久保建英に漂う日本代表で“覚醒”の予感 6月シリーズで期待できる「3つの理由」

久保建英は6月シリーズでどのようなプレーを見せてくれるだろうか【写真:徳原隆元】
久保建英は6月シリーズでどのようなプレーを見せてくれるだろうか【写真:徳原隆元】

【識者コラム】好調なことに加え、堂安とのコンビにも注目

 2019年5月、わずか17歳で日本代表に選出されると6月9日のエルサルバドル戦では交代出場でピッチに立つ。さらに9月には18歳98日でワールドカップ(W杯)予選に初出場するなど、久保建英は4年前から日本代表の中でも耳目を惹いてきた。

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 2022年のカタールW杯のメンバーにも入り、背番号は「11」を背負った。ところが、グループリーグのドイツ戦とスペイン戦でそれぞれ前半プレーしただけで終わってしまう。

 大会敗退後、久保は「僕の今の状態なら押し通せるくらいの個があるだろうと(思っていたが)、自分の勘違いだった」「チームのタスクをやったうえで、もっとできると思いましたけど。そこまでの個はなかった」と振り返った。

 日本代表としてここまで挙げたゴールは、2022年6月のガーナ戦での1点のみ。注目度から考えると、今までは期待に応えてきたとは言いがたい。

 だが、今回の日本代表合宿の練習ではこれまでと違う久保の姿が見られる。「今度こそ中心選手に」と期待できる理由は3つある。

 まず、非常に好調なことだ。

 今回、海外組の選手たちはシーズン終了後にもかかわらず、全員が非常にいいコンディションで集まってきている。メンバーの日本代表に懸ける思いが伝わってくるようなインテインシティーの高さを惜しみなく見せているが、中でも久保は身体にキレがある。

 トップスピードからのストップ、ストップした状態からのトップスピードまでの距離が短く、その緩急の違いだけでも代表クラスのDFと渡り合えている。久保の特長であったクイックネスにもさらに磨きがかかった。

 次に、パートナーとのコンビが期待できること。6月13日に急きょ全公開となった練習で、森保一監督は6種類のフォーメーションを試した。久保は右FWまたはインサイドハーフに入ったが、右FWの時はインサイドハーフに、インサイドハーフに入った時は右FWに堂安律が配置された。

 久保と堂安のコンビは東京五輪でも絶妙のパス交換を見せた。日本代表でも何度か試されていたが、時間としてはあまり長くなかった。森保監督はここにきてこの2人の関係性を本格的に日本代表に取り入れようとしている。

紅白戦では守備の強度でもアピール

 これまでの日本代表では、途中投入された久保がドリブルから仕掛けを作ろうとするが、周りとの意思疎通が十分ではなく、ほかの選手が久保の意図を何とか理解しながらパスを受けていた。だが堂安が入ることで「阿吽」の呼吸でパス交換ができることになり、もっとお互いが生きるようになるだろう。

 さらに、久保の期待度を高める出来事があった。

 フィールドの縦の長さを短くして行われた紅白戦、高い強度に選手たちの疲れが見えてきた最後の練習で前田大然がサイドを駆け上がった。それに付いていったのが久保で、身体を寄せて激しくチャージすると、ついにはボールを奪い切ったのだ。

 この守備の強度こそ森保監督がチームに求め続けてきたもの。奪ったボールからの展開にはさすがに出て行けなかったが、守備でボール奪取まで個人でできるところを見せたのは、監督に安心して起用できると思わせたに違いない。

 日本代表では、所属するスペイン1部レアル・ソシエダと違って守備に回る時間が多く、そのため久保の攻撃面での良さを出すことが難しかった。その問題について久保に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「今シーズンは特に前の選手が結果を出しているので、その人たちが中心となって攻撃の質を上げていくじゃないですけど、自分たちがボールを持てれば、みんなの特徴も生きやすいと思います」

 たしかにアタッカー陣は全員好調だし、3月の日本代表に比べれば今回は代表経験を積んだ選手が多い。そのメンバーで「よりボールを保持しながら攻める」という試みを行えば、狙いはしっかり見えてきそうだ。

 自身の代表デビューの相手だったエルサルバドルとの再戦で、久保は本領を発揮してくれるのではないか。2日間の練習でもそう思わせるプレーは見せたし、久保もそんな周囲の思いが分かっている。

「今シーズンでこうやって僕が頑張ったのもあって、みんな、たぶん日本の人も期待はしていると思うんです。期待に応えられる活躍を僕ができればベストなのかなと思います」

 久保は代表では1ゴールにとどまっていることも自分から口に出し、「1点取れれば、あとはもうどんどんどんどん行けると思うので、とりあえず積極的にシュート打っていこうと思います」と前向きな言葉で話を締めくくった。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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