女子W杯で「最高の写真を」 Getty Images の現場統括者が語る…撮影チームの信念、大会の舞台裏、性的撮影問題【インタビュー】

ピッチ上で勝利を喜ぶ選手たち【写真:Getty Images】
ピッチ上で勝利を喜ぶ選手たち【写真:Getty Images】

Getty Images の現場チームが持つ女子W杯の共通目標、撮影現場で起きた「素敵な瞬間」

 オーストラリアとニュージーランドで開催されている女子ワールドカップ(W杯)で、デジタルコンテンツカンパニー「ゲッティイメージズ(Getty Images )」の現場取材チームを統括し、高品質の写真・映像配信などを管理しているのが、エディトリアルコンテンツ・シニアディレクターを務めるキャシー・トロッター氏だ。女子W杯の写真や映像撮影を行うなか、現場チームの信念、大会の舞台裏、性的撮影問題について聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

   ◇   ◇   ◇

――今回の女子W杯で「ゲッティイメージズ」の現場チームを統括されていますが、現場チームの哲学や信念を教えてください。

「女子ワールドカップのような重要なスポーツイベントを取材するためにチームを編成する際、私たちはチームメンバーを慎重に選びます。そのスポーツを撮影した経験があり、競技やチーム、選手について豊富な知識を持つフォトグラファーやエディターなど、専門知識を持った人材を求めます。また、異なる国籍、性別、年齢層を代表するチームメンバーなど、多様な視点やバックグラウンドを持つチーム編成を優先しています。

 私たちのチームの全員が、世界で最も人気のある試合の興奮を捉え、世界中のお客様やファンの皆様にお届けするという共通の目標を共有しています。私たちはこの責任を真摯に受け止め、この瞬間を世界中の人々と共有することの重要性を理解し、その場に居合わせることに次ぐ最高の写真を提供することを目指しています」

――キャシーさんの仕事に懸ける想いやキャリア上の転機などを教えてください。

「聞いてくださってありがとうございます。私は大学でジャーナリズムを専攻し、常にストーリーテリングに情熱を注いできました。その熱意は大学卒業後にも高まり、ラジオ、テレビ、広報、メディア運営など、さまざまなメディア関連分野で働くことになりました。

 転機となったのは、バンクーバーで開催された冬季オリンピックで、世界最高のスポーツカメラマンたちとともに働く機会に恵まれたことです。そこで私は、いつも高く評価していた魅力的な写真を撮るには何が必要なのかを本当に学びました。雪と寒さのなかで何時間も耐え、重い機材を運び、肉体的・精神的な障害を乗り越えて、アクション、感情、歴史の重要な瞬間を撮影するフォトグラファーたちの姿を目の当たりにし、この分野でキャリアを積みたいと思うようになりました。その経験から、ニュース、スポーツ、エディトリアルの写真撮影において世界最高の場所であるゲッティイメージズでチャンスを掴むことができました」

――女子W杯の写真撮影のエピソードや舞台裏について教えてください。

「ポートレート撮影は壮大なプロジェクトであり、ロジスティクスの面でもエキサイティングな挑戦でした。私たちのチームは、オーストラリアとニュージーランドを横断して機材を運び、ゲートで貴重な照明や撮影機材をチェックし、複数のフライトに乗り継ぎ、夜遅くに到着し、朝は早起きし、各チームがトーナメントで行う1時間の撮影のために、何時間もセッティングに費やすこともあります。土壇場での移動や人員の変更、ホテルのスペースや照明機材の不具合など、制作にまつわるエピソードには事欠きません。

 私にとってのハイライトは、ワールドカップをリードする2人のカメラマンが、ニュージーランドのチームを撮影していた時のことです。撮影の準備をしていると、メディア・マネージャーが2人のうちの1人を呼び止め、選手たちが撮影中に上着を入れ替える際にプライバシーを確保したいので、更衣室を設けてもらえないかと頼んできたのです。その心配を理解したカメラマンたちは、適切なスペースを探すことに努めました。ところがしばらくして、メディア担当者が笑顔で戻ってきてこう言いました。『あなたたちは女性カメラマンでしたね! 男性カメラマンに見慣れていたので更衣室がほしいと思ったのですが、なくても大丈夫でしょう』。

 それはわずかな瞬間の出来事だったが、レンズの向こう側にあるダイバーシティとインクルージョンの意義と重要性を、その場にいたプロフェッショナルたちがさりげなく認めた素敵な瞬間でした」

「女子サッカー界でのセクシュアリティーへの注目度はアンバランス」

――今回の女子W杯ならではの挑戦、新たな取り組みはありますか?

「今回の女子ワールドカップは、32チームが参加する過去最大規模の大会であり、ゲッティイメージズとしても最大規模のチームを編成し、50名以上のフォトグラファー、エディター、運営スタッフをオーストラリアとニュージーランドの現地に派遣しました。私たちの目標と私たちの挑戦は、これまで以上に多くのアングルで、さまざまな画像を撮影することです。

 私たちのアプローチには、ゴール裏での撮影、リモートカメラ、ネットカメラ、スタンドやキャットウォークでの撮影などがあります。FIFA女子ワールドカップ・オーストラリア&ニュージーランド2023の公認写真エージェンシーとして、私たちはチームベンチ付近、選手用トンネル、ロッカールームなど、最も独占的なポジションにアクセスすることができます」

――女子サッカーにおける性的撮影問題についてどう考えますか?

「女子サッカー界では、セクシュアリティーへの注目度がアンバランスだと思います。これには、選手の性的指向、交際状況、外見などの側面が含まれます。私はまた、報道におけるセクシュアリティーの問題だけでなく、より重要なこととして、このスポーツにおけるほかのさまざまなジェンダーに関連した不均衡、特に女性サッカー選手に対する給与、リソース、コーチング、サポートの平等を強調するために、自分たちのプラットフォーム、声、成功を利用する選手やチームに元気をもらっています」

[プロフィール]
キャシー・トロッター(ゲッティイメージズ・エディトリアルコンテンツ・シニアディレクター)/カナダ出身。ラジオ、テレビ、写真など、世界のメディア業界で20年以上の経験を持つ。ゲッティイメージズ・アジアパシフィックのエディトリアル担当シニアディレクターとして、世界トップクラスのエディターやフォトグラファーのチームと協力し、世界中のメディア顧客に質の高いニュース、スポーツ、エンターテインメントの画像を提供。オーストラリア&ニュージーランド女子W杯では現場の取材チームを統括している。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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