三笘と久保に負けない「局面打開ドリブル」発揮 ファインダー越しに見えた熾烈なレギュラー争いの構図
【カメラマンの目】ペルー撃破の日本代表、躍動する選手個々のパフォーマンスにフォーカス
代表の活動はクラブチームとは違い、継続してチーム構築ができないところに難しさがある。ワールドカップ(W杯)などの規模の大きい大会が控えていれば十分な練習も行えるが、親善試合となると限られた時間内でチームを作らなければならない。チームの方向性を示す共通意識を持たせることも難しくなるところだ。
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振り返れば日本は3月シリーズの2連戦では、三笘薫や伊東純也のドリブラーによるスピードに乗ったサイド攻撃に加え、ポゼッションサッカーも融合させたスタイルで臨んだが、これが機能せずチームとしては不発に終わっている。攻撃のリズムは無駄なボールキープで停滞し、相手の守備網を攻略することができなかった。
しかし、である。
この6月シリーズは3月でのチームが機能しなかったことがウソのように、戦術的意図がはっきりと見て取れる機能美に満ちた戦い方を示した。エルサルバドル戦が6-0、ペルー戦も4-1とゴールラッシュを飾り、特に相手が高いモチベーションで試合に臨んできた第2戦目は本物の勝利と誇ることができる内容だった。
日本はなにより素早いカウンター攻撃が威力を発揮した。3月シリーズのちぐはぐな戦いとは打って変わって、前線にボールを運ぶことを意識した連続プレーでペルー守備網を崩していった。こうしたプレースタイルが強くピッチで表現されたのは大きな進歩だ。
ゴール裏の位置から試合を撮影していた印象として、好ゲームとなった理由はペルーの勝負に対する本気度に日本も負けじと躍動したからだと考えられる。さらにスタジアムの熱狂的な雰囲気も好勝負の演出に一役買った。
この試合は多くのペルーサポーターがスタンドに陣取り、彼らは数で勝る日本サポーターにも負けないほど、熱狂的に自国の選手たちへと声援を送った。W杯本大会の試合とも思えるほど素晴らしい雰囲気だった。こうしたサポーターが発する強力な熱量によって、選手たちの勝負への意識もさらに高くなり、試合序盤はお互いに長所を出し合う見応えのある激しい攻防が展開された。
ただ、ペルー戦の日本は南米の難敵と好勝負を演じただけで終わることはなかった。前線からのハイプレスと中盤からの狙い澄ましたスルーパスに、両翼からの鋭いカウンターと多彩な攻撃で徐々にペースを手繰り寄せ、最後は力でねじ伏せる形の完勝で試合を締め括った。
三笘と久保が両ウイングのレギュラーと思われたが…
チームの目指すスタイルへの模索に決着が付いた今、これから注目されるのがサムライブルーたちの内なる戦いとなるレギュラー争いである。特に注目されるのが日本の攻撃の生命線であるウイングのポジションだ。
このポジションはクラブチームでの圧倒的な活躍により、三笘と久保建英がレギュラーの位置を獲得すると思われたが、ペルー戦で先発した伊東が特徴を最大限に活かして好プレーを見せた。カメラのファインダーに写った力尽くでも局面を打開しようとする気迫に満ちたドリブルは、ポジションを争うライバルたちには負けられないという強い意志が感じられた。
センターフォワードを除くFWと中盤の構成は、このペルー戦の先発メンバーが1つの成功例として、今後のチームのベースとなっていくように思われる。2026年W杯を目指す新チームは決して順調とは言えない滑り出しだったが、その状況から対ペルー戦は大きく変化する価値ある勝利となった。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。