変わる現代の監督像…カリスマ性より必要なものは? 掲げる「旗」という求心力【コラム】

プレミアクラブを率いる主な指揮官たち【写真:ロイター】
プレミアクラブを率いる主な指揮官たち【写真:ロイター】

スペインやイングランドで見られる躍進、監督次第でチームが変貌

 ラ・リーガ第16節でFCバルセロナを4-2で破ったジローナが首位に立っている。16試合の38得点はリーグ最多だ。敵地カンプ・ノウでの試合は押され気味だったが、ボールを持てば果敢につないで攻め返していく姿勢を貫き、4つのゴールを決めている。

 シティ・フットボール・グループ(CFG)がジローナの株を47%保有している。バルセロナ戦でも活躍したヤン・コウト(ブラジル代表DF)、サビオ(U-20ブラジル代表FW)などCFGのコネクションを使った補強が奏功しているようだ。ただ、それよりもチームの姿勢が重要なのかもしれない。20失点は2位レアル・マドリードのちょうど倍。失点のリスクを負いながら攻撃している。

 CFG関連のクラブといえばJリーグには横浜F・マリノスがあるが、横浜FMもアンジェ・ポステコグルー監督が率いた初年度(2018年)は得失点とも56だった。その後も得点数では2020年を除いてリーグ最多。攻撃的なプレースタイルは一貫している。

 横浜FMのサッカーを変えたポステコグルー監督はセルティック(スコットランド)でも成功を収め、今季からプレミアリーグのトッテナムを率いている。

 通称スパーズのトッテナムはロンドンの名門クラブだが、近年は誰が監督をやっても上手くいかなかった。

 マウリシオ・ポチェッティーノ監督下(現チェルシー監督)でのリーグ2位(2016-17)が最高位で、2018-19シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝まで進出しているがタイトルは獲れず。ただ、この頃はまだリーグ上位にはつけていたのだが、その後はずるずると順位を下げて昨季は8位。ジョゼ・モウリーニョ(現ASローマ監督)、アントニオ・コンテと大物監督が率いても下降線を辿っていた。

 ところが、ポステコグルー監督が就任した今季序盤は首位に立つ躍進。第16節終了時点では負傷者続出の影響もあって5位まで順位を下げているが、これまでにない勢いが感じられるチームに変わっている。

ブライトンのデ・ゼルビら注目を集める現代監督、掲げたアイデアこそが求心力

 どんな「旗」を掲げるか。たぶんそれが重要なのだ。

 ジローナやスパーズだけでなく、ロベルト・デ・ゼルビ監督のブライトンもビッグクラブを脅かす存在になっている。いずれも攻撃的な姿勢が一貫していて、勇敢なプレースタイルが共通項だ。「リスクを負っても我々はこのサッカーをやる」という旗印を立てている。

 ジローナのミチェル、スパーズのポステコグルー、ブライトンのデ・ゼルビは、いわゆる大物監督ではなかった。カルロ・アンチェロッティ(レアル・マドリード)、ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)、ユルゲン・クロップ(リバプール)のような知名度、経験、実績はない。これから名監督と評価されるのかもしれないが、それぞれ就任時点では無名に近かった。しかし、その手腕は大物監督に勝るとも劣らない。

 モウリーニョやコンテが立て直せなかったスパーズをポステコグルーが変え始めた。求められる監督像が変わってきたからだろう。

 モウリーニョやコンテの立てる旗には「勝利」の文字だけが書かれていた。そういう印象である。勝利のためにチームを結束させる手腕こそが名監督の条件で、マンチェスター・ユナイテッドの全盛期を築いたアレックス・ファーガソンのような強いパーソナリティーが必要とされていた。

 ところが、現在のサッカーは監督のカリスマ性よりも、より具体的な旗印が求められているではないか。選手を従わせるのではなく、魅力的な旗を立てて結集させる。掲げたアイデアこそが求心力になっている。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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