日本代表17選手の明暗…「嘘だろ!?」「先発や世代交代も狙える」の衝撃 金田喜稔がトルコ戦採点
【専門家の目|金田喜稔】町田と毎熊が代表デビュー「経験を積めば計算できる」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は、9月12日にベルギー・ゲンクでトルコ代表(同41位)と対戦し、4-2で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した17選手を5段階(5つ星=★★★★★が最高、1つ星=★☆☆☆☆が最低)で採点した。
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◇ ◇ ◇
<GK>
■中村航輔(ポルティモネンセ)=★★★★☆(→前半48分OUT)
失点シーンではファンブルしており、その点はマイナス評価だが、全体的にはフットワークも悪くなく、後方でのパス回し落ち着いていた。負傷の状態が気がかりで、早く回復してくれることを願うばかりだ。
■シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)=★★★★☆(←前半48分IN)
中村の負傷により、前半終盤に思わぬ形で出場を余儀なくされた。試合の流れに乗るのが難しかったと想像するが、それでも後半は1失点に抑えた。ビッグセーブも見せており、日本の勝利に貢献した点を評価したい。
<DF>
■谷口彰悟(アル・ラーヤン)=★★★★☆
A代表デビューとなった町田をカバーしながら、上手く最終ラインを統率。背後のスペースを狙われた場面でも身体を投げ出すスライディングタックルで阻止しており、危機察知能力が光った。2ボランチ(田中碧、伊藤敦樹)が初コンビということも考えると、中央をよく支えていた。
■町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)=★★★★☆(→後半34分OUT)
190センチのサイズに加えて左利きというのが魅力。最終ラインからのビルドアップの種類も増えるし、今後の成長も考えると将来が楽しみな選手が代表デビューした。ピンチを招く場面もあったが、そこは修正できる範疇。代表で着実に経験を積めば計算できる選手になりそうだ。
■冨安健洋(アーセナル)=※出場時間短く採点なし(←後半34分IN)
試合を終わらせるクローザー的な役割を担い、安定した守備で勝利に貢献。押し込まれる場面でも冷静に対応し、さすがの貫禄を見せていた。
■伊藤洋輝(シュツットガルト)=★★★★☆
9月シリーズで唯一の2試合連続スタメンは森保監督の期待の表れである一方、「もっとやれる」という叱咤激励にも感じる。左足のキックは安定していたし、上手くバランスを取りながら攻撃もサポートしていたが、ビルドアップの面でもっと脅威になれるポテンシャルがあると思っている。
■毎熊晟矢(セレッソ大阪)=★★★★☆(→ハーフタイムOUT)
代表デビュー戦で上々のアピール。菅原由勢はアップタウンを繰り返すスタミナとスピードを備えているが、毎熊もボール奪取からドリブルで持ち込み、冷静なラストパスを中村に届けて持ち味を見せた。素晴らしいのは、中央寄りでビルドアップに参加し、攻撃に厚みをもたらせる点だ。これによってボランチを押し上げられるので、チームの攻守バランスを大きく損なわずに攻撃をサポートできるし、今後1つの指標になりそうだ。
■橋岡大樹(シント=トロイデン)=★★★★☆(←ハーフタイムIN)
シンプルな1対1の守備対応なら日本代表でも指折りの強さを誇るし、その良さは随所に発揮していた。ただ、状況に応じて2対1の数的不利もあれば、味方を動かして対応しなければいけない場面もあり、コーチングや臨機応変な対応という意味では課題も残る。
伊藤敦樹は「まさに逸材」 2ゴールの中村が見せた「計算どおりのプレー」
<MF/FW>
■伊藤敦樹(浦和レッズ)=★★★★★(→後半19分OUT)
あの一撃はスーパーゴールで驚きだった。185センチのサイズがあり、25歳と今後も成長が期待できる年齢。まさに逸材が出現したという印象だ。守備はまだ荒削りな感もあるが、一皮むければ先発や世代交代も十分狙える。浦和でいいプレーを続ければ、日本代表にコンスタントに選ばれるのは間違いないだろう。
■遠藤 航(リバプール)=★★★★☆(←後半19分IN)
周りの選手に気を配りながらバランスを取り、プレーしやすい環境を作っていた。中盤が引き締まったし、チームの守備強度も増した。いつも通りの安定感であり、チームに落ち着きを与えた。
■田中 碧(デュッセルドルフ)=★★★☆☆
以前のようなキレがなく、W杯でのプレーより見劣りする。攻撃と守備の両面でどこか迷いが見られ、積極性が鳴りを潜めてしまっている印象だ。とりわけ出足の部分にそれが出ている。昨季、怪我で戦線離脱した影響がまだ尾を引いているのかどうか。今の状態だとスタメン定着は厳しいだろう。
■中村敬斗(スタッド・ランス)=★★★★★(→ハーフタイムOUT)
2ゴールはいずれも準備ができていたからこそのゴール。相手GKとボールの位置を常に意識したポジショニングが取れているし、逆に言えばそれができているからゴールも生まれた。毎熊からパスを受けた場面(チーム3点目)でも、相手との距離や直後の動きも見越したうえで逆を突くシュートを放った。すべて計算どおりのプレーに技術が凝縮されていた。三笘薫とは違う良さを発揮し、強烈にアピールした。
■前田大然(セルティック)=★★★☆☆(←ハーフタイムIN)
後半から出場し、パスコースを消しながら相手に寄せる守備は献身的にこなした一方、攻撃はやや迫力を欠いた。ビッグチャンスで味方と重なりモノにできなかったが、ああいう場面で味方が「大然に任せよう」となるかどうかで自身の結果も変わってくるし、そこに飛躍の鍵もありそうだ。
伊東は「最大限評価するべき」 ボールに触りたい雰囲気が滲み出る久保は「楽しそう」
<MF/FW>
■堂安 律(フライブルク)=★★★☆☆(→ハーフタイムOUT)
伊藤敦樹とのワンツーでゴールを演出したが、本来のポテンシャルを考えると、アピールにはやや遠い出来。積極的な仕掛けやコンビネーションから「自分の形」をもっと見たかったが、相手の脅威になったとは言い難い。
■伊東純也(スタッド・ランス)=★★★★★(←ハーフタイムIN)
嫌な流れを変えたのは、「嘘だろ!?」という伊東の衝撃プレーだった。60メートル近くドリブルで持ち込み、自らPKを獲得してダメ押しゴール。まさに相手の息の根を止めた。すべて1人で完結させたのだから凄い。彼にしかできないプレーであり、最大限評価するべきだろう。
■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★★☆
チーム2点目は久保の無回転シュートから生まれており、3点目も久保の献身的なランニングが光った。サイドでプレーするほうがイキイキしている印象だが、中央でも自由自在にゲームを作れる。相手が触れない距離でのドリブルを駆使し、パス、シュートにつなげていく。コンディションが良く、楽しそうにサッカーをしている。いつもボールに触っていたいというのが滲み出ていた。
■古橋亨梧(セルティック)=★★★☆☆
日本の3点目の場面では、古橋のランニングで相手DFを引き付けて中村のシュートスペースを作り出した。献身的なランニング、動きの工夫、常に背後を狙う姿勢はさすがだったが、肝心のゴールが遠かった。ポスト直撃は確かに「不運」だったが、あれを決めるかどうかが絶対的な存在になれるか否かの分かれ目。総じて悪くない出来だが、チャンスで決めないと次世代の波にのまれてしまう。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。