日本代表、イラク戦の敗因は? OBが分析「『あれ?』という采配」「違和感が拭えなかった」【見解】

イラク戦の敗因とは?【写真:ロイター】
イラク戦の敗因とは?【写真:ロイター】

【専門家の目|金田喜稔】日本は修正できずに2失点「相手からすれば狙いどおり」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月19日にカタールで開催中のアジアカップ・グループリーグ第2戦でイラク代表(同63位)と対戦し、1-2で敗れた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏がイラク戦の敗因について分析している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 試合は前半5分、日本が右サイドを崩されると中央へのクロスをGK鈴木彩艶が弾くも、流れたボールをFWアイメン・フセインにヘディングで押し込まれて失点。さらに前半アディショナルタイムにも右サイドを崩され、再びフセインにヘディングシュートを叩き込まれて前半に2失点を喫した。後半アディショナルタイムにMF旗手怜央のコーナーキックからMF遠藤航のヘディングで1点を返したが、あと一歩及ばず1-2で敗れた。

 金田氏は試合を振り返り、前半の問題点を指摘する。

「チームの総合力では日本のほうが上かもしれないが、この日の結果だけを見れば黒星。これが勝負の世界。端的に言えば、日本はゲームへの入り方が悪く、前半に修正できなかった。逆に言えば、イラクの戦術がハマり、日本のサッカーを機能させなかった。そんなイラクに対して、日本は軌道修正ができないまま試合を進めて、その間に2失点を喫してしまった」

 日本に大きな混乱をもたらした中心人物は、2ゴールを挙げたFWアイメン・フセインだった。金田氏はイラクの狙いについても触れている。

「特に相手FWの18番(アイメン・フセイン)は思った以上に迫力があり、上手さも兼ね備えていた。いかに彼を使って数少ないチャンスをモノにするか。それがイラクの狙いであり、彼を生かしたロングボールやポストプレーは効果的だった。そして全員が身体を張り、気迫みなぎるプレーで打倒日本を狙っていた。序盤、相手のやり方を日本は把握したはずだが、修正し切れずに失点したのが最大の敗因だ。いずれの失点も、かなり簡単にやられてしまっている。相手からすれば狙いどおりだろう」

「ハードワークをベースにした攻守一体」…消えていた日本の強み

 また金田氏は、昨年ドイツやトルコなどを撃破した日本の良さが消えていたと指摘する。

「前線から最終ラインまでコンパクトにし、最終ラインをぐっと押し上げてこぼれ球を拾い、2次、3次攻撃へとつなげていくのが日本の強みになっていた。ボールを奪われても素早く守備へ切り替え、一気に囲い込んでボール奪取を狙う。攻撃から守備、守備から攻撃。ハードワークをベースにした攻守一体が売りだった日本だが、イラクはそんなサッカーをさせないように策を練り、日本がまんまと術中にハマった。やはりキーマンはあの18番。あそこでポストプレーをされると、日本の最終ラインは下がるしかない。その意味ではイラクの戦略が上回った」

 一方、思うように修正を施せなかった日本だが、とりわけ前半の配置は問題が多いと金田氏は見ている。

「2列目の左に入っていた南野はどちらかと言えば中央に入ってくるから、トップ下の久保もいるなかで攻撃が詰まる。コンディションも良いのだから南野は最初から中央に置くべきだった」

 後半に5人の選手交代を行った日本だが、金田氏は「起用の違和感が拭えなかった」と語る。

「後半からようやく修正されてバランスも良くなってきた。久保も相手を引き付けながら、徐々に良さを発揮でき始めるようになったなかで堂安と交代となった。その後も攻撃のリズムが出てきたと思ったところで伊東が下がったりして、メンバー交代によって攻撃のリズムが作れなかった感が強い。攻撃のリズムが良くなりかけたところで選手交代。そして調子が良くない選手を代えずに残す。この日は『あれ?』という采配が多かった」

 すでにグループリーグ1位突破の可能性が消滅した日本。24日の第3戦インドネシア戦で好調時のパフォーマンスを取り戻し、2位通過を危なげなく決められるだろうか。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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