日本代表、世界的にも珍しい「豊富な人材」とは? 6月シリーズで不発の“ボール保持”に再トライ

6月シリーズでエルサルバドルとチリと対戦する日本【写真:徳原隆元】
6月シリーズでエルサルバドルとチリと対戦する日本【写真:徳原隆元】

【識者コラム】日本の武器であるサイドアタックを最大限活用へ、「偽SB」は継続か

 6月の強化試合(15日エルサルバドル代表戦、20日ペルー代表戦)に向けて、日本代表選手26人が発表されている。前回(3月)の2試合には招集されていなかったセルティックの古橋亨梧、旗手怜央が招集されるほか、Jリーグから森下龍矢(名古屋グランパス)、川村拓夢(サンフレッチェ広島)、川崎颯太(京都サンガF.C.)の3人が初招集となっている。

 3月シリーズではボール保持のためのビルドアップが不発だったので、今回は再チャレンジになる。

 前回はビルドアップの形として「偽サイドバック(SB)」を試した。SBが内側へ絞ってボランチ化する。ボランチ化するのだから、SBにはMFとしてのパスワークが求められるわけだが、菅原由勢(AZアルクマール)と伊藤洋輝(シュツットガルト)はそれに合った人選とは言えず、どこかぎくしゃくしていた。

 ただ、「偽SB」は継続するだろう。なぜかというと、現在の日本の攻撃で最大の武器が伊東純也(スタッド・ランス)、三笘薫(ブライトン)のサイドアタックだからだ。

 この2人をサイドに張らせてドリブルを活かすには、SBがビルドアップでインサイドにいたほうが外へのパスコースが開ける。SBがタッチライン沿いに高いポジションを取ると、ウイングは内側へ移動することになってしまい、そうなると伊東、三笘のサイドアタックが使いにくい。なので、主要武器である2人を活用するには「偽SB」をやるほかないのだ。

 実は、ほかにもやり方はある。マンチェスター・シティが使っている「偽センターバック(CB)」だ。ボランチ化するのはSBではなく、CBの1人(ジョン・ストーンズ)。後方にはもう1人のCBとSB2人の3人を残す。このやり方でも、ウイングをサイドへ張らせておくことはできるわけだ。

 ただ、シティ以外にこのビルドアップを行っているチームは見当たらない。MFを兼任できるSB(偽SB)はいても、CBはなかなかいないからだろう。

偽CBをやれる資質を持った日本代表メンバーがずらり、選外にもうってつけの人材

 だが、今回の日本代表メンバーで言えば谷口彰悟(アル・ラーヤン)、板倉滉(ボルシアMG)、伊藤は偽CBをやれる資質がある。3人ともボランチでプレーした経験もある。今回は招集されていないが、岩田智輝(セルティック)はうってつけだろう。さらにMF遠藤航(シュツットガルト)はJリーグではCBとしてプレーした時期もあった。偽CB適性のある人材がこれだけいるのは、世界的にもむしろ珍しいかもしれない。

 逆に偽SBに適性がありそうな選手が旗手と守田英正(スポルティング)しかいないのだから、6月シリーズは偽CBをやったほうが良さそうにも思える。偽CBの裏テーマとして、相手のウイングへの対策がある。相手に伊東や三笘のようなウイングがいれば、守備力のあるCBタイプを当てられる。日本もそうだが強力なウイングを起用するチームが増えているので、CBタイプをSBに起用する傾向が出てきている。

 しかし、今回はおそらく偽CBはやらないと思う。DFとしては6人しか選んでおらず、そのうち2人はSB適性の菅原と森下なので、4バックをすべてCBにするとバックアップがいないのだ。つまり今回の構想に偽CBはないと考えられる。

 前回のボール保持チャレンジは中途半端な人選で上手くいかなかった。今回は再チャレンジになるはずだが、やはり人選を見る限り期待しすぎないほうがいいかもしれない。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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