三笘薫、左サイドの“対抗馬”に21歳FW? 去就騒がしいブライトンの新季”予想布陣”…移籍の動き次第で変動も【コラム】

ブライトン三笘薫【写真:Getty Images】
ブライトン三笘薫【写真:Getty Images】

チームの基本布陣や日本代表MF三笘薫の活用法について考察

 昨シーズンのイングランド1部プレミアリーグのブライトンで、特に飛躍を見せたのが日本代表MF三笘薫だ。「FOOTBALL ZONE」では欧州リーグ開幕に焦点を当てて特集を展開するなか、三笘所属のブライトンの2023-24シーズンを考察。基本布陣や三笘の起用法などについて予想している。(文=河治良幸)

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 日本代表MFの三笘薫を擁するブライトンは昨シーズンのプレミアリーグで6位に躍進。クラブ史上初となるUEFAヨーロッパリーグ(EL)の出場権も獲得した。いわゆる“ビッグ6”が覇権を争ってきたプレミアリーグで、サウジアラビア資本をバックに快進撃を続ける4位ニューカッスルとともに、そこの序列を崩したことは大きなトピックだった。

 左サイドから鋭いドリブルを繰り出し、フィニッシャーとして7得点、チャンスメイカーとしても5アシストを記録した三笘の“スーパーブレイク”がチームに推進力をもたらしたことは言うまでもない。

 加えて中盤のビッグコアであるエクアドル代表MFモイセス・カイセド、三笘の背後から攻守に的確なサポートを見せた同じくエクアドル代表のDFペルビス・エストゥピニャン、右サイドから左利きを生かして7得点、7アシストを記録したアカデミー育ちのソリー・マーチなど、イタリア人のロベルト・デ・ゼルビ監督による明確な設計のもと、選手たちが魅力的なプレーを披露した。

 本当に誰か1人の選手というより、全員が戦術的に機能しながら局面で輝く“スーパーチーム”として上位に食い込んだブライトンだが、心配されたのは高額な資金で選手が引き抜かれることだ。そもそも昨シーズン頭にはグレアム・ポッター監督が多くのスタッフともに、チェルシーに去り(その後、途中解任)、アンドリュー・クロフツが暫定監督を務めたのち、22年9月18日にようやくデ・ゼルビ監督が就任という運びだった。

チェルシー戦では4-2-3-1の布陣で2列目にお馴染みのメンバーを配置

 新シーズンはデ・ゼルビ体制でしっかりとプレシーズンからチーム作りができる最初のシーズンとなる訳だが、攻撃の中心を担っていたアレクシス・マック・アリスターがリバプールに移籍。カイセドにはチェルシーが8000万ポンド(約145億円)の移籍金でオファーを提示したことが報じられるなど、周辺が騒がしい状況となっているが、英公共放送「BBC」によると、ブライトンの要求に届いていないともされている。

 三笘もマンチェスター・シティの獲得リストに挙がっていると伝えられるなど、ブライトンの選手たちは移籍市場が閉じる8月末まで、落ち着かない時を過ごすことになるかもしれない。ただ、少なくともクラブとして大事な選手たちを見境なく売り飛ばすような様子はなく、さらなる高みを目指して戦う体勢を整えていることは確かだ。

 ここからは現在のメンバーが残留することを前提に話を進めたい。ブライトンは7月にサマーシリーズでチェルシーと対戦した後、ブレントフォード、ニューカッスル、そして今月に入ってスペインのラージョ・バジェカーノと最後のプレシーズンマッチを行った。現地時間8月12日の開幕節はチャンピオンシップから昇格してきたルートン・タウンと対戦する。

 チェルシー戦では4-2-3-1の前線にダニー・ウェルベック、2列目には左から三笘、35歳の元イングランドMFアダム・ララーナ、右にマーチというお馴染みのメンバーが並び、ボランチのポジションは昨シーズンから所属するスコットランド人のビリー・ギルモアとドルトムントからフリーで加入したマフムド・ダフードが並んだ。後半にオランダ人センターバックのヤン・ポール・ファン・ヘッケが2枚目のイエローで退場するなど、やや荒れた試合で4-3敗れたが、デ・ゼルビ監督にとっては良い指標になったはず。

【画像:FOOTBALL ZONE】
【画像:FOOTBALL ZONE】

復帰組アディングラが三笘の対抗馬に?

 7月29日のニューカッスル戦も1-2で敗れたが、ダフートがカイセドと中盤のコンビを組み、三笘、エストゥピニャンと左のトライアングルもテストされており、着々とチーム作りは進んでいるようだ。開幕時点で左の主翼は三笘と見てまず間違いないが、以前の期限付き移籍先のユニオン・サン=ジロワーズで11得点9アシストとブレイクして戻ってきた21歳のコートジボワール代表FWシモン・アディングラも台頭しており、デ・ゼルビ監督も才能を高く評価しているという。

 右サイドは昨シーズンの冬に加入したアルゼンチン代表MFファクンド・ブオナノッテがマーチに挑む。直近のラージョ戦ではマーチがスタメン起用されたが、そもそも2人のタイプがかなり異なるために、昨シーズンの後半と同じく、使い分けになってくるはず。それと同時にブオナノッテも2列目ならどこでもできる選手なので、トップ下でマーチや三笘と並び立つケースもあるだろう。

 リバプールに移籍したマック・アリスターはボランチとトップ下の両方で起用されていたが、どこのポジションでも攻撃面で中心的な役割を担っていた。それだけに、同じアルゼンチン人のブオナノッテにかかる期待は大きいだろう。中盤の攻撃的なポジションとしてはパラグアイ代表の新鋭フリオ・エンシソもブオナノッテに負けず劣らず、本格的なブレイクの期待が懸かる1人だ。

 基本的にブオナノッテが右、エンシソが中央で構想されているはずだが、三笘とアディングラという2枚が揃う左サイドも含めて、シーズンで多少変動していくかもしれない。また昨冬に加入したスウェーデン代表のMFヤシン・アヤリも期待のタレントだ。現状オプション的な立場は昨シーズン後半戦とあまり変わらないが、出場チャンスはより増えるのではないか。マック・アリスターはいなくなったが、若手の未知数な部分も含めて非常に楽しみなセクションだ。

ボランチはカイセドの去就次第、ダフートがかなり重用視されている

 ボランチは一にも二にもカイセド次第だ。プレシーズンマッチではダフートがかなり重用されている。デ・ゼルビ監督のもと、ブンデスリーガで躍動的なプレーを見せていた数年前のトップフォームに戻せれば、ブライトンにとっても大きな助けとなる。

中盤にはそのほかギルモア、コロンビア代表経験のあるスティーブン・アルザテやレンタルバックのジェンセン・ウィアー、サイドと兼任のアヤリもいるが、カイセドにブライトンも断れない金額のオファーが来た場合、現在のメンバーでは最も不安なポジションになるため、クラブは慰留を前提としつつ、次善の備えをしているかもしれない。

 最終ラインはセンターバックがオランダ代表DFジョエル・フェルトマンとファン・ヘッケのファーストセットか。さらに在籍4年目となる191センチのアダム・ウェブスター、22歳のガーナ代表DFタリク・ランプティ、レンタルバックの新鋭エド・ターンズがおり、彼らを守護神のジェイソン・スティールが支える形で、良質なビルドアップをベースとするブライトンの攻守に安定をもたらす。GKのポジションはベルギーのアンデルレヒトから20歳のU-21オランダ代表で活躍するバルト・フェルブルッヘンを獲得しており、非常にハイレベルな競争が見られそうだ。

 戦術的なキーポジションであるサイドバックは精神的な支柱でもある右のパスカル・グロス、左のエストゥピニャンというプレミア屈指の主力を誇るが、アカデミーから18歳のジャック・ヒンシェルウッドがグロスの後継者として台頭してきている。もっともグロスは左サイドバックもこなせるので、エストゥピニャンが出られない場合はグロスが左に回り、ヒンシェルウッドと同時起用されるケースもありそうだ。

 最後に攻撃の基準点であるとともに、三笘らがラストパスやクロスを送ることになる前線はウェルベックがプレシーズンから好調だが、ワトフォードから5年契約で加入した21歳のブラジル人FWジョアン・ペドロがスタメン奪取を狙う。また肉弾戦にめっぽう強いデニズ・ウンダフ、18歳の大器エバン・ファーガソンなど、個性的なタレントが揃う。オプションとしての2トップ採用も考えられるだけに、ウェルベック頼みにならない陣容になっていくことが望ましい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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