柏が天皇杯で示した将来への好材料 井原監督が目指すチームのさらなる成長「次につながる準優勝」

柏の井原正巳監督【写真:徳原隆元】
柏の井原正巳監督【写真:徳原隆元】

川崎相手にPK戦の末に敗れる

 第103回天皇杯全日本サッカー選手権大会は12月9日に国立競技場で決勝戦を行い、川崎フロンターレと柏レイソルは両者無得点によるPK戦は10人目までもつれ込んだ末、川崎が3大会ぶり2回目の優勝を果たした。柏の井原正巳監督は試合後のロッカールームで「選手キャリアのなかでもファイナルはなかなか経験できない。それをサッカー人生に生かしていこうという話をした」と明かした。

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 立ち上がりから柏がゲームを優勢に運んだ。ハイプレスを掛けながら、セカンドボールの奪い合いで優位に立って攻撃の回数を増やしていった。井原監督は「前線からの守備は今日のテーマに掲げていた。それを90分間、強度を落とさずにいこうというのを出ている選手、途中から入る選手が意識してくれた。いいボールの回収ができて、それが攻撃につながるシーンが多かった。いつもだともっと川崎にボールを握られる時間が長かったと思うが、今日は最終ラインからのロングボールを蹴らせることでの回収が見られ、いい形ができた」と狙いが実行された手応えを話した。

 一方で、決定機が多いわけではなかった。シュート数も多かったが、指揮官は「ただ、本当に崩してのシュートよりもミドルシュートや無理やり打ったものもある。もっとアタッキングサードの深い位置から崩すことを高めていかないといけないのかなと思う」と、その点には課題を感じたという。

 120分のなかでFW細谷真大が相手GKと1対1になるチャンスが2回あったが決められず、逆にGK松本健太が相手FWバフェティンビ・ゴミスの決定的なヘディングシュートをスーパーセーブした場面もあった。それだけに井原監督の「どちらが勝ってもおかしくなかったと思う」という感想も頷けた。そして、PK戦では、柏DF古賀太陽が負傷によりキッカーを務めるのが難しく、「10人にして川崎に合わせてもらった」という最後の1人になったGK対決で、松本が止められて敗戦。試合前2日間はPKの練習もしたと話した井原監督は「練習通りにいったものもそうでないものもあるが、相手もあるし会場の雰囲気、運もあるので仕方ないものかなと思う」と、無念そうに話した。

 柏は今季、ネルシーニョ監督が5シーズン目の指揮を執っていたが第13節を最後に井原監督に交代。際どいJ1残留争いを戦いながらチームの立て直しに腐心した。それだけに「途中からの難しさはすごく感じながらシーズンを過ごしてきた」という井原監督は、「選手が常に、前向きに勝つための努力を全員がしてくれた。スタッフも全員がレイソルが勝つために考えを共有してまとまってやれたことが、最終的には最低限の残留という結果につなげられたと思う。内容が悪くなくても結果が出ないと信じられなくなる、沈んでしまうこともあると思う。就任して8試合勝てなかったなかでもバラバラにならずにやれたことで少し盛り返した後半になった」と振り返った。

 最終節まで数字上は残留が決まらず17位に終わったシーズンだったが、この日の決勝で見せた姿はそれを感じさせなかった。来季につながる部分を感じさせた試合だったが、指揮官は「天皇杯は出場機会の少ない選手から全員でつなげてきた。リーグ戦とは違うファイナルという位置づけで戦えた。必ず次につながる今日の準優勝だと思う」と話し、試合後のロッカールームでは「本当にあと一歩だと思うけど、ファイナルは勝者と敗者が必ず出る。勝者の素晴らしい雰囲気を見ていれば、この悔しさを必ずつなげていこうと。選手キャリアのなかでもファイナルはなかなか経験できない。それをサッカー人生に生かしていこうという話をした」と明かした。

 天皇杯の決勝史上最多となる6万2837人の観衆の前で11大会ぶりの優勝を目指した柏はわずかに届かなかったが、厳しいスタートだったシーズンの立て直しに成功した印象を強く与えた。井原監督が来季の柏をどう成長させていくのかも注目される。

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