日本代表の目標はモロッコやクロアチア? 新生・森保ジャパンの理想と現実…見切りをつけるのに良い機会だ
【識者コラム】日本代表の再出発2連戦、ボール保持へ挑戦するも機能性は今ひとつ
日本代表の再出発となったウルグアイ代表戦(1-1)とコロンビア代表戦(1-2)。「偽サイドバック(SB)」も導入してボール保持への挑戦をした2試合の成果は正直さっぱりだったと言わざるを得ない。やっぱりこれじゃないんじゃないか感しかなかった。
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日本人はパスをつなぐのがたぶん好きだし、結構得意でもあると思う。例えば、今季J1に昇格してきたアルビレックス新潟は、一応全部格上の対戦相手に対しても臆することなく縦横にパスをつなげている。
自陣からショートパスをつないで敵陣に入るには相手のラインを通過させなくてはいけない。基本的に人と人の間にボールを通過させる。そのためには、パスを出す選手が相手の2選手の中間にポジションを取る必要がある。そうでなくて、自分の前に相手がいる状態では横か、うしろか、斜めにしかパスは通せない。相手の「門」の間を斜めのパスで通そうとすると引っかかる可能性が高いので、「門」の手前の、「門」の真ん中にポジションを取ってパスを出すのがいい。そして、「門」の向こう側に味方がいなければならない。
つまり、相手2選手の「門」の手前と向こう側、この2つの地点をタイミング良く取っていないとラインを通過するのは難しい。新潟はそれがスムーズにできていて、狙っている場所を取れない時にはキャンセルして次の機会を狙い続ける。この基本があるから面白いようにパスが回るわけだ。
残念ながら、日本代表にはこのベースがあまり共有されているようには見えなかった。クラブチームと寄せ集めの違いはあるし、まだスタートしたばかりということを差し引いても、ちょっと難しいんじゃないかという感想になってしまう。
カタールW杯で日本代表を支えた守備力、システム的に「4-5-1」しかない
カタール・ワールドカップ(W杯)のベスト4(アルゼンチン代表、フランス代表、クロアチア代表、モロッコ代表)で、ボール保持にとりわけ優れていたチームはなかった。その気になれば上手いと思うが、そもそもそんなにつなぐつもりのない4チームだった。日本がベスト8まであと一歩まで行けたのも、保持力ではなく守備力のおかげである。
カタールW杯での日本代表は5-4-1システムだった。ただ、それでは最大の攻撃カードである三笘薫と伊東純也のプレーエリアが低くなりすぎる。一方、4-4-2で守り切れないのはドイツ代表戦(2-1)の前半で思い知らされた。DFかMFのラインに「5」を作らないとたぶん無理。ウイングを前に出して、守備で「5」も作りたいとなれば、もうシステム的には4-5-1しかない。
つまり、日本はモロッコ代表あるいはクロアチア代表になれるかどうかが問われているのであって、実はそんなに選択肢はないのだと思う。4-2-3-1のボール保持で攻撃的にやりたいという理想を追うのもいいけれども、おそらく時間を無駄にするだけだ。南米2か国との試合は、見切りをつけるのに良い機会だったのではないか。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。