久保建英は「檻に入れたようなものだった」 奏功したアトレティコの対策…相手番記者も辛辣「逃げ出すのは難しかった」【現地発】
敵地アトレティコ戦で久保は3試合連続先発出場、相手の対策と徹底マークに苦戦
久保建英はアトレティコ・マドリード相手に、シビタス・メトロポリターノで昨季同様に苦戦を強いられた。
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
レアル・ソシエダはミッドウィーク開催のUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第2節レッドブル・ザルツブルク戦を2-0の勝利で収めたことで、公式戦4連勝、5戦連続無敗を達成。勢いに乗るなか、中4日で8日にアウェーで行われたラ・リーガ第9節でアトレティコと対戦した。
タイトな日程が続くにもかかわらず、この強豪との大一番に向けてイマノル・アルグアシル監督にローテーションを行う余裕はない。ザルツブルク戦と同じイレブンで臨んだことで、久保は公式戦3試合連続で先発出場し、定位置の右ウイングに入った。
対するアトレティコは多数の怪我人を抱えながらも公式戦4連勝中と、ソシエダ同様に好調を維持。ホームではヘタフェと引き分けた今年2月以降、公式戦13連勝と圧倒的な戦績である。さらにソシエダ戦で勝利した場合、クラブ史上の公式戦最多連勝記録に並ぶ状況だった。
試合当日、アトレティコサポーターにとって毎年恒例の『ペーニャの日』が開催された。気温30度の快晴の空の下、スタジアム周辺に設置された巨大遊具で遊ぶ子供たち、コンサートの音楽に合わせてお酒を片手に踊る人々、無料配布されたパエリアを楽しむ親子連れなど、子供からお年寄りまで、さまざまな年代の“アトレティ”たちが、キックオフ前のお祭りを陽気に楽しんだ。
決戦の舞台となったシビタス・メトロポリターノはこの日、スペイン全土や海外から集結したアトレティコサポーターでほぼ満席状態。アウェーサポーター用エリアにもラ・レアルサポーターの姿がない完全アウェーのなか、久保は敵将ディエゴ・シメオネが施した対策に、昨季後と同じように苦しめられた。右サイドでボールを持っても、ウイングバックのサムエウ・リーノの徹底マークに遭い、そこにセンターバックのマリオ・エルモソ、MFロドリゴ・デ・パウルがサポートに加わったことで、思うようなプレーをやらせてもらえなかった。
スペイン紙は軒並み低評価「久保にとって最低の試合の1つとなった」
そんななか、前半終了間際にようやく存在感を発揮する。バックパスを受けたGKヤン・オブラクにプレスをかけた際、足を蹴られて転倒。アトレティは痛がる久保が故意に倒れたと見なし、大きなブーイングを浴びせていた。続くアディショナルタイム3分、右サイドからカットインし、左足でミケル・オヤルサバルに正確なクロスを送るも得点には結びつかなかった。
さらに後半9分にシュートチャンスが訪れたが、DFにブロックされ失敗。連戦の疲労の色が見え始めた後半20分に、カルロス・フェルナンデスと交代した。ベンチに戻るため、アトレティコのウルトラスが陣取る南側ゴール裏を通過する際に再び激しいブーイングを浴びせられていた。
チームは久保交代後にオヤルサバルが同点弾を記録するも、基準の曖昧なハンドの判定で終了間際にPKを取られ、惜しくも1-2で敗れた。これにより公式戦5試合ぶりに敗北し、連勝が4でストップしている。
スペイン各紙は、この試合で久保に軒並み低い評価をつけた。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「サムエウ・リーノとの1対1では、ほぼ全てのデュエルに敗れ、攻撃で違いを生み出すことができず、久保にとって最低の試合の1つとなった。またこれには(ロドリゴ)デ・パウルがサポートに加わったことも影響した。ベストパフォーマンスはオブラクにプレスをかけ、ハーフタイム直前にオヤルサバルに左足でクロスを送ったプレーだった」と久保のパフォーマンスを評し、今季最低の1点(最高5点)をつけた。
もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「(久保は)疲労があり、エネルギーを欠いたように見え、輝きがなかった。それでもトライし、オヤルサバルに素晴らしいクロスを送っていた」と評し、中間的な5点(最高10点)。同様に全国紙の「マルカ」「AS」は、ともに1点(最高3点)と低い採点となった。
相手番記者が分析「久保は完璧に抑えられた」
試合後、スペイン南部アンダルシアを拠点としながらも、アトレティコ、レアル・マドリード、FCバルセロナなどの試合を幅広くカバーする、「カナル・スル・ラジオ」のペドロ・ラサロ・ゴマラ記者は、この日の久保のパフォーマンスを次のように分析した。
「華々しいシーズンを送ってきた久保にとって、今日はベストゲームではなかった。アトレティコ・マドリードのようなチーム相手に彼のような選手が輝くのはとても難しい。前半はサムエウ・リーノに完璧に抑えられたと思うし、檻に入れたようなものだったからね。彼がそこから逃げ出すのは本当に難しかった。今日は試合になんの影響も与えることができなかったし、存在感が薄かった」と辛辣だった。
厳しめの評価を下したペドロ・ラサロ・ゴマラ記者だが、それは今回の1試合に限ったこと。久保が今季ここまでのパフォーマンスについては、「レアル・ソシエダに完璧にフィットし、チームをリードしている。常にチャンスを作り、縦に強く、違いを生み出している。彼は今季序盤のラ・リーガで最も重要な選手の1人だ」と、その功績を認めていた。
試合を追うごとに対戦相手の警戒が強まっていることで楽にプレーさせてもらえず、疲労が蓄積するなかにあっても、久保に休む暇はない。この後、日本への長距離移動を経て、13日にカナダ、17日にチュニジアとの親善試合に臨み、21日にホームで行われるラ・リーガ第10節で古巣マジョルカとの対戦を迎える。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。