戦はまだ続く。苦戦しているのはデュッセルドルフだけではない。ザンクトパウリはマクデブルクに敗れ、ハンブルガーSVは直近成績不振でティム・ヴァルター監督を解任。キールも第21節では勝利したが、なかなか勝てない時期が続いていた。

 田中は矢印を自分に向けてこう話してくれた。

「勝てなかったのがすべてかなと思います。この前の試合も、今日の試合も、自分が決めれば勝てるんで。自分が決めないから負けたり引き分けている。自分がゴールの前のクオリティーを上げれば勝てるだろうし。もうそれがすべてかなと思います」

 直近5試合連続フル出場は監督からの信頼と期待の表れだ。今節ではファンが選ぶチーム内MVPにも選ばれている。

 自分のプレーに集中し、チームが勝てるための仕事を探し続ける。1つのきっかけで流れをまた掴むことはできる。その先にチームの勝利と、自身の輝きが待っているはずだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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