日本戦で空中分解…再建図る新生ドイツ代表の共存問題 レジェンドも太鼓判の「理想的なコンビ」は並び立つのか?【現地発】

新生ドイツが抱える共存の問題とは?【写真:Getty Images】
新生ドイツが抱える共存の問題とは?【写真:Getty Images】

ドイツ代表の注目テーマ…ギュンドアンとキミッヒの共存は可能か

 ユリアン・ナーゲルスマン監督が就任したドイツ代表においてスリリングなテーマがある。

<イルカイ・ギュンドアンとヨシュア・キミッヒの共存は可能なのか>

 ギュンドアンは昨季プレミアリーグ、FAカップ、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制したマンチェスターシティでキャプテンとして君臨した選手だ。振り返ってみれば9月の日本代表戦後に解任されることになったハンジ・フリック監督が、最後の期待を懸けた人選がギュンドアンのキャプテン就任だった。

 それまではドイツの絶対王者バイエルン・ミュンヘンで主軸のキミッヒを中心としたバイエルンブロックがメインに据えられていた印象があった。代表内で影響力・発言力があるキミッヒと相性のいい選手は誰か、機能性の高い組み合わせはどうかという視点でチーム作りがされていた。

 バイエルンでも代表でも、それで上手くいっていたら何も問題はない。だが、どちらも順風満帆とは言えない状況に陥り、特に代表ではカタール・ワールドカップ(W杯)以降も一向に風向きが変わらない。世間やファンからの風当たりは強くなる一方だった。

 このままではどうにもならない事態にフリックも気づき、CL優勝の活躍を見せたギュンドアン中心のチーム作りにする決断が下された。シティではゲームオーガナイザーとしてペップ・グアルディオラ監督から全幅の信頼を寄せられていたギュンドアンだが、ドイツ代表だとサポート役を担うことが少なくなく、シティでは見られないような軽率なミスをしていたのが気がかりだった。

 チームの中心にギュンドアンを据え、彼のクオリティーを最大限発揮してもらうことが、ドイツ代表の立て直しにおける鍵になると考えたフリックの決断自体は悪くなかったと思われる。だが、あまりにギリギリで唐突な試みだった。9月の日本戦では大きな効果が見られないどころか、やったことのない戦い方のため1-4で大敗。チームが空中分解してしまう一因となってしまったのはやるせない。

 フリック解任後、暫定で監督を務めたルディ・フェラー、そして新監督ナーゲルスマンはギュンドアンのキャプテンを継続している。

 2-1で勝利した9月13日のフランス戦、10月のアメリカ遠征2試合(アメリカに3-1で勝利、メキシコに2-2で引き分け)では、キミッヒは負傷の影響で出場していない。代わりにギュンドアンの隣で起用され、アピールに成功したのがブライトンで三笘薫とプレーするパスカル・グロスだった。32歳で代表デビューという遅咲きは、攻守のバランスを取るなかで優れた効果性を発揮し、ナーゲルスマン監督から高い評価を受けている。

「(グロスは)目に光を持っている。パスカルとイルカイは非常に賢い選手だし、相手のライン間での動きに優れている」(ナーゲルスマン監督)

キミッヒの右SB論も浮上、元ドイツ代表主将マテウスは完全否定せず

 ボランチには復調しているレオン・ゴレツカ、守備力に優れたロベルト・アンドリッヒらもいることから、キミッヒは手薄な右サイドバック(SB)でプレーするほうがいいのではないかという論争も起きているだけに、11月の親善試合2連戦(トルコ戦、オーストリア戦)でナーゲルスマンがどのような組み合わせにするのか注目が集まっている。

 元ドイツ代表キャプテンのローター・マテウスは、ギュンドアンとキミッヒを「理想的なコンビ」と評しつつ、「ただし」と条件を付け加えていた。

「お互いの役割を明確に分けることが肝心だ。これははっきりされなければならない。試合の流れのなかでバリエーションがあるのは構わない。だが基本としての役割分担はなければならない」

 マテウスにしても、キミッヒの右SB論を完全に否定はしていない。

「現時点でドイツ代表にはトップレベルの右SBはいない。キミッヒはそこでもトップレベルのプレーをすることができる」

 ナーゲルスマンがギュンドアンとキミッヒを軸として考えるなら、ゴレツカやグロスを右SBで試すアイデアも出てくるはずだ。特にグロスはブライトンにおいて複数のポジションでプレーしているし、その柔軟性と戦術理解度の高さは証明済みだ。

 グロスは「中盤でプレーするのはとても好きだけど、プレーシステムによっては右SBでも(問題ない)」と話している。

 いずれにしてもナーゲルスマンがどこからどのようにチーム作りを進めていくつもりかが、11月の2試合でよりクリアに見えてくるはずだ。

【読者アンケート】ミャンマー戦@ベストコンビ

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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