森保ジャパンが「冒頭15分間のみ非公開練習」にした訳 怪我人続出で監督を襲う“苦悩”【コラム】

ミャンマー戦を控える日本代表【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
ミャンマー戦を控える日本代表【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

怪我人続出で非公開練習をする意味がなくなった!?

 いよいよ始まる2026年の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で、すでに森保一監督の構想は大きな修正を余儀なくされている。

 代表合宿2日目に当たる11月14日、予定されていた「冒頭15分間のみ非公開練習」が急遽公開されたのは、その象徴と言えるだろう。

 過去、日本代表の練習で「冒頭15分間以外非公開」はたびたびあった。だが、今回は練習の最初だけが報道陣をシャットアウトされて行われることになっていた。

 そこではどんな内容の練習が行われるのか。非公開にしている限りは、試合に出るメンバーをはっきりさせて行うトレーニングのはずだ。15分間という短い時間だから戦術の確認だけにとどまるに違いない。

 では、なぜウォーミングアップやその後の練習の後にやらないのか。それは、冒頭の練習に参加する選手たちでも、その日にトレーニングを終える時間がバラバラになるからだろう。

 通常、前日の練習に参加できた選手はフルメニューをこなし、その日から練習合流した選手は軽いジョギングだけで終わる。そのためピッチを後にする時間が違ってくるのだ。

 11月13日までに日本代表に合流した選手は14日のトレーニングに最後まで参加するはず。ということは14日に練習に合流する予定の選手で試合の先発に入るメンバーがいるため、冒頭の15分間だけを非公開にして、そこで確認しようとしたに違いない。

 14日に合流する選手は誰だったか。町田浩樹、菅原由勢、上田綺世、遠藤航、三笘薫、堂安律、鎌田大地、守田英正、そして渡辺剛になる。このメンバーは当初は14日の12時過ぎまでに合流する予定だった。ところが、町田と渡辺は途中の飛行機が欠航した影響で合流が夕方にずれ込んだ。そのため14日の練習に顔を見せていない。

 本当は全員揃ったところで戦術を確認する予定だったのだ。だが、渡辺と町田に加えて三笘はコンディション不良でホテルで調整ということになったため、非公開練習をする意味がなくなり、中止になったことで間違いない。

三笘薫は連戦の疲労もあり、負傷で離脱した【写真:徳原隆元】
三笘薫は連戦の疲労もあり、負傷で離脱した【写真:徳原隆元】

三苫も離脱した左サイドは「いろいろな選択肢を持っていきたい」

 そもそも今回のメンバー発表前に板倉滉、旗手怜央、中村敬斗が負傷で招集できないことが確定し、メンバー発表後には前田大然、川辺駿、伊藤敦樹、古橋亨梧がケガで不参加になってしまった。10月のカナダ戦、チュニジア戦でパフォーマンスを確認した7人が使えない状況になのだ。

 特に14日の練習に渡辺と町田がいなかったという影響は大きかったのではないだろうか。というのも、13日はほかのメンバーと同じメニューをこなしていた冨安健洋が14日の練習では別メニューになってしまった。

 となると、万全に近い状態で試合に臨めるセンターバックは谷口彰悟と伊藤洋輝ということになる。谷口と町田の組み合わせは10月に試しているが、町田を練習1日で出場させるかどうかという難しい判断になる。

 一方でミャンマーとの実力差を考えると、ここは新しいセンターバックのコンビを試すいいチャンスとなったはず。しかし、さすがに練習1日で守備の屋台骨を新しいコンビに渡すことはないだろう。

 ミャンマー戦(16日)を行う日本とシリア戦(21日)が開催されるサウジアラビアとの寒暖差を考えれば、できればターンオーバーしたかったというのも考えられる。9月にドイツ戦、トルコ戦で大幅に選手を入れ替え、しっかりと結果を出したという経験も踏まえて、今回もプランとして持っていただろう。

 皮肉なことに三笘が離脱した左サイドは、代役の一番手である中村が10月のカナダ戦で負傷したこともあって対応策が練られていた。相馬勇紀が招集されていて、10月のトレーニングでは南野拓実も左サイドMFでの動きを確認しており、浅野拓磨もプレーできる。森保監督は「左サイドはいろいろな選択肢を持って考えていきたい」と余裕の構えだった。

森保一監督の采配に注目だ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
森保一監督の采配に注目だ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

森保監督は選手層の厚さに自信

 だが、守備ラインについては贅沢にメンバーを使うという状況ではなくなった。少しでも怪我についての不安があるようなら、2次予選の段階で冨安は使うべきではない。

 森保監督は負傷者続出について聞かれ、「これだけ多くの選手を選べるという日本人の選手の層の厚さというところ、選手たちが普段見せてくれている、海外そして国内で見せてくれているパフォーマンスや存在感という部分に、本当に誇りを感じます」と強気のコメントを出した。しかし、実際には初戦からこれほどまでの構想の修正を加えなければならないとは思っていなかったに違いない。

 これまで数々のハプニングに襲われてきた森保ジャパンには、またも黒雲が被さってきた。14日の練習中、森保監督はしっかりトレーニングしている組、GK3人、そしてランニングだけで練習を終わる組の3つのグループが見えるところに立って、誰に語りかけるでもなく「本当、いろんなことが起こりますね」とつぶやいていた。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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