森保ジャパン解体?継続? 監督交代の声「おかしくない」が…現タイミングが困難なJFA側の背景【コラム】

日本代表の監督交代が困難な背景とは?【写真:Getty Images】
日本代表の監督交代が困難な背景とは?【写真:Getty Images】

アジアカップ8強敗退で噴出…森保ジャパン解体論の是非を検証

 日本代表を率いる森保一監督に今、逆風が吹き始めている。優勝を目指したアジアカップで8強敗退に終わったなか、試合中の采配を含めたマネジメント面が議論の的に……。カタールW杯以降、右肩上がりに評価を高めてきた森保ジャパンは、果たしてこのタイミングで解体を検討すべきなのか。改めてその是非を検証する。

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 代表監督を結果で評価するタイミングというのは限られている。東京五輪でベスト4、最終予選を苦しみながらも出場したカタール・ワールドカップ(W杯)はドイツ、スペインを破るもベスト16に終わった。そのあと、森保ジャパンは日本代表では初めて2サイクル目を迎えたわけだが、世界一を目指すという遠大な目標を掲げてスタートした第2次森保ジャパンの最初の大会となるアジアカップで、ベスト8に終わった。

 ほぼすべての試合に立ち会ってきた記者の1人として、アジアカップ前まで10連勝(アジアカップ前、ヨルダンとの練習試合含む)という結果やチームの成長を否定するつもりはない。ただ、やはり相手が本気で優勝を狙ってくる大会、そのためにあらゆる手を尽くしてくる相手との戦いを前に、この大会を勝ち切るためのフォーカスが希薄だったことは否めない。前回王者でないにもかかわらず、優勝候補の本命とされるなかで、アジアでの戦いであるのにどこか目線が世界を向いているというのは接戦に持ち込まれたところで、マイナスに作用してしまったことは確かだろう。

 実際に、内容面でもアジアの戦いの中で、圧倒的なパフォーマンスを示せなかったばかりか、接戦に持ち込まれたなかで、際の勝機をものにできなかった。またイラク戦で痛い目を見たあとで、チームのベースのところは多少立て直したものの、対イランというアプローチが甘すぎて、選手のピッチ内での混乱を生んでしまった。それにもかかわらず、守備は何とか耐えてくれることを目論み、その前提での攻撃カードを切っただけだった。

 森保ジャパン2サイクル目ということで、ベースが固まった段階での積み上げに期待した。実際に親善試合やW杯2次予選を通じて、多くの選手を使って選手層を広げてきたことは評価できる。しかし、伊東純也の離脱や三笘薫が怪我から復調途上、板倉滉が大会中に体調を壊すなど、アクシデント続きの状況で、カバーし切れなかったというのがリアルなところだ。

 総合的に評価すれば、ここで監督交代があっても何らおかしくない。ただ、それは一般論の話だ。現在の日本代表がこのタイミングで、スムーズに代わりの監督を準備できるのかと言ったら正直、難しいと思う。田嶋幸三会長の任期が今年3月までで、反町康治技術委員長も同時期に退任が決まっている。個人的には反町委員長が事実上、A代表の強化から離れたことが、このアジアカップにもマイナスに影響した面がかなりあると考えている。つまり、適切な監督交代を行うだけの体制が整っていないということだ。

 もし監督交代があるとすれば、2次予選と最終予選の間ということになる。北朝鮮とのアウェーが残されているが、敗退リスクが極めて小さい。つまり突破がほぼ確実という前提で、JFAとしては監督交代するのか、森保ジャパンを継続させるのかの決断を迫られることになる。その意味では監督以前に、技術委員長の選任が極めて重要になってくる。宮本恒靖氏の次期会長就任が確実視されるが、技術委員長の選任と代表監督の評価・サポートの組織作りは最初の大きな仕事になり得る。

新体制発足時には、初陣がいきなりW杯最終予選になるリスクも

 W杯最終予選は今年9月からスタートする。その意味で、仮に監督が交代しても時間があるように見えるが、今年は元日のタイ戦を除き、親善試合を1つも入れられない。つまり最終予選の1試合目が、いきなり新監督の初陣になるというリスクが生じるわけだ。そう考えると、3月の2試合は森保監督で乗り切り、6月の2次予選を前に決断というシナリオが本来は望ましい。ただ、新しい技術委員長が早急にリストアップ、オファー、交渉という手続きをまとめるには事実上、現段階から内々に動いておく必要があるだろう。

 現実的には森保監督が継続して、何かを変えていくということ。監督が選手と横並びで、ある種のマネージャー兼相談役のようなスタンスを改めて、戦術的な設計から相手の戦いに応じたプランなどをもっと提示したうえで、選手が考える領域を良い意味で限定してあげるということだ。そのためには監督ではなく外国人コーチを招くという手もある。

 さらに言えば、世界を視野に入れてチームを作ることは大事だが、戦っているステージがアジアであることも自覚する必要がある。彼らは日本に一泡吹かせようと120%をぶつけてくるのだから。W杯のアジア枠が8.5枠に拡大し、予選突破はほぼ確実と言われるが、イラクに敗れ、最終的にはベスト8で敗退した日本にとって、北中米W杯の出場権は約束されていないことを自覚する必要がある。

 今回の敗退は間違いなくFIFAランキングに響くし、本大会での躍進のために是が非でも入りたいポット2を逃すことにもなりかねない。ただ、時間を巻き戻すことはできない。日本が今一度、謙虚に足もとを見つめながらアジアを戦い抜き、世界に向かっていくサイクルに踏み出す、リスタートのチャンスと捉えるべきだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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